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スマートファクトリの実現へ。成長のドライバは「組み込みのAI」パートナーと一緒に歩みながら

スマートファクトリの実現に向けた取り組みが本格化する。エンドポイントにおけるAI(人工知能)技術の実装もその1つである。「尖ったハードウェア」と「価値あるソフトウェア」を組み合わせたプラットフォームベースのAIソリューションなども登場した。

» 2018年02月28日 10時00分 公開
[PR/EE Times]
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プラットフォーム活用で、AI実装を効率的に

 「第4次産業革命」――。世界中で「ものづくり」を取り巻く環境が大きく変わろうとしている。産業機器にAI(人工知能)技術が実装され、自動化や無人化などスマートファクトリの実現に向けた取り組みが加速している。ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)は、産業機器などにAI機能を組み込むための「e-AI」を提唱。パートナー企業と連携し、産業機器にAI技術を容易に実装するためのプラットフォームを提供する。

 製造業における技術革新への取り組みは、地球規模で展開されている。日本では経済産業省が、さまざまなつながりによって、新たな付加価値が創出される産業社会「CONNECTED INDUSTRIES」を提唱する。これは日本が目指す未来社会「Society 5.0」につながるコンセプトだという。世界的にはドイツの「Industrie4.0」が先導し、中国では2025年に製造強国トップグループ入りを目指した「中国製造 2025」、米国では民間企業が主導し、インダストリアルIoT(モノのインターネット)の実現に向けた国際的コンソーシアム「IIC(Industrial Internet Consortium)」などが活動している。

地球規模で展開される製造業における技術革新への取り組み出典:ルネサス

 これまでスマートファクトリ化は、半導体工場や自動車工場などに特化した専用の製造装置を中心に進んできた。これからは、多くの汎用装置が設置された機械組み立て工場や食品工場などにおいても、さまざまなセンサを用いて製造装置や検査装置を自律的に稼働させる工場のスマート化が急速に進展する可能性が高い。「止まらない」「人手に依存しない」工場を実現するためである。

 スマートファクトリを実現するには、IoT端末となるエンドポイントのインテリジェント化を始め、ネットワークの接続容易性やデータの大容量化、高速処理への対応などが必須といわれている。特に、クラウド側のサーバを中心に導入が広がるAI技術を、エンドポイントの産業機器にも活用すれば、異常検知や予知保全、認知(音、目視、触覚)的検査などがエッジ側で可能となる。同時に、AI技術を広く普及させるためには、エンドポイント機器の開発効率を改善することが重要となる。

 ルネサスが提唱する「e-AI」ソリューションは、こうしたニーズに基づき登場した。これまでは、クラウド側に実装されたAI技術で、「学習」と「推論実行」の両方を行うのが一般的であった。これに対してe-AIは、「推論実行」のみをエンドポイントで行う仕組みである。学習済みのニューラルネットワーク情報を、産業機器などに搭載されたMCU/MPUに組み込むことによって実現する。産業FA分野で求められるリアルタイム性や安全性、頑強性も高めている。

AIはクラウドからエンドポイントへ 出典:ルネサス
ルネサスの執行役員常務でインダストリアルソリューション事業本部の本部長を兼務する横田善和氏

 ルネサスの執行役員常務で、インダストリアルソリューション事業本部の本部長を兼務する横田善和氏は、「当社が目指すe-AIとは、エンドポイントのインテリジェント化であり、クラウドの世界ではない。このため、AIをIT(情報技術)とOT(運用技術)の領域に分けた」と話す。IT領域では、「学習」に必要な性能実現に向けては、GPGPUやFPGAベンダーが製品開発にしのぎを削る。OT領域では「推論実行」に必要なレベルまでMCU/MPUの性能を向上させていく。これによって、「AI処理を必要とする市場は破壊的に拡大する」と予想する。

 ルネサスは、産業機器などに向けて、MPU「RZ」ファミリやMCU「RX」ファミリを提供している。横田氏は、これらの製品でAI処理性能を、向こう3年間で現行製品に比べて1000倍に高めていく計画を明らかにした。MCU/MPUにDRP(Dynamically Reconfigurable Processor)機能を追加するなどして、驚異的な性能を実現する予定である。

 例えば、RZファミリにDRP機能を搭載した最初の製品は2018年半ばに投入する予定である。この製品は現行製品に比べてAI処理性能が10倍となる。2019年後半にはその処理性能を10倍に高めた製品を開発する。その18カ月後には、処理性能をさらに10倍高めた新製品を投入する予定である。微細プロセス技術の採用やDRP機能の強化などを行うことによって、演算性能の向上を目指す考えである。

 DRPは、アルゴリズム開発をC言語で行い、それを直接ハードウェアとしてチップに実装することができる。しかも、実装した回路ブロックは1クロックサイクルごとに再構成することが可能である。これによってAIの処理内容に応じて回路を最適化することができる。DRP技術は10年以上も前から同社がカスタムICなどに適用してきた、量産実績のある技術である。

 「現行のMCU/MPU製品だと、推論実行に必要な性能要求を十分に満たすレベルまで達していない。新製品は3年後にAI処理能力を1000倍に高めていく。これを実現すると、クラウド側に採用されている現行のGPGPU製品の処理性能に近づく。簡単な学習であればエンドポイントで実行することも可能になる」(横田氏)という。組み込みシステムに不可欠なリアルタイム処理の実現に加え、消費電力を抑え発熱などの課題をクリアしているのも同社の強みである。

