コアスタッフは、商社機能、EMS機能に、完全子会社化したアットマークテクノのメーカー機能を加えて、包括的なIoT(モノのインターネット)プラットフォームが提供可能な事業体制を整えた。IoTプラットフォームベンダーとして、どのような製品サービス/技術戦略を描いているのか――。コアスタッフ代表取締役を務める戸澤正紀氏に聞いた。
――2017年4月に、これまで資本提携されてきた組み込みプラットフォームベンダーのアットマークテクノを完全子会社化されました。
戸澤正紀氏 コアスタッフとして現在、IoT(モノのインターネット)事業を強化している。アットマークテクノは、IoTゲートウェイ「Armadillo(アルマジロ)」などの設計、販売を15年以上展開してきている。
以前からパートナーとして、コアスタッフはアットマークテクノの部品調達や製造の一部を請け負ってきた。今回、完全子会社化した狙いは、そうした連携を一層深め、一体的にIoT事業を展開していくことにある。
完全子会社化に伴い両社の強み、弱みをあらためて精査し、アットマークテクノは設計、開発力という強みの部分に特化し、これまで以上に製品開発スピードを速めていく方針。製造や部品調達といった部分は、商社事業、EMS(電子機器製造サービス)事業で豊富なノウハウがあるコアスタッフが全面的に担当する。そして両社が連携して、IoT領域において新たなビジネスモデルを構築し、コアスタッフ・アットマークテクノグループとしてIoT事業のブランド化を図る。
――IoTでの新たなビジネスモデルとはどのようなものですか。
戸澤氏 IoT領域の顧客は、商社事業やEMS事業の顧客層とは若干異なり、自らハード、ソフトを設計、開発せずに、完成品を短納期で提供してほしいという要望が強い。加えて、完成品も汎用的なものではなく、顧客仕様にカスタマイズされたものが求められている。こうした要求に応えられる体制を構築して、ビジネスを展開したいと考えている。
実際、コアスタッフがアットマークテクノのArmadilloを顧客に提案する際、7割近い顧客が、Armadillo本体だけでなく、ArmadilloとIoTを構成するために不可欠なセンサーや信号処理部分を担うカスタムボードなども併せて提供してほしいと求めてくる。コアスタッフでは、これらの他、さらにはプリンタ、ディスプレイ、タブレットPCといった周辺機器を含んだソリューションとして顧客に提供している。
――コアスタッフは、営業人員を通じたデバイス/電子機器販売とともに、Web通販サイト「ザイコストア」などオンライン販売も展開されています。IoTソリューションの販売についても、オンライン活用を進められるのですか。
戸澤氏 ザイコストアの姉妹サイトとして3年ほど前からIoT関連製品を扱うWeb通販サイト「ITストア」を展開している。
ITストアは、アットマークテクノ製品はもちろんのこと、各種CPUボード、無線モジュール、センサーモジュールなどIoT構築に必要なあらゆるハードウェアを取り扱っている。IoTの試作や概念検証を進める方や小規模量産を行うユーザーに活用いただき、最近、急速に売り上げが伸びてきている。
IoT領域でのニーズは多種多様で幅広く、あらゆるハードウェアの組み合わせをITストアでそろえられるように取り扱い品目をさらに拡充しているところだ。
――IoTビジネスでは、顧客仕様の完成品を短納期で提供することが重要とのことですが、現状、どのようなサービスを提供されているのですか。
戸澤氏 機器の組み合わせなどのレベルでは、いかに品ぞろえを整えるかが重要であり、商社としての調達力が生かせている。さらに、センサーや周辺機器、ソフトウェアなどのベンダーや通信事業者、クラウドベンダーなどとパートナーシップを築き、エコシステムの構築にも力を入れている。
ボードレベルでのカスタマイズについては、アットマークテクノがArmadilloブランドで培ってきた技術力と設計資産を生かして対応している。Armadilloブランドでは、設計・開発が難しいCPU周りをモジュール化し、汎用的なベースボードを用意することでカスタマイズしやすさに配慮した製品シリーズもそろっている。それらの資産を生かし、さらにコアスタッフのエコシステムでセミカスタマイズすることにより、顧客が要求するソリューションを低コストかつ短納期で提供している。
