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これからの自動車が求めるテクノロジーを網羅 ―― NXPの自動車向け技術/製品戦略NXP Semiconductors 園田慎介氏/安田浩明氏

NXP Semiconductorsは、自動運転、電動化、コネクティビティの実現に向けて大きな進化を遂げつつある自動車市場に対し、特長のある技術、製品ソリューションの展開を加速させている。自動運転を実現するための高性能コンピューティング技術やセンサー技術、自動車の安全性を担保するためにも必要になっているセキュリティ技術などを手掛け、次世代自動車の実現に向けたさまざまな課題を解決する“ソリューション”として提供する。NXP Semiconductorsの自動車市場向け技術/製品ソリューション戦略について、NXPの日本法人で自動車向けビジネスを担当する園田慎介氏(=第一事業本部 マーケティング統括部 統括部長)/安田浩明氏(=第一事業本部 アプリケーション技術統括部 統括部長)に聞いた。

» 2019年08月20日 10時00分 公開
[PR/EE Times Japan]
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“自動運転・電動化・コネクティビティ” × “セキュリティ”

――NXP Semiconductors(以下、NXP)における自動車向け事業の位置付けと、強化方針を教えてください。

NXPジャパン 第一事業本部 マーケティング統括部 統括部長 園田慎介氏

園田慎介氏 自動車市場はわれわれがターゲットにしている4市場のうちの1つだ。残りはインダストリー&IoT市場、モバイル市場、通信インフラ市場の3つ。自動車には、さまざまな技術が集約される傾向にあり、他のターゲット市場向け事業とも連携しながら、あらゆる技術を投入して強化を進めている。

 自動車市場で求められる技術の複合化に伴い、NXPとしても、従来のような半導体デバイス単品での販売ではなく、デバイスやソフトウェアを複数組み合わせたソリューションの提供を強化している。

 その一環として、NXPジャパンでは2019年4月から組織体制を一新し、よりニーズに即したソリューションを、NXPジャパン独自に開発できる体制へと移行した。

――自動車市場においては、どのような領域をターゲットにされているのですか。

安田浩明氏 自動運転/ADAS(先進運転支援システム)、電動化、コネクティビティ(接続性)という3つのメガトレンドと、3つの領域全てで求められる“セーフ/セキュリティ”がNXPのターゲット。言い換えれば、自動車の全ての領域に対し、包括的なソリューションを提供していくということになる。

NXP Semiconductorsがターゲットにする自動車アプリケーション

 自動運転/ADAS領域では、将来の完全自動運転システムの実現に向けて必要になる半導体ソリューションを提供していく。電動化に対しても、ハイブリッド車から電気自動車まで、さまざまな電動システムをサポートしていく。コネクティビティに関しては、カーラジオ向けRFから、今後普及が見込まれるDSRCや5G(第5世代通信システム)を利用したV2X通信などを視野に入れている。

 そして、あらゆる自動車向け半導体ソリューションに対し、クレジットカードやNFC、そしてeパスポートなどでも実績あるセキュリティ技術などを盛り込んで、チップレベルに求められるセーフ/セキュリティという要素を満たしたソリューションを提供する。

ドメイン・アーキテクチャ、そしてゾーン・アーキテクチャ実現に向けて

――NXPでは、以前よりドメイン・アーキテクチャへの移行を提唱していますが、このメリットを教えてください。

安田氏 自動車のシステム構造そのものが刷新されつつある。第一段階として従来の機能分散型から機能ごとに整理された“ドメイン・アーキテクチャ”に向けたECUの統合が進んでいる。

ドメイン・アーキテクチャのイメージ

 ドメイン・アーキテクチャは、これまで分散していたECUを機能ごとに分類し、「ドメイン」と呼ぶ類似機能グループに整理し、各ドメインを分離するもの。NXPでは、「コネクティビティ」「ドライバー・リプレイスメント」「パワートレイン/ビークル・ダイナミクス」「ボディ/快適性」「ユーザー・エクスペリエンス」という5つのドメインへの整理を提唱してきた。

 各ドメインは、ドメイン・コントローラと呼ぶ「THINK(判断)」を担うECUが頂点に位置し、その配下に「SENSE(検知・検出)」、「ACT(作動・駆動)」を担う各ECUが配置される。またドメイン間はゲートウェイを解して相互に接続される構成である。

