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シリコンでも次世代材料でも、あらゆるパワー半導体で進化を実現する新生インフィニオンインフィニオン テクノロジーズジャパン 部長 北爪昇氏

新生インフィニオンが本格的に始動した。Infineon Technologies(インフィニオン テクノロジーズ)は、International Rectifier(IR:インターナショナル・レクティファイアー)を2015年1月に事業統合した。パワー半導体の分野で、圧倒的事業規模を誇る。加えて開発力、製品力、システム提案力でその存在感をさらに高めていく。同社日本法人でパワーマネジメント&ディスクリート部長を務める北爪昇氏に聞いた。

» 2015年08月24日 00時00分 公開
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補完関係にあるIRを買収

――2015年1月のInternational Rectifier(IR:インターナショナル・レクティファイアー)との統合によってパワー半導体の事業環境はどのように変わりましたか。

北爪氏 インフィニオンは、『パワー半導体』、『車載半導体』、『スマートカードIC』の3分野にフォーカスして事業を展開しています。パワー半導体の分野で見れば、インフィニオンは大電力向け市場で強みを持ち、コンピュータやタブレット端末、民生電子機器まで、幅広い用途向けの製品を展開しています。市場では欧州に強みがあります。

 IRはどちらかといえば民生電子機器向けパワー半導体製品で高いシェアを有しています。市場は米国に強みがあります。これらのことからも、互いに補完する関係といえます。ディスクリートパワー半導体とパワーモジュール製品の分野に限定すれば、数値を合算すると、2014年9月時点における市場占有率は18%弱となります。

一段と拡大された製品構成

――実際に搭載されている応用製品はどのようなものですか。

北爪氏 パワーマネジメント&マルチマーケット事業部門は、発電から電力を消費する機器やシステムまで、電力ネットワークのバリューチェーン全てに必要となるパワー半導体やモジュール製品が事業対象となります。事業統合によって、製品ポートフォリオは一段と拡大しました。

新生インフィニオンの製品がカバーしている領域のイメージ図 (クリックで拡大)

 パワー半導体に関して言えば、ほとんどのアプリケーション領域をカバーすることができるようになりました。太陽光発電システム用インバータ装置やコンピュータ/サーバ、産業機器、TVなどの電源用途に向けた製品から、EV/HEVなどの車載機器、モーター制御、LED照明制御などの用途に向けた製品などがあります。しかも、重複している製品群は少なく、高度に補完された製品ポートフォリオとなっています。

300mmウエハー製造、パッケージ技術、GaN/SiC技術などを相互活用

――事業統合の効果は、製品の開発や製造面でも期待できますね。

北爪氏 事業統合のメリットは、製品ポートフォリオの拡大だけではありません。製造面ではスケールメリットが得られます。300mm薄型ウエハーによる製造や、各地に保有している製造拠点を有効に活用することができます。また、IRが開発したユニークなパッケージ技術の流用、化合物系パワー半導体における技術開発の加速と製品群の拡充が可能となります。さらに、営業戦略的には、米国やアジア太平洋地域におけるプレゼンスの強化と事業規模の拡大などに期待しています。

 次世代パワー半導体として注目されているSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)デバイスの開発・事業化でもマーケットリーダーとしての体制を整えています。インフィニオンは2001年よりSiC SBD(ショットキーバリアダイオード)を量産しています。いち早く開発に着手したことから、多くの技術特許も保有しています。SiC トランジスタも開発中です。

 IRはGaNパワー半導体に強みがあります。既にノーマリオン型のGaN HEMTとして耐圧100V品を量産中で、600V品のサンプル出荷も始めています。また、インフィニオンはパナソニックと提携しノーマリオフ型の製品も開発しています。現在の予定では2016年の早い時期にも出荷できる見通しです。1kW未満の用途にはノーマリオン型で、1kW以上の用途にはノーマリオフ型の製品で、それぞれ対応していく計画です。また、耐圧が1000V以上の用途にはSiCパワー半導体、1000V未満で高速スイッチングの要求が強い用途に対してはGaNパワー半導体を提供していきます。さまざまなニーズに応えられるパワー半導体製品の提供が可能となります。

高耐圧から低耐圧までのSiベースのパワー半導体

――Si(シリコン)ベースのMOSFET製品もさらなる技術進化を遂げています。

北爪氏 高耐圧製品の「CoolMOS」は、スーパージャンクション(SJ)構造を採用し、Siの理論限界を超える低オン抵抗を達成しています。サーバやEV/HEV、デジタルTVの電源回路、あるいはLED照明制御用コントローラなどに用いられています。オン抵抗が極めて小さいことから、高い電力効率が求められる用途で注目されています。一例ですが、データセンターにおける電力消費の増加が大きな課題となっています。空調設備も含め消費電力は全体の20%を占めるとも言われており、この電力消費を1〜2%節減するだけでも大きな省エネに貢献することができます。