さらにその一環として、Armadilloをベースとしたモノづくりの仕組みの構築を進め、2017年秋にも新サービスとして提供を開始すべく、準備を進めているところだ。
――2017年秋に提供開始予定の新サービスについて、詳しく教えてください。
戸澤氏 Armadilloの知財を生かして、圧倒的に早くかつ安くカスタムボードを提供する、新しいモノづくりの仕組みを構築している。
現在のアットマークテクノのビジネスは、汎用的なCPUボードの提供が8割を占めるが、IoT化が加速する中、今後はボード単体の販売だけではなく、顧客の目的に合った機器を迅速に提供するサービスとして提供していく。国内のパートナー工場などと協力してArmadilloエコシステムを構築することで、圧倒的に短納期でかつ高品質な、顧客満足度の高いサービスを実現していくことが目標だ。
開発中なのでまだ詳細は明かせないが、おそらく10月頃には公表できるだろう。
11月中旬に開催される「Embedded Technology / IoT Technology 2017」でもアットマークテクノブースで展示する予定なので、ぜひご期待いただきたい。
――IoTプラットフォームを提供するベンダーは多く、競争も激しくなりつつあります。
戸澤氏 センサーからクラウドまでの一括提供を目指して、エコシステムを形成する企業グループが数多く登場している。ただ、われわれのようにハードウェア、エッジ側を得意とする企業を核にしたグループは少ない。IoTは基本的にエッジ側から開発が始まり、最終的にクラウドへと行き着く。われわれは、ハードウェアの部分、すなわち、IoT構築の初期から密接に関わることができるという優位性がある。さまざまなIoTエコシステムが定着していくと思うが、コアスタッフ・アットマークテクノがパートナーとともに構築するエコシステムもその一角を占め、存在感を示したい。
――商社事業における戦略をお聞かせください。
戸澤氏 ザイコストアの強化と並行し、1つから大規模量産までの販売が行える販売代理店契約を結ぶサプライヤー数を増やしている。直近では、スタンレー電気、アルプス電気、大真空、太陽誘電などと新たに販売代理店契約を結び、合計30メーカー、約30,000品種については、常に在庫を保有し、大規模量産までの販売に対応できるようになった。近日中にSII(エスアイアイ・セミコンダクタ)の取り扱いも開始する予定だ。今後も取り扱いサプライヤー数を積極的に増やす。
また、ザイコストアの強みの1つに、EOL(生産中止)品の取り扱いの豊富さが挙げられるが、このEOL品ビジネスの一層の強化を目指して、このほど、EOL品の代替デバイスを設計、製造するサービス「EOLリボーン」をスタートした。
ザイコストアでは、EOL品を含む豊富な余剰在庫の取り扱いに加え、EOL品を再生産する半導体メーカー・ロチェスターエレクトロニクスの製品を販売してきたが、それでもEOL品が手に入らないというケースが生じてしまっていた。そこで、どうしても手に入らないEOL品を置き換えられるデバイスを新規に設計、開発し、製造して提供するターンキー型サービスとしてEOLリボーンを始めた。
EOLリボーンの提供は、ロチェスターをはじめ、EDAツールベンダーのCDC研究所、内藤電誠工業、Syswave、凸版印刷、Accukiaなど半導体の設計、製造などで知見を持つ企業と「EOL Alliance」を構成し、半年から1年程度の期間で再生産が行える体制を整えた。既に、複数の引き合いがあり、反応は上々だ。ロジック、アナログ、メモリ、カスタムICのEOLで困られているユーザーに認知を図っていきたい。
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提供:コアスタッフ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2017年9月21日