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大規模FPGA「Agilex AGF027」を搭載した国産アクセラレーションカード「Griffin」が誕生vRANなど通信をはじめ、放送、医療などその用途は無限大

アルチザネットワークスは、インテル製の最新FPGA「Agilex」を搭載した通信ワークロード向けアクセラレーションカード・SmartNIC「Griffin」の開発を発表した。インテル Open FPGA Stack(OFS)に対応するほか、国産ならではの手厚いサポートも提供し、通信分野をはじめ、放送、医療など幅広い用途で使用できるアクセラレーションカードとして、2023年5月から量産出荷を開始する予定だ。

» 2023年01月26日 10時00分 公開
[PR/EE Times Japan]
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通信計測器メーカーのノウハウを注入

 大規模FPGAを搭載した国産SmartNIC(Smart Network Interface Card)がまもなく登場する。

 アルチザネットワークスは、インテル製の最新FPGA「Agilex」を搭載した通信ワークロード向けアクセラレーションカード・SmartNIC「Griffin」の開発を発表した。2023年3月には、一部顧客向けにサンプル出荷を始め、2023年5月に量産出荷を開始する予定だ。生産は当初、日本国内で実施する計画で、まもなく国産の新たなSmartNICが利用できるようになる見込みだ。

通信ワークロード向けアクセラレーションカード・SmartNIC「Griffin」(型番:N6060) インテル製の最新FPGA「Agilex」を搭載した通信ワークロード向けアクセラレーションカード・SmartNIC「Griffin」(型番:N6060)出所:アルチザネットワークス

 Griffinの開発を進めるアルチザネットワークスは、東京に本社を置く通信計測器メーカーで1990年に創業した。特に移動体通信の基地局開発に欠かすことのできない基地局負荷試験機を主力にし、世界有数のシェアを有している。2019年には、第5世代移動体通信(5G)に対応した基地局負荷試験機「DuoSIM-5G」を発売。同試験機は、1台の負荷試験機で、数十セルの基地局に数万台の端末が同時接続される状況のシミュレーションテストが行えるなど圧倒的なハイスペックを誇り「基地局負荷試験機で世界トップシェアを早期に実現する」(同社)と積極的な投資を図って拡販を進めている。

 DuoSIM-5Gのような圧倒的な高性能を実現した通信計測器を開発してきた背景には「顧客からの要望に対し“それはできません”と断ることなく、あらゆる可能性を探って、とにかくチャレンジを続ける」(同社)という企業としての姿勢がある。そうした姿勢により「開発投資を惜しまずプロセッサー、FPGAなど試験機を構成するデバイスで最新製品を積極的に取り入れることで、ハイスペックな試験機を実現してきた」(同社)とする。

 このように最新のプロセッサー、FPGAを素早く使いこなすという技術ノウハウを蓄積してきたアルチザネットワークスは、その技術ノウハウをアクセラレーションカードなどの製品という形で提供することを模索。これまで、一部顧客に向けたカスタム製品などを提供してきたが「デバイスの安定調達などが難しいことから本格的な事業展開までには至らなかった」(同社開発統括本部 第2開発部 部長 門田隆之氏)とする。

 最新FPGAを駆使したアクセラレーションカードを開発する技術力を持ちながら、これまでは事業環境が整わなかったわけだが、そうした状況が変わってきた。

『オープン化』と『仮想化』という2つのパラダイムシフトに対応

 FPGAの大手ベンダーでもあるインテルが、FPGAベースのアクセラレーションカードの普及促進を狙い「Acceleration Development Platform Strategy」を打ち出し、アクセラレーションベンダーへの支援を始めたためだ。これは、カードベンダーに対しインテルがFPGA SmartNIC N6000-PL プラットフォームなど各種カードの設計情報やソフトウェアなどの仕様を提供し、カード製品の開発を支援する内容のパートナープログラムである。アルチザネットワークスは「インテルから参加を呼び掛けられる中で、安定した部品調達など事業化に当たって課題だった部分の多くが解消されると感じた」とし、同プログラムに参加を決定。Griffinの開発に着手した。

