アナログ・デバイセズは、リニアテクノロジーと事業統合を果たし“新生アナログ・デバイセズ”として2018年のスタートを切った。センサーから、アナログ・シグナルチェーン、プロセッサ、通信、そして電源まで、IoT(モノのインターネット)の時代に必要なあらゆる半導体製品、ソリューションのラインアップがより強化されたアナログ・デバイセズ。「2018年は、統合時の目標だった“1+1>2”を証明する1年にしたい」と語る同社日本法人 代表取締役社長の馬渡修氏にインタビューした。
――2017年は、リニアテクノロジーの統合が完了するなど、アナログ・デバイセズにとって歴史的な1年となりました。
馬渡修氏 旧リニアテクノロジーとの事業統合は、順調に進んだ。2017年6月には新たな事業組織体制が固まり、日本法人としても8月には担当レベルまで統合を進め、“1+1>2”の相乗効果を生み出すべく、補完関係にある両社の製品を互いの顧客に提案、販売するクロスセルを本格化させてきた。
――リニアテクノロジー統合後、最初の通期業績発表となった2017年10月期の業績は、売上高51億米ドルで前年比約50%増となるなど好調でした。
馬渡氏 リニアテクノロジーの統合影響を除いた旧アナログ・デバイセズとしては、前年比で23%の売り上げ成長を果たせた。2017年は半導体業界全体としても2桁以上の成長を達成したとみられているが、業界平均を上回ることができたと考えている。
日本法人についても、旧アナログ・デバイセズで前年比31%増、旧リニアテクノロジーも2桁成長を遂げ、全体で前年比22%の増収となり、全社同様、好調な1年だった。
――業績好調の要因はどのように分析されていますか。
馬渡氏 全般的に順調なビジネスを展開できた1年だった。
特にインダストリアル向けが、中国市場などでの旺盛な設備投資に支えられたことで好調だったのをはじめ、医療/ヘルスケア向けが良かった。オートモーティブ向けも引き続き堅調で、2桁の成長を実現できた。
どのアプリケーションにも共通するが、スマート化、IoT化に対するニーズが強くなっている。具体的にはセンサーや通信に関連した需要が増えている。従来からの加速度/ジャイロセンサーに加え、光学式の測距センサー、オートモーティブでのレーダー/ライダー関連の製品などが伸びている。
通信については、より高速な通信が要求されている。例えば、イーサネットも100Mビット/秒から、1Gビット/秒への高速化がより具体的になってきた。ここに対しては、2016年に買収したInnovasic(イノベーシック)の技術をベースに、インダストリアル向けのマルチプロトコル対応のPHYからスイッチまでに至るイーサネットソリューションを展開しており、好調だ。
――リニアテクノロジー、イノベーシックなど、IoTを見据え製品ラインアップがかなり充実してきました。
馬渡氏 従来から強化してきたセンサーと、元々、アナログ・デバイセズが強いシグナルコンディショニング製品があり、DSPやArmコアをベースにしたプロセッサを持ち合わせてきた。IoTでは、これらに通信が必要となるわけで、HDMIやRS485などのレガシーなインタフェース製品に、イノベーシックのイーサネット製品やリニアテクノロジーが「Dust Networks」ブランドで展開してきたSmartMeshなどが加わった。
SmartMeshは、信頼性が高く“切れない無線”として10年ほどの歴史を持つ無線技術であり、IoT化で増えている少量のデータを確実に送受信したいというニーズを満たす無線として、かなり引き合いを伸ばしている。
もちろん、電源についてはリニアテクノロジーの統合により大幅に強化されており、IoTに向けた製品ラインアップはかなりそろったと言える。
――2018年の抱負をお聞かせください。
馬渡氏 旧アナログ・デバイセズ、旧リニアテクノロジーという区別なく、1つの新しいアナログ・デバイセズとしてのソリューションが顧客に届くようにし、“1+1>2”という相乗効果を発揮することだと考えている。
組織としては、既に双方の顧客に対し、双方の技術、製品を提供するための体制へと移行した。オフィスも東京、大阪、名古屋の各拠点を1カ所に集約し、販売代理店についても新生アナログ・デバイセズとして最適化を図った。
しかし、中身の部分まで考えると統合作業の進捗状況は、現状50%程度だと考えている。2018年は、販売代理店の担当者も含め、互いの技術、製品知識を身に付けるなどのトレーニングなどを繰り返し、統合を100%完了させたい。
――2018年10月期の売り上げ成長はどの程度を目指されますか。