「尖ったデバイス」と「価値あるソフトウェア」

 ルネサスは、スマートファクトリの実現に向けて、「尖ったデバイス(Distinguishing Device)」の開発に注力すると同時に、パートナー企業と連携し、「価値あるソフトウェア(Application Knowledge)」と組み合わせた、プラットフォームベースの産業向けソリューションを顧客に提案する。既に、産業ネットワーク向けソリューション(RZ/Nシリーズ、OPC-UA対応製品)、モータ制御向けソリューション(モータベンチ、レゾルバソリューション)、産業機器向け機能安全サポートプログラムなどが提供可能だ。これらを活用することで、システム設計者は開発工数やリスクの削減が可能となる。

「尖ったデバイス」ソリューションと「価値あるソフトウェア」ソリューションの一例 (クリックで拡大) 出典:ルネサス

 これらの活動を推進する母体が「R-INコンソーシアム」である。R-INコンソーシアムは2015年4月より活動を始めた。2018年1月現在で、67社のパートナー企業が活動している。この中には、開発環境や評価ボードなどを提供する企業や、ネットワークミドルウェアや機能安全、セキュリティなどに関するソリューションを提供する企業、受託開発やコンサルティングサービスを行うシステムインテグレーター企業などが含まれる。R-INコンソーシアムのメンバーは、産業機器/システムの効率化や高付加価値化につながるソリューションを顧客にワンストップで提供する。同時に、参加するパートナー企業同士が連携して、新たな製品開発やビジネス開拓を行う共創の場にもなっている。

R-INコンソーシアムの活動事例

 写真左は会員企業8社の商材を利用して開発したリコーインダストリアルソリューションズ製の産業用PC「AP-10A」。写真右はAP-10Aをコントローラとして、DCモータを搭載したスカラーロボットの動作をリアルタイムに制御するデモの模様。
 リコーインダストリアルソリューションズは、コンソーシアムの商材を使用し、顧客が求める製品/ソリューションを開発した。AP-10Aはルネサス製「RZ/T1」やIntel製「Core i7」を実装するとともに、アイ・エル・シー製の「ソフトウェアPLC」、JSLテクノロジー/Acontis Technologies製の「EtherCAT」関連ソリューション、eForce製「リアルタイムOS」を搭載している。「ソフトウェア開発の部分でパートナー企業との連携が重要であった」(担当者)と話す。

 e-AIベースの「AIユニットソリューション」も、「尖ったデバイス」と「価値あるソフトウェア」を組み合わせることで実現した。スマートファクトリ化によって多くのセンサがつながり、そこから大量のデータが生成される。これに伴い「リアルタイム性」や「ネットワークの帯域幅」「データ解析のリソース不足」といった課題が浮上する。これらを解決するのがエンドポイントのインテリジェント化である。

 スマートファクトリの実現に向けては、導入コストの点で高いハードルも残されている。「データ収集〜蓄積〜分析〜制御」という一連の処理を行う中で、現在は「データ収集から蓄積」「分析から制御」の工程で、コストの高い壁が存在するという。

 ルネサスが提案するAIユニットソリューションは、これら一連の処理を1台で実行するためのリファレンスデザイン(ハードウェア)と、それを使いこなすためのソフトウェア、開発環境などをパッケージにして提供する。これによって、課題となっているコストの高い壁を解消することが可能となる。

AIユニットソリューションはAI導入の課題を解決する 出典:ルネサス

 AIユニットが行う処理はこうだ。センサで収集した波形データをAIユニットに入力すると、判定に必要な波形データに切り取るなど前処理を行う。この波形から状況を分析し判定する。判定結果をリアルタイムに制御部へフィードバックする。これらの処理をAIユニットだけで実行するため、クラウド側に送信するデータ量を大幅に削減することができる。

 特に、取り込んだ波形データを50ミリ秒でサンプリングするため、精度の高い異常検知が可能となる。これまでは1秒間隔でサンプリングしていた。この場合に取りこぼしていた異常データも見落とすことがない。検出精度を高めることで設備のダウンタイムを最小限に抑えることができる。

 第1弾として、ルネサスが提供するリファレンスデザインを活用し、明電舎とAdvantechがそれぞれボックス型の「AIユニット」を開発した。工場内にある既設の産業機器などにこのAIユニットを後付けすれば、機器の異常検知や予知保全を即時可能とするなど、スマートファクトリを容易に実現することができる。次のステップとして同社は、外付けユニットではなく、産業機器の設計当初からAI機能そのものを内蔵してもらうようなソリューションの提案とサポートを行っていくと共に、R-INコンソーシアムを母体としたパートナーシップによるソリューションのN倍化も検討する。

ルネサスのインダストリアルソリューション事業本部IAソリューション事業部の事業部長を務める傳田明氏

 ルネサスのインダストリアルソリューション事業本部IAソリューション事業部の事業部長を務める傳田明氏は、「産業FA市場では、エンドポイントをしっかり押さえて、ビジネスをクリエイトしたい。そのためには、プラットフォームをベースとした付加価値の高いソリューションが重要となる。e-AIソリューションは既に、さまざまな顧客から多くの反響を得ている」と話す。

 AIユニットソリューションの応用事例として、溶接ロボットにおける溶接トーチの電流モニタリング、工作機械における振動センサを用いた異常検知などを挙げる。

AIユニットソリューションの応用事例。左は溶接ロボット、中央は工作機械、右は装置の異常検知や予知保全の例 (クリックで拡大) 出典:ルネサス

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提供:ルネサスエレクトロニクス株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2018年3月27日

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ルネサス エレクトロニクスは2017年10月27日、子会社であるIntersil(インターシル)の社名を2018年1月1日付で「Renesas Electronics America」に変更すると発表した。

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