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車載マイコンの可能性を徹底追求するサイプレス「Traveoファミリ」の現在と未来多機能を「シングルチップ」で

自動車の進化に応じて、自動車に搭載されるマイコンなどのデバイスの個数は増加し続けてきた。しかし、デバイスの搭載点数の増加は、自動車開発の複雑化を招く要因となっている。そうした中で、1つのマイコンでより多くの機能を集積し、部品搭載点数での自動車の進化を実現しようというアプローチで開発された車載マイコン製品群「Traveo(トラベオ)ファミリ」が市場に受け入れられている。Traveoファミリとはどのような車載マイコンなのか、今後どういった製品開発を予定しているのか。Traveoファミリの「現在」と「未来」を紹介する。

» 2018年09月11日 10時00分 公開
[PR/EE Times Japan]
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 「より安全・安心(Safety)で、より環境に優しく(Ecology)、より快適・便利(Comfort)に」を目指して、日々、進化を遂げている自動車。そうした進化の多くはご存じの通り、“電子化”“電動化”といったエレクトロニクス技術による部分が大きい。

 そうしたエレクトロニクスによる自動車の進化を象徴する数字がある。1台の自動車に搭載されるマイコンの数だ。“電子化”“電動化”の制御を担うマイコンの搭載個数は、1980年代は10個程度に過ぎなかったが、2010年ごろには100個に到達。その後も、自動車の進化に応じて右肩上がりに増え続け、2020年には200個以上のマイコンを搭載した自動車が登場するとの予測もある。

 自動車の進化はこれからも続いていくだろう。ただ、これ以上、進化に応じてマイコンの搭載個数を増やしていくわけにはいかない。自動車の開発は複雑性が増し負担が大きくなる上、物理的にもマイコンなどの部品を搭載するスペースも次第に限られてきている。また、部品点数の増大は、コスト増や故障リスクの増大なども招く。自動車は、マイコンなど部品の搭載点数を抑えながら、進化を遂げることが求められつつある。

自動車の進化を“1つのマイコン”で実現するTraveoの「現在」

 そうした中で、サイプレス セミコンダクタ(Cypress Semiconductor)は、「シングルチップ・オートモーティブ・ソリューション戦略」を徹底している。1つのマイコンでより多くの機能を集積し、少ない部品搭載点数での自動車の進化を実現しようというアプローチだ。

 そうしたシングルチップ・オートモーティブ・ソリューション戦略の核を担う製品が車載マイコン製品群「Traveo(トラベオ)ファミリ」だ。

 Traveoファミリは、今や車載マイコン業界の標準CPUコアとなった「Armコア」の中でも高性能コアに位置付けられる「Arm Cortex-R5」を業界で初めて搭載する車載マイコンとして2014年5月に発表された。それ以来、マイコンの製造プロセスとしては先端世代にあたる55nmないし40nmという微細製造プロセス技術を用いて高度に機能を集積した車載マイコンをラインアップし、クラスタやボディ制御、モーター制御用途で「シングルチップ・ソリューション」を提供している。

 サイプレス セミコンダクタ 自動車事業部でマーケティング部担当部長を務める大田比呂志氏は「Traveoファミリは、旧富士通・Spansion時代から高いシェアを有してきたクラスタ向けとボディ制御向け、さらには電気自動車/ハイブリッド車用のモーター制御向けの3つの用途に重点を置いて、ラインアップを強化してきた。いずれの用途でも、シングルチップに機能を統合し、1つのマイコンであらゆる制御ができるというコンセプトを貫いている。2018年9月末にはクラスタ向けで10製品シリーズ、ボディ制御向けで5製品シリーズ、モーター制御向けで1製品シリーズという第1世代Traveoファミリで計画した全製品のラインアップが整う。先行して出荷してきた製品については、2017年から量産出荷が始まり、市販車への搭載が本格化しつつある」という。

あらゆる車種で実績を積み重ね続けるクラスタ向けTraveo

クラスタ向けTraveoが採用されているデンソー製クラスタ

 2018年9月末までに新たに1製品シリーズの信頼性評価が完了したサンプル出荷が始まり、10製品シリーズのラインアップがそろうクラスタ向けTraveoは、2017年にトヨタが発売した新型カムリに搭載されるデンソー製クラスタに採用されるなど、グラフィックス表示化が進むクラスタ市場で多くの採用が進んでいる。「元々、Cypressはクラスタ用マイコンで高いシェアを持つが、Traveoの投入によりさらにシェアを伸ばすことができている」と大田氏は手応えを口にする。

