メディア

指先に乗る超小型フルカラーレーザーモジュールや既存スマホだけで実現する高精度屋内測位技術を公開 ―― TDKCEATEC 2020 ONLINEで注目集める

TDKは2020年10月20日に開幕したオンライン展示会「CEATEC 2020 ONLINE」で、8.0×5.5×2.7mmという超小型サイズのフルカラーレーザーモジュールを初公開した。従来のフルカラーレーザーモジュールに比べ10分の1以下のサイズであり「一般的なメガネと見た目が変わらないAR(拡張現実)グラス/スマートグラスが実現可能になった」とする。また同社は、特別なハードウェアを使わず一般的なスマートフォンだけで実現する高精度屋内測位ソリューションも披露し、多くの注目を集めた。

» 2020年10月21日 10時00分 公開
[PR/EE Times Japan]
PR

 TDKは2020年10月20日に開幕したオンライン展示会「CEATEC 2020 ONLINE」で、8.0×5.5×2.7mmという超小型サイズのフルカラーレーザーモジュールを初めて公開した。従来のフルカラーレーザーモジュールに比べ10分の1以下のサイズであり「一般的なメガネと見た目が変わらないAR(拡張現実)グラス/スマートグラスが実現可能になった」(TDK)。同モジュールは、優れた展示物に贈られる「CEATEC AWARD 2020」において「ニューノーマル社会を支える要素技術・デバイス部門 準グランプリ」を受賞している。またTDKは、同展示会の特設展示「ニューノーマルテーマエリア」で、特別なハードウェアを使わず一般的なスマートフォンだけで実現する高精度屋内測位ソリューションも披露し、大きな注目を集めている。

1米セント硬貨上に置いた超小型フルカラーレーザーモジュール(プロトタイプ品)
「CEATEC AWARD 2020」において「ニューノーマル社会を支える要素技術・デバイス部門 準グランプリ」を受賞した。

普通のメガネと変わらぬ外見のARグラスが可能に

 コンシューマー用途のみならず、設備の保守サービスなどビジネス用途でも普及が進みつつあるARグラス/スマートメガネ。ただ、その外見は一般的なメガネとは異なり、フレームのテンプル(つる)などが太く、重量感があり“いかにもARグラス”というデザインがほとんど。ARグラスの大きさや重さは見た目だけでなく、装着感も損ねており、今後の普及拡大に向けては小型化が急務になっている。

 ただ、ARグラスの小型化はかなり難しい。なぜなら、ARグラスに欠かせないコア部品であるレーザーモジュールの小型化が限界を迎えていたからだ。

 一般的にARグラスに用いられるレーザーモジュールは、RGB(赤・緑・青)3色のLD(レーザーダイオード)を使用したフルカラーレーザーであり、各LDから発せられる光をレンズやミラーといった光学部品で結合させて、1つのレーザー光として出力する必要がある。この場合、複数の光学部品が必要な上、光を結合させるための物理的な距離、空間が不可欠で「光学部品を使用する“空間光学系レーザーモジュール”の小型化は限界を迎えている」という。

レーザーモジュールの小型化を実現するには、空間光学系に代わる新たな光結合技術を採用する必要があった。NTTは光通信の深い知見に基づき、可視光用の平面導波路を開発し、代替技術の有力候補として挙げた。

従来型の空間光学系モジュールと平面導波路光学モジュールの比較

 平面導波路レーザーモジュールは、光学特性を持つ薄い板状に物質に、光ファイバーのような光が通る細い道である平面導波路を形成して、3色のLDの光を結合させるもの。レンズやミラーが不要であり、LDもベアチップ品が用いられるといった特長があり、空間光学系に比べ大幅にモジュールサイズを小型化できるという利点がある。しかし、その一方で、断面がわずか1.5μm角ほどという細い導波路にLDの光を入れるための位置合わせ(=調芯)および、接合が極めて難しく、生産性が悪いなどの理由から実用化が難しかった。

生産速度も2桁アップ!

 そうした中で、TDKは平面導波路とLDの高速/高精度調芯技術および、接合技術を開発し、空間光学系モジュールと比べても「2桁ほど速いスピードで生産できる」という生産技術を確立し、平面導波路レーザーモジュールの実用化にメドをつけ、2021年からサンプル出荷を開始することになった。

 量産に先がけ、CEATEC 2020 ONLINEで公開しているプロトタイプ品は、「ARグラス用途では十分な明るさ」という数ミリワットという光出力品で、温度検知センサおよび、光出力モニターを内蔵しながら、従来の空間光学系モジュールの10分の1以下に相当する8.0×5.5×2.7mmサイズを実現した。

従来モジュール(左)と超小型フルカラーレーザーモジュール(右)をARグラスに応用した際のイメージ

 すでに、レーザーアイウェアメーカーであるQDレーザの協力を得て、プロトタイプモジュールをARグラスに搭載して検証を実施し「問題なくARグラスに搭載できることを確認した」(TDK)としている。「従来の空間光学系モジュールに比べ、大幅に小さく、かつ、格段に生産性も良いという利点があり、量産規模が大きくなれば、コストも大幅に低減できるだろう。ARグラス以外にも、超小型プロジェクター“フェムトプロジェクター”やヘッドアップディスプレイにも応用できるとみており、広く提案していきたい」としている。なお、CEATEC 2020 ONLINEのTDKブースでは、発光デモ動画などを交えて超小型レーザーモジュールの詳細説明を実施している他、「IoT」「モビリティ」「医療」「5G」「再生エネルギー」「ロボティクス」「VR/AR」といった市場に貢献し、幸せな未来社会を引き寄せる電子部品/電子デバイスの紹介と、ソリューション提案を行う。

