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AI/ディープラーニングを活用した外観検査を誰でもすぐに試せる評価キット学習用データは正常品画像数枚だけでOK!

人工知能(AI)/ディープラーニングの活用が広がる中で、現状、人の目に頼っている製造現場の外観検査への応用も期待されている。ただ、AI/ディープラーニングを活用した外観検査システムは、大量の学習用データが必要な上、導入コストも高く、試すことさえできない代物だ。しかし、このほど誰でもすぐにAI/ディープラーニング活用型外観検査システムを試すことができる評価キットが登場した。価格は20万円以下で、たった数枚の正常品の学習用画像データだけで、実用レベルの外観検査が行えるという――。

» 2017年08月24日 10時00分 公開
[PR/EE Times]
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 ディープラーニング、人工知能(AI)を活用した外観検査システムを、すぐに自社製品で試せる――。

 ソフトウェア開発ベンダーのシステム計画研究所(以下、ISP)と日本HP(以下、HP)、菱洋エレクトロの3社で協業し、2017年8月、AI/ディープラーニング(深層学習)技術を活用した外観検査エンジンを手軽に試すことのできる「Deep Learning 外観検査評価キットfor Windows」を菱洋エレクトロより発売した。

人海戦術に頼る工程を自動化できる学習ベース外観検査

 製造業における生産ラインでは、品質検査の1つとしてカメラやレーザーを用いた自動外観検査システムが使われている。これら既存の自動外観検査システムは、あらかじめ設定したルールに基づいて良/不良判定を行う“ルールベース”で動作し、製品寸法や外形異常の有無をチェックする。ただし、異常の種類が多い対象物や複雑なテクスチャ上の異常などに対しては、ルール設定が行いにくく異常検出が難しいといった課題も抱える。そのため、自動外観検査システムを活用しつつも、最終的には作業員が目視で外観検査(官能検査)を行うという製造ラインがほとんどだ。

 ルールベースの従来型自動外観検査システムが苦手とし、人手に頼っている外観検査を自動化する技術として注目されているのが、ディープラーニング技術を活用した学習ベースの自動外観検査システムだ。ディープラーニングとは、システム(機械)がデータの特徴を学習し、データの分類や認識を行う「機械学習」の一種。学習処理を行う高性能なプロセッサが登場してきたことにより、応用できる範囲が広がっており、画像認識/解析を行う外観検査分野でもディープラーニングの活用が進みつつある。

 外観検査における学習ベースの利点は複数ある。例えば、ルールベースが苦手な対象物でも、システム側が特徴点を自動で抽出し、良/不良判定が行える点が1つ。また、ルールベースではモノの形状や素材などに応じて都度、細かなルール設定が必要になり柔軟性に欠けるが、学習ベースではデータを学習させることにより、システム側でルールに相当する良/不良判定を行う推論モデルを生成するため、いろいろな形状や素材のモノの検査に適用しやすいという利点がある。

大量の学習用データを用意しなければ……

 ただ、ディープラーニング、学習ベースの外観検査にも、弱点や課題が存在する。弱点の1つが、学習用データを膨大に用意しなければならない点だ。現状の学習ベース外観検査を実現するには、正常品、不良品それぞれの画像データを数千枚から数万枚用意して学習させなければならない。不良品の画像データについては、異常パターンもある程度網羅しなければ、実用的な検知レベルに達しない。既に大量生産の実績を積んだモノであれば、こうした正常、異常データを蓄積している可能性こそあるが、新規に製造を立ち上げる際や、そもそも生産規模が小さい場合には、数千枚という膨大な学習用画像データを集めることは不可能と言える。結局、学習ベースの外観検査システムを導入できるのは、ごく一部の製造ラインに限られてしまっているのだ。

 そして、多くのディープラーニングエンジンは、UbuntuなどのLinux OS環境で動作するものが多く、一定のノウハウ、知識がなければ扱えない。ルールベースの外観検査システムでも同様だが、誰でも手軽に開発できるというものではなく、製造ラインでのディープラーニング応用を阻む一因となっている。

たった数枚の学習用データだけ! Windowsアプリで操作!

 そうした中で「誰でも手軽に学習ベースの外観検査システムを評価、試すことができる」をコンセプトに開発されたのがDeep Learning 外観検査評価キットfor Windowsだ。ISPが開発した製造業向けのディープラーニング活用型外観検査ソフトウェア「gLupe(ジールーペ)」(評価版*))と、「世界最小クラス」をうたうHP製ミニワークステーション「HP Z2 Mini G3 Workstation」(以下、Z2 Mini G3)が同梱された構成で、19万8000円(税別)という20万円を切る“導入しやすい低価格設定”を実現している。

Deep Learning 外観検査評価キットfor Windowsのイメージ。外観検査ソフトウェア「gLupe」がバンドルされたHP製ミニワークステーション「HP Z2 Mini G3 Workstation」(写真左手前の四角い筐体)で構成される

 同評価キットの核を成す外観検査ソフトウェアgLupeは、数枚の正常画像データを学習させるだけで、キズや歪み、異物混入といった異常を検知できるという特長を持つ。ISPの井上忠治氏は「技術の詳細は企業秘密で明かせない」とするものの「製造業の外観検査システムに特化して開発したISP独自技術で、数枚の正常な画像データだけでも実用レベルの異常検知率を達成できる」と説明する。