 シェアが伸びている理由として、大田氏は次のように分析する。

「最新のクラスタといえば、一部の高級車が採用する全ての表示をグラフィックス化した“フルグラフィックスクラスタ”を想像する方が多いだろう。しかし、一部の高級車を除いた自動車全体のトレンドは、従来のアナログ表示とグラフィックス表示を組み合わせたクラスタが主流。しかも、グラフィックスを表示する液晶パネルのサイズもさまざまだ。Traveoは、こうしたアナログ表示とグラフィックス表示を組み合わせた主流のクラスタをシングルチップで実現することをコンセプトにしている。さらに、液晶サイズ/表示解像度に応じた製品ラインアップもそろい、さまざまなグラフィックス対応クラスタに適したマイコンを選べるということで、市場に受け入れられている」

 Cypressは、クラスタ市場を搭載液晶別に5つのカテゴリーに分類。「フルTFT液晶クラスタ」、3Dグラフィックス表示に対応する「大型TFT搭載クラスタ」、7型パネルまでの「中型TFT搭載クラスタ」、4.2型パネルまでの「小型TFT搭載クラスタ」、そしてセグメント表示に特化した「ドットマトリックス液晶搭載クラスタ」の5つで、フルTFT液晶クラスタを除く4つのカテゴリーに対し、シングルチップ・ソリューションを提供する。

あらゆる車種のクラスタに対し最適な製品が選択できるクラスタ向けTraveoのラインアップ。なお、2018年9月末には4Mバイト容量のフラッシュメモリと3Dグラフィックスエンジンを搭載する「S6J32MExシリーズ」の出荷が始まり、全10製品シリーズがそろう

 例えば、中〜大型TFT搭載クラスタカテゴリーに対しては、本格的な3Dグラフィックス処理が行えるラインバッファ方式の3Dグラフィックスエンジン搭載品と、疑似3Dグラフィックス対応の2Dグラフィックスエンジン搭載品(フレームバッファ方式)の双方をラインアップ。ドットマトリックス液晶搭載クラスタに対しては、グラフィックスエンジン非搭載品を展開。「グラフィックスエンジン非搭載品は、フルTFTクラスタで、グラフィックス専用LSIのコンパニオンマイコンとしても採用されている」(大田氏)

Traveoが搭載するグラフィックスエンジンの概要

 また、カテゴリーに応じたグラフィックスエンジン/液晶ドライバに加え、最大6つのアナログメーター表示に対応するモーター駆動制御機能を搭載。インタフェースも、カメラ入力(ITU656)をはじめ、LVDS、Ethernet AVB、CAN FD、MediaLB/MOSTなどを備える他、デュアルディスプレイ出力対応マイコン1つで、クラスタとヘッドアップディスプレイ(HUD)への映像表示も行えるようになっている。さらに「クラスタがADAS(先進運転支援システム)の一部を担うようになり、必須の機能になりつつある」というクラスタで警告音などを発生させるための音声出力機能も強化。高音質サウンドを出力できる16ビットオーディオD-AコンバーターやPWM信号出力の他、複数の音声を合成するためのマルチチャンネルミキサなども備えている。

豊富なペリフェラルを備えるクラスタ向けTraveoの使用イメージ。Cypressでは、車載ネットワーク「CXPI」のトランシーバICや電源IC、メモリなどTraveoの周辺チップもそろえ、ワンストップソリューションを提供する

 ADASの一部を担う上でより高度な安全性も求められる。大田氏は「Traveoファミリは全ての製品で、機能安全規格『ISO 26262』で定められる安全性要求レベル(Automotive Safety Integrity Level/ASIL)のASIL Bを満たし、充実した機能安全サポートプログラムも提供している。また、車内ネットワーク上のデータのセキュリティを確保する『eSHE(enhanced Secure Hardware Extension)』にも対応している」と説明する。さらにグラフィックスエンジンを備えるクラスタ向けTreveoでは「人命に関わる警告表示の表示漏れを防ぐCRC(巡回冗長検査)回路も搭載している。ソフトウェアについても、機能安全プロセスに基づき開発しているグラフィックスドライバを提供している」とし、高い安全性を持つシングルチップ・クラスタ・ソリューションに仕上がっている。

ボディ制御向けTraveoではCAN FD 8チャンネル搭載品も

 ボディ制御向けTraveoについても、高い安全性を担保しながら、シングルチップでさまざまな機能を実現する製品がそろう。例えば「Traveo/S6J335xシリーズ」は、動作周波数240MHzというCortex-R5の高い性能を生かしつつ、CAN FDを8チャンネル分、サポート。さらに、Ethernet AVBやMediaLB、最大12チャンネルのMFS(Multi-Function Serial)、最大64チャンネルの入力に対応できる12ビットA-Dコンバーターなど、車載ネットワークゲートウェイECUをシングルチップで構成できる充実したインタフェースを備える。