馬渡氏 日本法人としては10%程度の売り上げ成長を目指している。2017年10月期の成長率に及ばないものの、引き続き、インダストリアル、オートモーティブといったアプリケーションが売上を牽引するとみている。
――2018年の販売戦略について教えてください。
馬渡氏 用途市場別に最適なソリューションを提供する「セグメントフォーカス」という考え方は変更しない。そしてインダストリアルや通信インフラ、オートモーティブ、医療/ヘルスケアの各セグメントへの注力を継続する。
インダストリアルでは、シグナルチェーン、ネットワーク、センサーといった製品でスマート化の流れに対応する。通信インフラは、2018年もワイヤレス関連は需要が低迷する見込みだが、2019年以降は5G(第5世代移動通信)関連の投資が立ち上がっていく見通しであり、しっかりとした準備を行って行く。オートモーティブについても電動化と、ADAS(先進運転支援システム)/自動運転という2つの流れに沿うソリューションの提供を行う。医療/ヘルスケアについては、病気予防や遠隔治療を実現する新たなヘルスケア機器市場の立ち上がりに期待している。
――これまで「ブロードマーケット」として中小規模の顧客向け市場でのサポート強化を進められてきました。リニアテクノロジーとの統合で戦略に変化はありますか。
馬渡氏 ブロードマッケットでも、“1+1>2”の相乗効果を生み出すべく強化を進めていく。これまで、アナログ・デバイセズ、リニアテクノロジーそれぞれが行ってきたセミナーや展示会など、ブロードマーケットでの存在感を高める施策は原則、継続する。例えば、旧リニアテクノロジーが継続して開催してきた「アナログ・グルとの集い」を2017年12月に開催した。旧リニアテクノロジーとアナログ・デバイセズ双方の“グル”“フェロー”と呼ばれる優秀なアナログ回路技術者が講演、400名を超えるお客様にご聴講いただいた。今後の各種セミナー、イベントでも相乗効果を発揮したい。
また、ブロードマーケットでのプレゼンス強化として、旧リニアテクノロジーが進めてきたSpiceシミュレータ「LTSpice」の普及促進も継続する。LTSpiceの国内ユーザークラブには約5000名の登録があり、好評だ。今後は、旧アナログ・デバイセズ製品のモデルの整備も急ぎ、よりアナログ回路を設計しやすい環境を提供することを目指す。
――2018年期待の製品を教えてください。
馬渡氏 期待できる製品は多くある。その中でも、独自デジタル絶縁技術「iCoupler」(アイカプラ)やパッケージ封止型電源モジュール「μModule」などの採用は特に伸びると見ている。
iCoupler技術をベースにしたデバイスには、高速インタフェースであるLVDSを直接絶縁できるLVDSデジタルアイソレータや、絶縁を図りながら電力を供給できるデバイス、絶縁型アンプやIGBT駆動用デバイスなどがある。機器同士がつながるIoT化で絶縁の必要性は増し、要求も多様化していることから、2018年もiCouplerに対する引き合いは増え続けるとみている。
――パッケージ封止型電源モジュール「μModule」についても教えてください。
馬渡氏 μModuleはインダクタや抵抗などの受動部品もパッケージに内蔵した電源モジュールで、設計の手間なく、完成度の高い電源を構成できる製品。加えて昨今は、受動部品も含めて調達難に遭遇するケースも増えており、そうしたリスクを軽減するソリューションとしてμModuleの採用が広がっている。特に日本では、世界に先駆けてμModuleの採用が進んでおり、直近5年は2桁の売上成長を続けている。
今後も高効率で小型の電源を短期間で設計したいというニーズは、インダストリアル、オートモーティブなどさまざまな要素で、ますます高まる見込みであり、期待している。
アナログ・デバイセズでは前々から、単なる半導体デバイスの提供にとどまらず、システムレベルでの価値を提供する“Going Beyond Silicon”という目標を掲げ、提案を進めてきた。μModuleも“Going Beyond Silicon”を具現化したソリューションであり、シグナルチェーン、電源の双方で、顧客の技術課題を解決する最適提案ができるようになったということでも大きな意味がある。
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提供:アナログ・デバイセズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2018年2月15日