製造業向け外観検査ソフトウェア「gLupe」の概要

 gLupeは、2016年6月のリリース以来、わずか数枚の学習用画像データだけで始められる外観検査用ディープラーニングソフトウェアとして、金属部品加工や樹脂成形、食品製造などさまざまな製造現場で評価、導入準備が進んでいる。ただ「これまでは動作環境がUbuntu、Linuxベースに限られ、利用者が限られてしまっていた」(井上氏)という。そこで今回、GUI環境で学習、評価を行えるWindowsアプリケーションソフトウェアを開発し、WindowsベースのワークステーションであるZ2 Mini G3でgLupeを動作させることを可能にし、評価キットとして販売をスタートさせた。

ほぼマウス操作だけで評価できる

判定結果画面例。良/不良、OK/NGを決める異常値のしきい値も簡単に変更できる

 評価キットの登場でgLupeでの学習、推論モデルの評価は至って簡単になった。実際の学習、評価手順はこうだ。まず、Windowsアプリケーションを立ち上げ、そこに数枚の正常品を撮影した学習用データをドラッグ&ドロップし、学習開始ボタンをクリックする。すると、数秒〜数十秒で学習が完了する。さらに、評価用画像データをドラッグ&ドロップして、クリック操作で検査を実行すれば、良品、不良品判定結果が、学習処理同様に数秒〜数十秒の短時間で表示されるのだ。

製造業向け外観検査ソフトウェア gLupe デモンストレーション動画

 これだけの作業であれば、全くディープラーニングやソフトウェアの知識のない人でもgLupeの評価がすぐに行える。評価キットには、サンプルの画像データも含まれており、gLupeがどのようなものかを体感することが可能。手間暇を掛けて、学習用データをかき集めたり、gLupeが動作する環境を用意したりする必要は全くない。評価キットさえ購入してしまえば、まさに誰でも手軽に学習ベースの外観検査システムを試すことができるのだ。もちろんgLupeは異常検知感度などの設定機能を備えるが、そういった操作も全てGUIで設定でき、さまざまな条件での評価も簡単に行える。

 井上氏は「これまで、ディープラーニングを試してみたいという場合、高性能なGPUを搭載したワークステーションなどの環境を自分で構築しなければならなかった。そもそも、学習用データを収集したり、ディープラーニングエンジンを使いこなす知識を習得したり、少なくとも数百万円のコスト、数カ月の期間が必要で、試すあるいは評価するだけでも相当高いハードルが存在していた。そういう意味でも、評価キットは画期的だ」という。

実運用にも移行しやすいサポート体制

 Deep Learning 外観検査評価キットfor Windowsにより、学習ベースの外観検査システムをすぐに評価できる環境が整ったわけだが、気になるのは、評価後、実際に製造ラインにどうやって組み込んで、実運用できるのかだ。

 動作環境であるZ2 Mini G3は、58×216×216mmという“お弁当箱サイズ”の小型筐体ながら、NVIDIA製GPU「Quadro M620」やIntel製プロセッサ「Xeon」(E3-1200 v5ファミリー)を搭載する本格的なワークステーションだ。今後見込まれるエッジコンピューター領域の高性能化を見越して開発された小型ワークステーションであり「産業機器用途などでの連続稼働を要求される環境での使用に耐えうる信頼性を備え、製造ライン導入時にもそのまま使える」(日本HP ワークステーション営業部担当マネージャー 倉又祐二氏)という。「もちろん、複雑なディープラーニング処理を行う場合にZ2 Mini G3で処理性能が足りなければ、Z Workstationシリーズの上位機種に簡単に移行できる」(倉又氏)とし、スケーラブルに実運用ハードウェアを選択、移行できる環境が整う。

HPのデスクトップワーク ステーションラインアップ。小型筐体のZ2 Mini G3から、デュアルプロセッサー、グラフィックスカード最大4基の構成まで拡張できるハイエンドのZ840までがそろう

 gLupeについては、商用ライセンスを取得すれば製造ラインへの導入が可能となるわけだが、「使用状況や対象物に応じて、ディープラーニングエンジンを最適化し、カスタムチューニングするサポートサービスも提供している。もちろんシステム要件定義、仕様検討から、実装や試験まで一括して受託するフルサポートサービスも提供できる」(井上氏)。

Deep Learning 外観検査評価キットfor Windowsの販売で協業する3社の担当者。左から、ISP 井上氏、菱洋エレクトロ 青木氏、日本HP 倉又氏。

 また、Deep Learning 外観検査評価キットfor Windowsは、HPの販売代理店を務める菱洋エレクトロが販売を担当する。菱洋エレクトロは、HPの他、Z2 MiniのキーデバイスであるNVIDIA製GPUやIntel製CPU、WindowsなどMicrosoft製品も正規販売代理店として取り扱っており、デバイス、ソフトウェアからシステムレベルまで総合的なサポートを提供できる体制が整う。菱洋エレクトロ IoT営業本部営業第2部で部長を務める青木良行氏は「学習ベースの外観検査システムを実現する上で不可欠なカメラや照明など周辺デバイス、機器の提供、さらには工場全体をスマート化するようなソリューション提案も行える」とする。

あらゆる製造ラインに提案へ

 「gLupeは、金属、樹脂など対象物の素材や形状を選ばず、数枚の正常データから外観検査を行え、早期導入できるディープラーニングソフトウェア。もちろん実運用しながら学習することも可能で、検知率の向上や不良内容の判別といった機能を加えていくこともできる。外観の目視検査、官能検査を実施している製造現場に広く活用できるソフトウェアであり、Deep Learning 外観検査評価キットfor Windowsを通じて多くの方に試していただきたい」(青木氏)と語っている。

*)gLupe評価版:商用版との違いとして、入力画像枚数30枚(学習用画像データは10枚)、データ解像度512×512ピクセルまで、推論モデルの出力不可、商用利用不可の制限事項がある。

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提供:菱洋エレクトロ株式会社/株式会社日本HP
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2017年9月23日

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