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半導体を超えてビジネスモデル変革をサポートするアナログ・デバイセズアナログ・デバイセズ 代表取締役社長 馬渡修氏

アナログシグナルチェーン、プロセッサ、通信、そして電源、センサーまで、アナログを中心にした豊富な半導体製品をラインアップするアナログ・デバイセズ。2020年は半導体製品に加え、AI(人工知能)やクラウドサービスを利用した新たなサービスの創出を支援するソリューション提案を強化していく。「顧客のビジネスモデル変革をサポートしていく」と語る同社日本法人 代表取締役社長の馬渡修氏に2020年の事業戦略を聞いた。

» 2020年01月15日 10時00分 公開
[PR/EE Times Japan]
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米中貿易摩擦などの影響も、ビジネスの多様性が増し健闘

――2019年10月期業績を振り返ってください。

馬渡修氏 2019年11月期は、売上高60億米ドルと一定の事業規模を確保した。前年比こそ2%の減収だが、2019年の市況を考えると健闘したといえる結果だろう。

 米中貿易摩擦の問題はさまざまな面で影響を受け、特に5G(第5世代移動通信)基地局向けのビジネスで苦労する場面があった。ただ、特定の顧客、地域、市場に依存することなく、幅広い用途市場でより多くの顧客とビジネスを展開するという“ビジネスの多様性”がより深まっていることで、減収幅を最小限に抑えられたと考えている。

――日本市場については、いかがでしたか。

馬渡氏 日本でのビジネスは、産業機器向けビジネスが全体の50%程度を占めるため、中国市場での設備投資減の影響を他の地域よりも強く受けた。ただ、厳しい市場環境だったものの、医療機器/ヘルスケア向けは2ケタ成長するなど良い面もあった。

 自動車向けについては、新車販売台数が低迷したこともあり当初の期待ほどの成長は実現できなかったが、電子化、多機能化の進展に伴う車1台に対する半導体使用個数増により堅調な成長は維持することができた。

ビジネスモデル変革をサポートするソリューションを提供

――2020年の見通しについて教えてください。

馬渡氏 市況の底打ち感は出てきているものの、2020年前半は厳しい状況が続くだろう。ただ、2020年半ばには、産業機器関連の受注が復活し、半導体製造装置、テスターといった需要も、5G(第5世代移動通信)の商用化や電子化の進む自動車に引っ張られて、徐々に回復していくだろう。その結果、日本での売り上げは、2019年比5〜10%の成長を目指していきたい。

――そうした中で2020年、注力される取り組み、事業テーマは何になりますか。

馬渡氏 短期的な業績に大きく左右されることなく、中長期的な視点を持って、顧客が抱えている問題を解決する提案を作ったり、設計で悩んでいることを解決したりといった“やるべきこと”をしっかりとやり抜くことが重要だと考えている。

 特に、日本の顧客が世界でリーダーシップを発揮されているFAや社会インフラ、エネルギー、5G、ヘルスケアなどの領域での提案を充実させていく。

――現状の顧客が抱えている問題とはどのようなものがあるとお考えですか。

馬渡氏 われわれの半導体チップビジネスにも当てはまることだが、コモディティ製品になると価格競争に陥り、最終的に新興国へとビジネスがシフトしていく。われわれの主要な用途市場である産業機器市場でも同じことが言える。その上、昨今ではハードウェアだけでは、なかなか差別化が図りづらく、大きな成長を遂げることが難しくなっている。このように、従来のハードウェアだけに依存したビジネスからの脱却が、われわれおよび、顧客の課題だと考えている。

 そうした中で、AI(人工知能)やクラウドサービスを利用した新たなサービスを展開することで、利益構造、ビジネスモデルを変えようと取り組む顧客が増えており、そうしたビジネス変革をアナログ・デバイセズとしてサポートしていく。

――どのような支援を提供されるのですか。

馬渡氏 例えば、産業機器などに向けた故障予測/予知保全ソリューションがある。

OtoSense社、Test Motors社の統合により、産業用ロボットなどに向けた故障予測/予知保全ソリューションの提供が可能になった

 2018年に、音や振動をAI学習し機器の故障を検知するアルゴリズムを持つOtoSense社を買収したのに続き、2019年10月にはモーター、発電機の予知保全アルゴリズムを持つTest Motors社を買収した。この2社の買収により、機器の高付加価値化、新たなサービスモデルの構築につながる可能性がある故障予測/予知保全システムを提供できるようになった。

 このように単にチップレベルだけでなく、アルゴリズムなどを含めたシステムレベルのソリューション提案を通じて支援していく。そのために、今後も買収や連携を通じて、さまざまなシステムレベルの知識を蓄積してソリューションを構築し提供する。シグナルチェーン、パワーといったあらゆるアナログ半導体を取りそろえるようになったアナログ・デバイセズにとっては、各用途領域でのシステムレベルの知識「ドメインナレッジ」を蓄積していくことが、重要テーマになっている。そして、ドメインナレッジをチップ開発にも反映し、継続して優れたハードウェアも提供していく。