CAN FDを8チャンネル分サポートする車載ネットワークゲートウェイ向けTraveoの利用イメージ

 「ボディ制御用途では、機能集積とともに、待機時消費電力の低減に対する要求も強い。Traveoは、RAMの記録保持用電力以外の電力を全て遮断する動作モードなど、多彩な待機動作モードを備えており、そうした面でも高い評価を得ている」(大田氏)

EVモーターとジェネレーターを1チップで制御できるTraveo

 ハイブリッド車(HEV)/電気自動車(EV)の動力モーター制御用の「Traveo/MB9D560シリーズ」は、HEV/EVシステムにおいて不可欠な主動力モーターとジェネレーター(発電用モーター)という2つのモーターの制御をシングルチップで実現するマイコン。従来は、2つのマイコンが必要だったが、高いCPU性能と豊富なペリフェラルでシングルチップ構成を可能にしている。

ボディ/モーター制御向けTraveoの製品ラインアップ

 マイコンの可能性を追求し、さまざまな用途で最大限の機能を発揮するTraveo。ただ、さまざまな機能を集積しシングルチップ・ソリューションを実現するものの、Traveoを駆動するためのパワーマネジメントIC(PMIC)などはどうしても必要になる。マイコンだけでなく、メモリ、アナログ/ミックスドICなどを幅広く展開するサイプレス セミコンダクタでは、Traveoに最適化したPMICをラインアップするなどボードレベルでのトータルソリューションも用意。最大4Mバイトという大容量フラッシュメモリを備えるTraveoだが「3Dグラフィックスなどを実現する場合、内蔵メモリでは不足する場合もある。そこでTraveoは、333Mバイト/秒の高速転送速度を実現するメモリインタフェース『HyperBus』を備え、HyperBus対応のCypressが提供する高速フラッシュ/RAMを外付けメモリとして利用できる。他にも、CXPIトランシーバICや、静電容量式タッチボタンや各種I/Oの拡張に便利なプログラマブルSoC『PSoC』など、先進の車載システムを実現するためのデバイスを提供できる体制が整っている点も、Cypressの強みになっている」と語る。

さらなる自動車の進化へ、大きな期待が集まるTraveoの「未来」

 まもなく、全製品ラインアップがそろうTraveoファミリだが、その進化はまだまだ止まらない。サイプレス セミコンダクタでは、2019年のサンプル出荷を目指し、第2世代Traveo『Traveo II』の開発を本格化させているという。

サイプレス セミコンダクタ自動車事業部マーケティング部担当部長 大田比呂志氏

 Traveo IIは、第1世代Traveoと同様に“シングルチップ・ソリューション”を追求し、用途に応じた最適な機能を最大限集積した製品群がそろう見込みだ。高性能なArm Cortex-M7と、低消費電力のArm Cortex-M4と、特長の異なる2種のArmコアを使い分け、「第1世代Traveo以上に、さまざまな車載用途をカバーする車載マイコンファミリになる」(大田氏)という。製造プロセスは40nmプロセスを使用し、サイプレス独自の混載フラッシュメモリ技術「40nm eCT技術」も駆使し、最大8Mバイトという大容量フラッシュメモリ搭載品もラインアップする方針。大田氏は「大容量フラッシュを生かし、『Over The Air』(OTA)によるプログラムアップデート機能も標準サポートする。他にも、クラスタ向けでは、より高解像度に対応するグラフィックスエンジンを搭載する計画になっており、これからの車載システムに要求される機能、性能を実現していく」と話す。

 なお、Traveo IIは、サイプレス セミコンダクタの独自設計開発思想「HOBTO」の下で開発を進めているという。HOBTOは、さまざまなIP(回路設計資産)を限りなく小さく、かつ、信頼性を持ち、競争力のあるものとして開発し、それらのIPを組み合わせて、製品開発するという考え方。IPそれぞれを、時間を掛けて確固たるものとして開発、検証しておけば、IPを組み合わせた製品に関しては、低コスト、短期間で開発できる上、顧客要望に応じたカスタム品も容易に提供できるという利点がある。幅広いラインアップをそろえる必要のある車載マイコンにも適した設計思想。大田氏は「Traveo IIでは、クラスタ、ボディ制御、モーター制御などのアプリケーションで、より幅広いニーズに対応するラインアップがスピーディに整う。ぜひ、Traveo IIにも期待してほしい」と語っている。

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提供:サイプレス セミコンダクタ
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2018年10月10日

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