コアスタッフは、B2B(Business to Business)領域のモノづくりを、半導体/電子部品商社および、メーカーとして、サポートする。2019年は特に「少量多品種」「短納期」「不定期」というニーズに応える事業展開を強化し、成長を図るという。コアスタッフ代表取締役を務める戸澤正紀氏に2019年の経営戦略を聞く。
――今年度(2019年3月期)の業績はいかがですか。
戸澤正紀氏 今年度上期(2018年4〜9月期)は、前年度(2017年度)からの盛り上がりを維持し、非常に好調だった。ただ、2018年10月以降は市況が少し下降気味に推移し、当初の想定より厳しい市場環境になっている。ただ、実需自体がなくなっているわけではなく、今年度上期まで過熱気味だった市況が、通常の状態に落ち着いたという印象であり、決して悲観するような状況ではない。
――主力事業として、Web通販サイト「ザイコストア」を中心にした部品販売事業と、主にIoT(モノのインターネット)関連に向けたEMS(電子機器受託製造サービス)を提供するIoTモノづくり事業の2つを展開されています。2つの事業それぞれの状況を教えてください。
戸澤氏 まず、IoTモノづくり事業は今年度、前年比1.5倍程度の事業規模に広がる見通しだ。産業用ボードコンピュータメーカーのアットマークテクノを子会社化するなど近年、事業強化を進めてきた中で、単純なEMSではなく、IoTのモノづくりを総合的にサポートできる“IoTモノづくり事業”としての基盤を確立することができた1年だったと思う。アットマークテクノの主力製品であるゲートウェイ「Armadillo(アルマジロ)」を核にしつつ、Armadilloにつながるセンサーやカスタムボードなどを提供し、さまざまなIoTシステム開発をトータルサポートできるようになったことが事業規模の拡大につながった。
――部品販売事業についてはいかがですか。
戸澤氏 部品販売についても、今年度売上高として、前年比30%程度の成長を見込んでいる。成長の要因としては、市況が好調だったことに加え、Web通販に対する顧客の意識が変わったこと、取り扱い商材が拡大したことが挙げられる。
昨今、さまざまな企業で“働き方改革”が進められ、業務の効率化、とりわけ労働時間の短縮化が図られている。その中で、電子機器開発現場でも試作や部品選定のためのサンプル品調達に要する時間を短縮させたいというニーズが大きくなり、在庫の有無がリアルタイムで確認でき、納期が短いWeb通販の利便性があらためて評価された。さらに、国内に倉庫を持ち、午後3時までの注文であれば即日出荷できるという地の利もあって、ザイコストアの利用者数は大きく増えた。
取り扱い商材については、メーカーから直接仕入れる“直接販売代理店契約”をこの1年でMaxim Integratedやアルプス電気、オムロン、トーキン、エイブリック、Infineon Technologiesなどの10社と契約し、直接販売代理店契約を結ぶメーカー数が30社を超えた。直接販売代理店契約を結ぶことにより、より多くの品種の在庫を取りそろえられるようになり、顧客の利便性は高まる。アルプス電気に関しては2018年12月から、同社のWeb販売サイト「電即納」の運営も引き継いでいる。
――2019年の展望、抱負をお聞かせください。
戸澤氏 2018年前半までの過熱気味とも言える市況感に比べれば、2019年は落ち着いた市況で推移するだろう。そういった意味でも、2019年は実力が問われる年になるが、20%程度の売り上げ成長を継続したいと思う。
――2019年の売り上げ成長に向けて必要なことは何でしょうか。
戸澤氏 コアスタッフグループの経営ビジョンとして『ブロードマーケットの達人』を掲げている。家電やスマートフォン、車載機器などのB2C(Business to Consumer)領域は一切狙わず、ブロードマーケットすなわちB2B領域に特化し、ブロードマーケットのニーズに徹底して応えていく。
ブロードマーケットの代表的ニーズは「少量多品種」「短納期」「不定期」の3つ。この3つのニーズにより応えていくことが、成長に必要なことだと考えている。
――具体的な取り組みについて教えてください。
戸澤氏 部品販売事業では、取り扱い商材、保有在庫の幅を広げながら、スピードアップを図る。例えば、ユーザーの基幹システムから直接、在庫情報や発注を行えるようなシステム連携を積極的に行うことで、ユーザーが短時間で部品を調達できるような環境を整えたい。
またグローバル化も一つのテーマ。当社は、オンライン販売だけでなく、対面でエンジニアリングサポートや量産対応を行うオフラインの販売を実施しており、そのオフラインでのサポート強化のため、2019年は海外拠点を拡充する。その一つが、東南アジア地区での販売サポート体制の強化を目的に、香港法人の事務所をタイ・バンコクに開設する。香港法人の事務所としては、中国・深センに続く2カ所目になる。
さらに、2019年3月にはドイツに現地法人を開設する。ドイツ法人では、販売サポートとともに、欧州での仕入れ先開拓活動を行う予定だ。
半導体商社の海外展開は珍しいものではないが、少量多品種のブロードマーケットに特化したビジネスモデルでの海外展開はあまり多くないだろう。
――オンライン販売のグローバル化はいかがですか。
戸澤氏 古くから英語版サイトを開設し、最近では簡体字による中国版サイトを立ち上げた。まもなく、繁体字による中国版サイトもオープンさせる予定。海外では、アルプス電気やトーキンなどの日本産品に強いWeb通販サイトとして、浸透を図りたいと思っている。
――IoTモノづくり事業の2019年事業方針をお教えください。
戸澤氏 コアスタッフオリジナル製品ブランド「CATALYSTING」(キャタリスティング)を本格的に立ち上げる。
これまでも開発、販売してきたArmadilloのオプション製品をCATALYSTINGのブランドを関して販売する他、Armadilloにつながるセンサー端末などIoT関連機器を開発し、取りそろえていく。ArmadilloとCATALYSTINGで、ゲートウェイ以下のエッジ領域を構築できるようにしていく。
また、これまでカスタムボードを受託製造してきたノウハウをベースに、半導体ベンダーなどが生産中止する評価/開発ボードのEOL(End Of Life)品を、半導体ベンダーに代わってコアスタッフが継続生産、販売するビジネスも本格化させる。既に数社のメーカーと契約を結び、EOL評価/開発ボードの継続供給を開始している。
――EOL評価/開発ボードは、オリジナルメーカーが生産中止したものであり、あまり販売台数は見込めませんが。
戸澤氏 オリジナルメーカーにとっては販売数量が不十分であるが、量産規模の小さなカスタムボード製造を行ってきた当社にとっては、継続生産を求めるユーザーが数社あれば十分。強みである「部品調達力」や「少量多品種生産ノウハウ」が生かせるコアスタッフらしいビジネスだ。
カスタムボードの受託設計、開発についても、2019年は「100台EMS」という名称で、より「少量多品種」「短納期」「不定期」に対応したサービスを提供する。サービス名称に100台とあるが、MOQ(最小注文数)を設定せず、1枚のボードから製造できるようなサービスの提供を目指している。現在、提携工場と、少量生産に迅速に対応するフレキシビリティを備えた専用ラインの構築を進めており、まもなくサービスを提供できる見込みだ。
――2019年は、成長に向けてさまざまな施策を実施されますね。
戸澤氏 オンライン販売、オフライン販売、そして、IoTモノづくりのさまざまな取り組みを通じて、ブロードマーケットのモノづくりニーズに対応するバリューチェーンを提供できるようになりつつある。着実に、各取り組みを実施し、2019年も成長を継続したい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
提供:コアスタッフ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2019年2月15日