 このドメイン・アーキテクチャであれば、機能が整理、体系化されることによりECUを統合できる上、ワイヤハーネス数も減らすことができる。NXPは、高機能・高性能化するECUのソフトウェア開発効率や流用性の向上のニーズを見据えたプロセッサやマイコンの開発、提供を進めている。これによりソフトウェアの開発負担の軽減も期待できる。さらには、各ドメイン、レイヤーに応じたセキュリティ対策が実装できるというメリットもある。

園田氏 2020年代半ばには移行するであろう、このドメイン・アーキテクチャを実現する製品/ソリューションに注力しているが、ドメイン・アーキテクチャ実現の先にある“ゾーン・アーキテクチャ”を意識して製品/ソリューションを開発していくことが重要だと考えている。

NXPが考える自動車システムアーキテクチャの流れ (クリックで拡大)

――ゾーン・アーキテクチャとは、どのようなものですか?

園田氏 エンジンルームやトランクルームなど自動車の“ゾーン”ごとに、ゲートウェイと5つのドメインが構築されるアーキテクチャだ。各ゾーンは高速で広帯域のネットワークでつながれ、その中央には、ブレイン・コンピュータと呼ぶ高性能なコンピューティング能力を有するECUが配置される。ゾーン・アーキテクチャを採用することで高い機能冗長性を実現し、最適な機能安全レベルを確保することが可能だ。おそらく、完全自動運転システムが実現される際の自動車のシステムは、このゾーン・アーキテクチャ構造になるだろう。

 NXPでは、今後、ドメイン・アーキテクチャへの移行を可能にする製品/ソリューションを提供していくが、いずれの製品/ソリューションも、将来のゾーン・アーキテクチャへの移行を見据えたものとして、開発、提供していく。

次世代の車載プロセッサプラットフォーム「S32ファミリ」

――将来のゾーン・アーキテクチャ移行を見据えながら提供されるドメイン・アーキテクチャ実現に向けた製品・ソリューションとはどのようなものでしょうか。

園田氏 その1つに、2018年からサンプル出荷開始したマイクロプロセッサ/マイクロコントローラ製品群「S32車載プロセッシング・プラットフォーム」(以下、S32ファミリ)がある。S32ファミリは、ドメイン・アーキテクチャの時代に車載プロセッサに要求される技術ニーズを全て満たす製品として開発した。

安田氏 ドメイン・アーキテクチャでは、各ドメインの中核を担うドメイン・コントローラは、より高いプロセッシング性能が要求される。S32ファミリはそうした領域もカバーできるような、従来に比べ10倍以上の処理性能の高い製品を提供する。その一方で、性能よりも低消費電力が要求されるドメインもあり、それぞれに最適な製品もそろえていく。こうした幅広いラインアップのS32ファミリは、CPUコアとして全てArmコアを採用し、幅広いスケーラビリティを備える。また、Armコア以外にもメモリや基本的なペリフェラルはS32ファミリ全体で共通化し、加えて、ドメインごとに要求されるアクセラレータやペリフェラルを最適に組み合わせることで、全てのドメインに最適なソリューションの提供とソフトウェアの流用性の向上を実現できる。

S32ファミリでは、共通ハードウェア/アーキテクチャの考えが採用され、スケーラビリティ、ソフトウェア流用性を高めている (クリックで拡大)

 他にも、全製品がASIL-D対応し、ハードウェア・セキュリティ・エンジン(HSE)を搭載するなど、セーフティ、セキュリティに対するニーズも満たすことが可能であり、無線を介したソフトウェア・アップデートであるOTA(Over The Air)も安全に実現できるようになっている。

 こうしたドメイン・アーキテクチャ時代のプロセッサ/マイコンであるS32ファミリをベースにして、さまざまなソリューションを提供したい。

――ソリューションの例を教えてください。

安田氏 自動運転システムの概念検証(PoC)にすぐに着手できるコンピューティングユニット「Bluebox」や、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)のパワートレインECUの開発用プラットフォーム「GreenBox」がその一例だ。

 またドメイン・アーキテクチャで重要になるセントラル・ゲートウェイに向け通信インフラなどで実績ある高速ネットワーキング通信プロセッサの車載版「LS1043A」と、車載ゲートウェイ用マイコン「MPC5748G」を使用した「MPC-LS車載ネットワーク・プロセッシング・チップセット」も提供し、いち早く次世代ゲートウェイの開発に着手できるソリューションになっている。今後も継続して、無線基地局など通信インフラ領域で実績ある高速ネットワーク向けデバイスと、S32ファミリを組み合わせたソリューションを提供していく。