「CEATEC 2020 ONLINE」TDKブースの主な出展内容
展示テーマ 主な出展物
AR/ VR ・ワイヤレスオーディオ機器ESD保護とノイズ対策
・6軸モーションセンサ/MEMSマイクロフォン
・ARグラス用超小型フルカラーレーザーモジュール
5G ・5Gミリ波アンテナ/DC-DCコンバータ/ワイヤレス給電コイル
IoT(モノのインターネット) ・Coursa Venue
モビリティ ・E-mobility用バッテリソリューション
・3Dホールセンサ/TMR電流センサ/TMR角度センサ
・ピエゾ環境発電デバイス InWheelSense
・車載用電子部品
医療 ・ウェアラブルセンサ Silmee
再生エネルギー ・双方向DC-DCコンバータ EZA/直流安定化電源 GENESYS+
ロボティクス ・Time of Flight(ToF)超音波センサ
※Liveプレゼンテーションは2020年10月23日まで随時実施。10月24日以降はアーカイブ形式(録画版)でオンデマンド配信を予定(12月下旬まで)

スマートフォンアプリだけで高精度屋内測位が可能に!

 TDKでは同社ブースでの展示に加え、CEATEC 2020 ONLINEの特設テーマ展示エリアである「ニューノーマルテーマエリア」に、位置情報ソリューション「Coursa Venue(コルサ・ベニュー)」を出品し、大きな注目を集めている。

 Coursa Venueは、スマートフォンに搭載される地磁気センサ利用して、そのスマートフォン(を持つ人)の位置をリアルタイムで検出、表示できるもの。GPSなど衛星測位システム(GNSS)の電波が届かない屋内での高精度位置測位を実現する。

 屋内で高精度位置測位を実現するには通常、GNSSに代わる何らかの測位用の信号を発することで実現する。具体的には、Wi-Fi基地局やBluetoothなど各種無線の発信端末(ビーコン)を屋内に複数設置する方法だ。この場合、測位精度は、基地局やビーコンの設置密度に比例するため、高精度測位を実現するにはより多くの基地局、ビーコンの設置が不可欠で、導入費用が高額になる欠点がある。高層ビルやプラント/工場、ショッピングセンターなど広い場所では、相当なコスト負担、設置負担が伴うことになる。

 これに対し、TDKが提案するCoursa Venueは、わざわざ基地局やビーコンなど測位用信号を発する端末を設置せずに、1〜3mという高い精度で屋内測位を実現する革新的技術として注目されているのだ。

屋内測位システムの比較表

世界中どこにでもある「地磁気」で絶対位置を検知

 測位信号発信端末を使わずにCoursa Venueが高精度で測位できる理由は、地球上のあらゆる場所で自然に存在する「地磁気」を利用するからだ。あらかじめ測位したい屋内で地磁気を測定して「地磁気マップ」を作成。その後、一般的なスマートフォンに搭載される地磁気センサで地磁気を検知し、検知した地磁気データと地磁気マップを照らし合わせ、絶対位置を割り出すという仕組みだ。なお、スマートフォンをポケットやかばんに入れた場合にも地磁気を正確に検知するため、スマートフォンが搭載するモーションセンサ情報も利用する他、カーナビゲーションで実績ある慣性航法システム(INS)などのモーションセンサを利用した相対位置取得技術も組み合わせて測位精度を高めている。

Coursa Venueの特長

 「Wi-Fi測位やBluetooth測位を組み合わせて測位精度を高めるオプションも用意しているが、基本的にはソフトウェアだけで高精度屋内測位が実現できるソリューション。地磁気マップの作成自体は、アプリの指示に従いながら、スマートフォンなどの端末で屋内をくまなく測定するだけであり、1〜2日程度で終えられる。オフィスの模様替えなどを行っても、地磁気の変化は小さく再測定する必要もない」とする。

 「コロナ禍に伴う新生活様式へのシフト、ニューノーマルの時代では、屋内での人の動きをモニタリングするニーズが非常に高まっている。Coursa Venueであれば、小さな初期投資、メンテナンスコストで、人と人の接触を検知できたり、感染者が長く滞在した場所を特定できたりする感染症追跡システムが実現できる。採用が拡大しているフリーアドレス制オフィスでは、リアルタイム座席表をCoursa Venueで作成することもできる。その他にも動線監視による業務効率向上や機材の位置把握による稼働状況管理など、幅広い用途への展開が想定される」という。CEATEC 2020 ONLINEでは、TDK本社で実施しているCoursa Venueによる接触追跡システムの実証実験の様子や導入事例を紹介する動画を公開している。

TDK本社での実証実験の様子
左=Coursa Venueのダッシュボードでは従業員個別のトラッキングデータを表示
右=従業員の滞在時間と位置をヒートマップによって可視化している

 「2020年10月23日までのCEATEC 2020 ONLINE ライブ開催期間中は、毎日、Coursa Venueや超小型フルカラーレーザーモジュールなど各展示に関するライブプレゼンテーションを実施している。ライブプレゼンテーションや展示コーナーのチャット機能を使って、より詳細な説明や導入案内を行うことも可能。ぜひ、CEATEC 2020 ONLINEのTDKブースを訪れてほしい」と呼び掛けている。

 なおCEATEC 2020 ONLINEは2020年10月23日までのライブ開催期間終了後も、2020年12月下旬までアーカイブ公開が行われ、TDKブースの展示やプレゼンテーションの様子も閲覧できる予定だ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


提供:TDK株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2020年11月20日

RSSフィード

公式SNS

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.