バッテリー、5Gなど広がるエコシステムに対応

――注力領域に挙げられるエネルギーおよび、バッテリー領域にはどのような提案をされるのですか。

馬渡氏 バッテリーについては、エコシステムの広がりに応じてさまざまなソリューションを提供していく。

 具体的に説明すると、これまでアナログ・デバイセズでは車載バッテリーに対し、1回の充電での走行距離、さらにバッテリー寿命を延ばすために、高精度でバッテリーセルを計測し、セルバランスを保つバッテリーマネジメントシステム(BMS)を提供してきた。そうした中で昨今は、電力会社などが劣化した車載バッテリーを再利用する検討を進めており、車載バッテリーの二次利用、セカンドライフに対するバッテリーフォーメーション、検査ソリューションが必要になってきている。そこにアナログ・デバイセズがソリューションを用意し、提供していく。

 こうしたエコシステムの広がりによる需要の拡大、ニーズの多様化は、バッテリー以外でも起こっており、5Gもその1つだ。

――5Gによるエコシステムの広がりとは?

馬渡氏 5Gは、これまでの3G、4Gなどとは違い、基地局とスマートフォンのいわゆるコミュニケーション分野にとどまらない。工場や大規模な病院などでは、ローカル5Gの普及も見込まれ、関係する領域、エコシステムは格段に広がる。基地局や5G機能を搭載する機器、端末が増えるだけでなく、それに伴う計測器/テスターなどの需要も増加していくだろう。

 そうしたあらゆる5Gのエコシステムに対し、ソリューションを提供していく。

 アナログ・デバイセズでは売り上げの20%程度を研究開発に投じているが、その中でも5G関連への投資が最も多い。また、3G、4Gなどと比べても、5G関連への投資規模は大きく、過去最大規模だ。DCから100GHzまでをカバーするRF製品を筆頭に、あらゆるシグナルチェーンデバイスがそろい、各国の周波数帯にソフトウェアで対応するソフトウェア無線(SDR)技術も有すなど、大きなシェアを獲得できる体制は整っている。5G関連の大きな需要を確実に取り込んでいく。

――2020年にビジネス拡大が期待される製品、ソリューションは他にありますか。

馬渡氏 自動車向けでは、車載オーディオバス「A2B」トランシーバー製品の量産が本格的に立ち上がる見込みだ。電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)では、走行距離を延長するために、自動車の軽量化に重点が置かれている。その中で、A2Bは、オーディオ系のケーブル重量を従来の4分の1に削減できる技術で、走行距離延長、ひいてはCO2削減につながるソリューションとして、EV、PHVを中心に採用が相次いでいる。

車載オーディオバス「A2B」のイメージ。これまで車載オーディオ機器間の配線は複数本のワイヤーハーネスが必要だったが、A2Bであれば1本のUTP(シールドなしツイストペアケーブル)で済ませられる

 同様のコンセプトで、カメラ/画像系のケーブルを削減するバス技術「C2B」についても、数年先の量産に向けた評価が順調に進んでいる。ケーブル本数、重量の削減という要求は自動車だけでなく、産業ロボットや無人搬送車(AGV)などにも共通するものであり、産業分野でのA2B、C2Bの需要も見込んでいる。

――リニアテクノロジーとの合併(2017年)で、強化された電源製品ビジネスについてはいかがですか。

馬渡氏 合併以前は、売り上げの数パーセントだった電源製品売上高比率は、30%を超えるようになった。マイクロワットクラスからキロワットクラスまでの電源IC、電源モジュールがそろい、アナログ・デバイセズの強みになっている。

電源製品ビジネスの主力製品の1つである、電源モジュール「μModule」(左)。パッケージ内に電源ICとともにインダクターやコンデンサーなど外付け部品を内蔵し、個別部品で構成した場合に比べ、半分程度のサイズで高精度、高効率な電源回路を実現できる

 合併により、顧客数も大きく増え、クロスセルというシナジーもしっかり発揮できている。現在はすべての営業担当、FAE(フィールドアプリケーションエンジニア)が、旧アナログ・デバイセズが中心のシグナルチェーン製品、旧リニアテクノロジーが中心の電源製品を両方扱う体制に移行し、完全に統合された状態になっている。

課題解決へマーケティング強化

――2020年、成長に向けた課題はありますか。

馬渡氏 顧客の課題を解決するためのソリューションをいかに、市場にリーチさせていくかが課題だ。アナログ・デバイセズはチップ単体だけではなく、システムレベルのソリューションが提供でき、ビジネスモデル変革をサポートできるといいうことを理解いただくことが重要だ。

 2020年は、そういった認知を高めるためにもデジタルマーケティングを一層推進し、有益な情報提供を強化する。情報提供だけでなく、設計品質、設計効率を高める開発環境/ツールの提供も行う。

 アナログエンジニアが不足し、設計品質、設計効率に悩む顧客は増え続けている。アナログ・デバイセズには、全世界で500万ユーザーを抱え、業界標準に育った回路シミュレーションツール「LTspice」や、DSP開発環境「Sigma Studio」がある。こうした開発ツールをより強化、融合させて“デジタルツイン”を実現できる環境を提供することで、設計品質、設計効率の向上にも貢献していきたい。


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提供:アナログ・デバイセズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2020年2月14日

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