常時130万個の在庫を誇る、電子部品ディストリビューターの大手Digi-Key Electronics(以下Digi-Key)。同社が保有する倉庫はたった一つしかない。Digi-Keyは、このたった一つの倉庫を核として、「発注と同日に出荷する」をはじめとする、同社の基本姿勢を貫いている。プレジデントのDave Doherty氏に、2018年の業績や、2019年の戦略や市況を聞いた。
――2018年の業績を振り返ってください。
Dave Doherty氏 2018年の業績は非常に好調だった。例えば日本では前年比22%増の売上高を達成している。2018年におけるグローバルでの売上高は32億米ドルと、2017年の23億米ドルを上回った。
――業績が好調だった理由は何でしょうか。
Doherty氏 エンジニアにとって、製品や部品が入手可能かどうかをはじめ、タイミングやサービスは全て、製品の設計と開発に大きな違いをもたらす。エンジニアは、時間とリソースが限られていて、専門知識や経験が不足していると感じる場合でも、迅速かつ効率的に作業することが求められている。われわれはエンジニアに単一のリソースを提供することができ、設計や生産プロセスのフェーズに関係なく、変化する要求に応えられる体制を整えている。Digi-Keyは積極的に最先端の技術を用いた製品群を拡張していることに加え、倉庫の拡張に対する投資も強いコミットメントを持って進めている。それが、好調な業績を支えていると考えている。
――Digi-Keyは、米国ミネソタ州シーフ・リバー・フォールズ(Thief River Falls)に倉庫を持っていて、2017年には倉庫に投資すると話していました。その進捗(しんちょく)はいかがですか。
Doherty氏 倉庫の拡張は予定通りに進んでいる。拡張する床面積は9万3000m2で、合計床面積は20万4386m2。これは既存倉庫の約3.5倍の規模となる。倉庫の骨組みは2018年末に完成し、2021年末までには倉庫の稼働を開始する見込みだ。
倉庫の拡張により、「最も幅広い製品群を提供し、常に在庫がある」というわれわれの基本的な方針を維持することはもちろん、さまざまな発注を一つの倉庫から出荷できるという当社の強みも、より強化されることになるだろう。さらに、当社が既に持っている在庫に対し、より補完的な製品や技術も提供する予定だ。
――2019年における事業戦略と売上高目標についてお聞かせください。
Doherty氏 スピードに対する要求は2019年も引き続き拡大していくだろう。多くの組織がデジタルビジネスの世界との関わりを深めていく中で、ビジネスのあらゆる側面が課題になるはずだ。エレクトロニクス業界のトレンドはIoT(モノのインターネット)だが、われわれのビジネスも、効率が向上するにつれて、より“つながること/コネクテッド”を意識したものとなっていくだろう。
例えばAPI(Application Programming Interface)やEDI(Electronic Data Interchange)を活用し、見積もりや在庫照会、オーダーエントリーなどを自動化することで、顧客が効率と生産性を向上できるようにしていく。これは、顧客に対するサポートの拡大にもなるだろう。
――日本についてはいかがでしょうか。
Doherty氏 日本での当社の成長は目覚ましいものであり、日本のエンジニアが20年以上にわたり、設計およびプロジェクトにおけるニーズをDigi-Keyに示してくれたことについて感謝している。これまでのように、日本円による支払いや、企業向けに信用取引での対応、72時間以内での製品配達など、われわれの基本方針を貫きながら、日本の顧客とつながりやすいサービスや、日本国内でのビジネスを拡大する方法を探っていきたい。
――Digi-Keyのビジネスを後押しするマーケットとして、どのような分野に注目していますか。
Doherty氏 IoT、AI(人工知能)、産業オートメーション、5G(第5世代移動通信)など、あらゆる分野で市場の成長がみられる。われわれは、これを大きな技術的進歩の時であると考えている。IoTや産業オートメーション、AIなどアプリケーション分野における大きな成長は、新しいイノベーションの加速だけでなく、既存のイノベーションも向上させていくだろう。
それと同時に、ますます多くの人々がエンジニアリングに関わるようになってきている。例えばメイカーズムーブメントによって、あらゆるスキルレベルの人が、これまで以上にテクノロジーやエレクトロニクスに関われるようになっている。STEM(Science, Technology, Engineering, Mathematics)教育も、以前よりも若い年齢から始まっているようだ。
――エレクトロニクスエンジニアが現在抱えている課題は何でしょうか。また、そうした課題を解決するために、Digi-Keyはどんな役割を担っているとお考えですか。
Doherty氏 2017年および2018年において、複数の製品分野で需要が供給を上回っており、これまで以上にリードタイムが長くなっている。Digi-Keyでは、「在庫の回転率をいかに上げるか」ではなく、「高い在庫率をいかに維持するか。そのために、いかに十分な量を倉庫にストックしておくか」ということにビジネスの基準を置いている。当社のこうしたビジネスモデルは、エンド顧客がタイム・トゥ・マーケットに必要な時間を予測する上で適している。
――2018年のディストリビューター業界はいかがでしたか。注目している業界トレンドに何か変化はあったでしょうか。
Doherty氏 2018年におけるディストリビューター業界は、製品配達のスピードや入手のしやすさがますます求められるようになっているという背景の下、多くのビジネスチャンスに恵まれた。エンジニアリングサイクルの短縮や市場投入の迅速化、マスカスタマイゼーションに関するソリューションに対しては、高い需要が続いている。
われわれは現在、顧客に対してよりよいサービスを提供するためのデジタルソリューションによるインパクトなど、ディストリビューター業界のダイナミックな変化に直面している。
また、業界は在庫不足の課題にも取り組んでいる。だが、リードタイムが以前よりも長くなっていることもあり、変化がいつ起こるかというのを正確に予測するのが難しくなっている。
――2019年におけるエレクトロニクス業界およびディストリビューター業界の市況については、どうお考えでしょうか。
Doherty氏 われわれの顧客の動きを見ていると、イノベーションへの取り組みが全ての市場セグメントで引き続き起きているので、ディストリビューター業界は2019年も力強い成長を維持すると予測している。さらに、起業家およびスタートアップ企業が台頭していて、多くの組織によって育成も進んでいる。こうしたスタートアップの機運の高まりをサポートすべく、われわれも製品およびサービスを検討している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
提供:Digi-Key Electronics
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2019年2月15日