 CoolMOSは、第7世代の「C7シリーズ」が最新の製品となります。単位面積当たりのオン抵抗は世代ごとに半減しています。第6世代の「C6シリーズ」のオン抵抗は37mΩでしたが、C7シリーズでは耐圧600V版で17mΩを達成しています。単位面積当たりのオン抵抗は、技術革新によってまだまだ下げることが可能であると考えています。

最高性能からコストパフォーマンス追求までそろう

――CoolMOSの製品構成とその特長を教えてください。

北爪氏 高性能/高効率製品群と価格性能比に優れた製品群の2グループに大別することができます。両方の特長を備えたバランスの良い製品「P6シリーズ」も用意しています。パッケージも豊富にラインアップしました。

 高性能/高効率製品には、「C7シリーズ」と「CPシリーズ」があります。2005年に投入したCPシリーズは、スーパーコンピュータにも搭載されている製品です。スイッチング速度が速く、スイッチング損失が小さいことで一世を風靡(ふうび)しました。C7シリーズはCPシリーズの後継製品として2013年に発表しました。ハードスイッチングトポロジ向けに最適化されています。オン抵抗はパッケージがTO-247で17mΩ(600V版)に低減しました。パッケージを工夫することで将来的には10mΩの製品も出荷が可能です。TO-220パッケージ品でも40mΩ(600V版)製品を供給しています。C7シリーズには耐圧650V版(オン抵抗は19mΩ)も用意しています。設計者が大きめの安全マージンを確保できるようにするためです。

CoolMOSが対応するパッケージ群 (クリックで拡大)

 価格性能比に優れた製品群としては、ゲート抵抗を内蔵するなどして回路設計を容易にした第6世代の「C6/E6シリーズ」や、車載対応品なども用意した「CFD2シリーズ」などがあります。一方、P6シリーズは、CPシリーズの性能とC6シリーズの使いやすさを併せ持つ製品となります。ハードスイッチング、ソフトスイッチングのいずれの用途にも対応することができます。このため、PCや民生電子機器からテレコム機器、サーバ関連まで幅広い用途に適用することが可能です。

――オン抵抗を低減するための技術要因は何でしょうか。

北爪氏 C7シリーズは、薄型の300mmウエハーを用いて製造します。また、微細加工技術によりアスペクト比を高めた構造としています。これにより耐圧や信頼性を確保しつつ、性能のさらなる向上を実現しました。既に、第8世代となるC8シリーズの開発も行っています。高速スイッチングの要求などから、将来はGaNパワー半導体のニーズが高まると想定されますが、C7/C8シリーズは、その間を埋める製品となります。

第5世代と第7世代のCoolMOS技術の構造を比較した図(クリックで拡大)

用途に応じた低耐圧MOSFET

――低耐圧MOSFET製品は、事業統合によって一気に製品群が拡大しました。

北爪氏 耐圧が20〜300VのMOSFET製品については、インフィニオンが「OptiMOS」、IRが「StrongIRFET」という製品名で展開してきました。事業統合によって2倍の製品ラインアップとなりました。特にOptiMOSは、「高速スイッチング」「低オン抵抗」「高効率」といった特長があり、電源システム用途に適した性能/特性を備えています。太陽光発電システムやUPS、ACアダプターなどに採用されています。

 これに対してStrongIRFETは、耐圧が20〜75Vでモータードライブなどの用途に強みを持っています。パッケージ技術も含め、大電流に対応しており、放熱性に優れるなどの特長があります。電動工具や電動アシスト自転車、電動フォークリフト、玩具などの用途に強みを持っています。性能/特性的にこれらの製品が重なりあう部分で、あえて切り分けるとすれば、スイッチング周波数が100kHz以上の用途はOptiMOS、100kHz以下ではStrongIRFETを推奨しています。

パッケージ展開がより多彩に

――低耐圧MOSFET製品における今後の取り組みを教えてください。

北爪氏 OptiMOSでは高い性能要求に応えるために、第5世代となるOptiMOS 5を開発しました。耐圧20〜150Vの製品群を用意しています。耐圧100VのOptiMOS 3に比べてオン抵抗を28%削減しています。パッケージの種類も拡大しました。SMDタイプとして300Aまで対応可能なTO-Leadlessを始め、POLなどパッケージの小型化要求が強い用途に対しては、Blade 3×3などにも対応しています。また、これまでインフィニオンの顧客からはさほど要求がなかったTO-247パッケージについても、IRが提供してきたことから、新たに製品群に追加しました。

 なお、D級オーディオアンプ向けMOSFETなどで、IRは大きなシェアを獲得しています。特に出力100W以上の市場では、GaN FET製品などで大きな占有率を保持してきた経緯もあり、この分野は引き続き注力していきます。


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提供:インフィニオン テクノロジーズ ジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2015年9月30日

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