実績ある「セーフティ/セキュリティ」を基盤にソリューション展開

――注力する技術領域の1つとして掲げられている“セーフティ/セキュリティ”に対する取り組みについて教えてください。

NXPジャパン 第一事業本部 アプリケーション技術統括部 統括部長 安田浩明氏

安田氏 自動車がさまざまなものとつながるようになってきた今、セキュリティをどう担保するかということが非常に重要になってきている。

 外部と接続性を持たず1台の自動車だけで完結したこれまでは、機能安全などを重視し、安全性(セーフティ)を高めてきた。しかし、外部との接続性を持ちつつある今、セキュリティが担保できなければ、設計者の意図通りに自動車を動作させるというセーフティの根幹が脅かされることになる。そこで、NXPでは、セーフティとセキュリティは表裏一体で、自動車の安全性を担保するためにもセキュリティは重要な要素であると位置付け、技術/製品開発に取り組んでいる。

 具体的には、ICチップレベルで実現すべき、セーフティ/セキュリティ機能を確実に実装している。セキュアエレメントの搭載や、さまざまな耐タンパ技術の採用などだ。こうした技術は、ペイメント分野などで多くの実績を積み、NXPの得意とするものであり、自動車市場でも大きく貢献できる技術だと考えている。

――セーフティ/セキュリティ領域ではどのようなソリューションを提供されるのですか。

園田氏 セーフティ/セキュリティ技術は、外部と直接通信する「コネクティビティ」や「ドライバー・リプレイスメント」といったドメインだけでなく、全てのドメイン、ECUで、各ドメイン/各ECUに応じたセーフティ/セキュリティ技術が必要だ。そのため、あらゆる自動車向けの製品、ソリューションに共通する基盤技術として、セーフティ/セキュリティ技術を提供していく。

NXPが提供するセキュリティ・ソリューション (クリックで拡大)

 その上で、自動車に対するセキュリティの脅威に対抗する具体的なソリューションも提供する。例えば、社会問題になっている“リレーステーション・アタック”に対抗するソリューションがある。リレーアタックは、本来、数メートルしか飛ばない、スマートキーの微弱な送信電波を不正に増幅し、遠く離れたスマートキーで車両の鍵を解錠し、盗むという行為。この不正行為に対し、NXPでは、UWB(超広帯域)通信を用いたToF(Time-of-Flight)と呼ばれる無線による測距技術を応用し、スマートキーと車両の距離を正確に割り出す技術や、モーションセンサーでスマートキーが操作されているかどうか検知する技術などを用いたリレーアタック対策ソリューションを実現している。

RFCMOSベースのミリ波レーダー・ソリューション

――高度なADAS/自動運転システムの実現に向けて、センサーの需要が拡大していく見通しです。NXPとしては、車載センサーに対し、どのようにアプローチされますか。

園田氏 さまざまな自動車向けセンサーを手掛けている。現在、特に注力しているのがミリ波帯のレーダー・ソリューションだ。

 ミリ波帯レーダーは、レベル2〜3のADAS/自動運転システムを実現するために欠かせないキーデバイスだが、これまでは価格が高く、高級車での搭載に限られてきた。今後、レベル2〜3のADAS/自動運転システムを大衆車でも実現していくには、ミリ波帯レーダーの低価格化が不可欠だ。

SiGeデバイス、RFCMOSデバイス双方を手掛けるミリ波帯レーダー・ソリューション

 その中でNXPは、世界トップクラスのシェアを持つシリコンゲルマニウム(SiGe)によるMMIC(Monolithic Microwave IC)に加え、安価に利用可能なRFCMOSベースのレーダー・トランシーバMMICを開発し、提供を開始した。

 レーダーは、レベル2〜3のADAS/自動運転システムで求められる自動車の周囲センシング用途だけでなく、車室内の運転手や搭乗者の検知、監視用途にも応用可能だ。運転手モニタリング機能や、車内置き去り防止機能は、ヨーロッパで実施されている自動車の安全性テスト「新車アセスメントプログラム(Euro NCAP:European New Car Assessment Program)」で2022年から試験項目に追加される予定になっている。ミリ波帯レーダーは、暗闇で障害物があっても確実に脈動などの生体情報で人を検知することのできるという利点があり、車室内監視用センサーとしての可能性の一つとして期待が大きい。RFCMOSベースのMMICを核に、さまざまなミリ波帯レーダー・ソリューションを展開していく方針だ。


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提供:NXPジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2019年9月19日


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