幅広い用途で使うAC-DC電源は、機器設計者のニーズに合わせて出力電力を調整できる柔軟性が求められている。アーティセン・エンベデッド・テクノロジーズは、モジュール式を採用することで、より自由に、しかも素早くカスタマイズできる標準のAC-DC電源を豊富に取りそろえている。
民生機器や産業機器、医療機器、通信機器など、あらゆる機器に必ず搭載されているAC-DC電源。幅広い分野の機器において欠かせない部品なだけに、AC-DC電源に対する要件は多岐にわたり、しかも厳しい。
電源製品の設計と開発で40年以上の歴史を持つアーティセン・エンベデッド・テクノロジーズ(Artesyn Embedded Technologies、以下アーティセン)のEmbedded Power Global Technical Supportのバイスプレジデントを務めるCollon Lee氏は、現在AC-DC電源に求められている要素について、「何よりもまず、高い信頼性が挙げられる。特に産業機器では、過酷な環境でも動作する堅ろう性や、−20〜80℃といった広い温度範囲が必要になる。医療機器であれば認証を得ていることも必須だ。どの分野でも共通する要件としては、高効率、高電力密度がある。電源は、機器に使われる部品の中でも大きいため、小型化に対するニーズも根強い」と語る。
さらに、これからのAC-DC電源に求められる重要な要件として挙げられるのが、柔軟性だ。「AC-DC電源は、非常に多くの用途をカバーできるよう、出力電力などを簡単に変えられるといった柔軟性が重要になる」(Collon氏)
アーティセンは、こうした数々の要件に応えるべく、AC-DC電源の開発を進め、製品ラインアップを拡充し続けている。アーティセンの電源関連の技術は、1971年に設立されたAstec Powerに始まり、NortelのPower SystemsやEricsson Energy Systemsを買収し、さらにHuaweiからAvansys Power Systemsを買収するなど、大手企業のパワー変換事業のM&Aによって連綿と引き継がれてきたものだ。Micro-Tech Consultantsが2017年8月に発表した調査結果によると、組み込み電源では世界第3位のシェアを持つ。Lee氏は「電源機器の設計において蓄積したノウハウを持っている」と自負する。
アーティセンのAC-DC電源は、20W〜24kWという幅広い出力範囲でラインアップをそろえていて、その多くが、設計の段階から、産業機器と医療機器の安全認証を取得している。例えば、産業向けであればISO9001、医療向けであればISO13485やEN60601といった規格に準拠する。そのためユーザーは同じ電源を産業向けにも医療向けにも使えることになる。また、基本的にはトランスも自社工場で製造していて、それによって高い品質とコストパフォーマンスを維持できるようにしているという。
さらに特徴的なのが、出力電力をカスタマイズしやすいよう、モジュール式を採用した製品を用意している点だ。一般的に電源は、標準品よりもカスタマイズ品が使われることが多い。用途が広く、標準品だけではとてもカバーできないほど、求められる仕様も細かく違うからだ。そのため、機器の開発者は、オープンフレームAC-DC電源を複数使って、必要な出力電力を得られるよう、カスタム電源を開発しているのが現状だ。
アーティセンの「MicroMP(μMP)シリーズ」は、標準品にもかかわらず、モジュール式を採用することで、顧客の要求仕様に沿って容易にカスタマイズできるようになっている。MicroMPシリーズは、1.57×5.0×10.0インチのケースに最大6個のモジュールを搭載でき、1ケースの総出力は最大1800W。各モジュールは2V〜60Vの範囲で25種類の出力電圧を設定できるので、組み合わせは何千万通りにも上り、多くの用途をカバーできる。しかもアーティセンは、顧客の要望に合わせた電圧/電流/電力の組み合わせのMicroMPを、最短でわずか1日でカスタマイズできる。
Lee氏は、「モジュール式のAC-DC電源を開発するのは極めて難しい」と強調する。上記の通り、電圧、電流、電力の組み合わせは膨大な数になるが、そのあらゆる組み合わせについて、きちんと動作するかを検証、テストしなくてはいけないからだ。Lee氏は「電源の開発で40年以上の経験とノウハウを持つ、アーティセンならではの製品」と強調する。「MicroMPシリーズを使うことで、オープンフレームAC-DC電源を幾つも使って開発する時間とコストを低減できる」(同氏)
アーティセンは、モジュール式AC-DC電源の出力電力をさらに拡張している。最新の製品が、標準的な19インチラックタイプ(幅19インチ×高さ3U)の「iHPシリーズ」だ。こちらはMicroMPシリーズよりもさらに大電力向けで、出力電力は最大24kWである。なお、MicroMPシリーズは機器に組み込んで使うタイプだが、こちらのiHPシリーズはシステムに外付けするAC-DC電源になる。フルデジタル制御で、入力電圧は単相または3相。出力数は最大8つで、各出力は最大3kWとなっている。
Lee氏は、「24kWを出力できるAC-DC電源で、これだけ小型なものは他にない」と強調する。他社製品の場合、iHPシリーズと同じサイズだと、出力は3kW程度が多いという。つまり、24kWを出力するシステムを構成しようとすると、iHPシリーズと同じサイズのAC-DC電源が8台必要になるということだ。iHPシリーズが、いかに小型であるかが分かるだろう。現在は空冷式だが、水冷式のiHPシリーズも開発していて、水冷式になればファンを取り除くことができる。
iHPシリーズは発売済みで、半導体製造装置や、グリーンハウスに使うLED用電源などに幅広く採用されている。このグリーンハウスでは、iHPシリーズを採用する前はLEDパネルごとに電源が必要だった。「200枚のLEDパネルを使っているので、200台のAC-DC電源を設置していた。これら200枚のパネルを直列に接続することで、iHPシリーズを使えば1台で全てのLEDパネルを制御できるようになった。つまり、200台もの電源をたった1台のiHPシリーズで置き換えることができた」(Lee氏)
アーティセンは今後、日本市場にも力を入れていく。同社のターゲット市場はコンピューティング&ストレージ、民生機器、通信&ネットワーキング、産業機器および医療機器の4つだが、とりわけ日本では産業機器、医療機器に注力する。日本では、世界の他の地域に比べてより高い品質や手厚いサポートが求められる場合が多いため、アーティセンは、日本向けの製品にはテスト工程を増やすケースも有り、日本法人であるアーティセン・エンベデッド・テクノロジーズ ジャパンに品質担当を専門に置いている。Lee氏は、「日本には優れた医療機器メーカー、産業機器メーカーが数多く存在する。当社は、例えば医療機器向けであれば20W〜2kWと幅広い出力電力をカバーする製品ラインアップをそろえている。豊富な製品群と、40年以上蓄積してきた実績と知識を生かし、日本のメーカーをサポートしたい」と強調した。
Collon Lee氏インタビュー映像
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提供:Artesyn Embedded Technologies
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2017年12月19日
医療や産業の幅広いアプリケーション向けに設計されたアーティセンのiHPコンフィギュラブル・インテリジェントパワーシステムは、プログラム可能な電圧または電流源として、精度、分解能および安定性を実現しています。