 「当社がフォーカスするRAN(Radio Access Network)では、『オープン化』と『仮想化』という2つのパラダイムシフトが同時に起きつつある。そうした中で、アクセラレーションカードの需要がこれから高まってくると見ていた時期であり、(本格的に事業を立ち上げる)タイミングとしても良かった」(門田氏)とする。

 RANで生じている2つのパラダイムシフトのうち「オープン化」とは、RAN技術インタフェースをオープンにし、標準化しようというもの。これまでベンダーごとに異なったインタフェースが共通化されることで、例えば異なるベンダーの基地局同士でも相互接続が可能になる。こうしたオープン化は業界団体「O-RAN(Open Radio Access Network)アライアンス」で進められており、アルチザネットワークスもO-RANアライアンスに参加し、試験仕様の策定に参画するなどしている。

業界団体「O-RAN(Open Radio Access Network)アライアンス」の概要 業界団体「O-RAN(Open Radio Access Network)アライアンス」の概要 出所:アルチザネットワークス

 こうしたRANのオープン化に伴い、RANを構成する基地局なども一新されることになる。そこで起こりつつあるのが、2つ目のパラダイムシフト「仮想化」だ。仮想化とは、これまでのように専用ハードウェアで行っていたベースバンド処理を、COTS(Commercial Off-The-Shelf)サーバなど汎用ハードウェアを使用してソフトウェアで実行する“仮想化”を実現しようというもの。こうしたベースバンド処理をソフトウェアで行うことは「vRAN」と呼ばれ、プロプライエタリ(独占的)なハード/ソフトに依存することがなく、RANのオープン化の流れにも沿った技術トレンドであり、vRANの導入が加速しつつあるわけだ。

 ただ、vRANを実現するには、大きな課題がある。COTSサーバとソフトウェアの組み合わせだけですべてのベースバンド処理を行うには相当なサーバ/CPU性能が必要になり、システム規模が増大してしまうということだ。特にCPUは、FEC(前方誤り訂正)や符号化といった処理に不向きで、高精度な時刻/クロック同期を行うには潤沢な処理性能が必要になる。こうしたCPU/ソフトウェア処理に向かないワークロードを、より効率的かつ高速に処理するにはハードウェアアクセラレーターが有効になる。ただ、特定のワークロード専用のハードウェアアクセラレーターでは、フレキシブルなvRANとは相反することになる。そこで、vRANのハードウェアアクセラレーターとしては、ハードウェアを再構成可能なデバイスであるFPGAを用いることが主流になりつつある。

インテル FPGA SmartNIC N6000-PLベースでインテル OFSに対応

 アルチザネットワークスのGriffin(型番:N6060)は、こうしたvRANでのCPU処理をオフロードさせることを目指したFPGA搭載アクセラレーションカードとして開発。「インテル FPGA SmartNIC N6000-PL プラットフォーム」をベースに、アルチザネットワークスがvRANでの使用を考慮した独自コンセプトを注入しカスタマイズする形で開発した。同プラットフォームの標準である「N6000」では、中核デバイスであるFPGAに約143万LE(ロジックエレメント)を持つ「Agilex AGF014」を搭載しているが「vRANでの使用を考えた場合、約143万LEでは少し余裕がないと判断した」とし、約269万LEとより論理回路規模の大きい「Agilex AGF027」を搭載した。同時にメモリもN6000のDDR4 1200MHzから、DDR4 1333MHzに高速化させている。他にも、Agilexが内蔵するArm Cortex-M53コアで動作させるOS格納メモリ接続用としてSDカードインタフェースを追加するなどのカスタマイズを行い、vRANでのオフロード用ハードウェアアクセラレーターとしての性能、使い勝手を追求している。

SmartNIC「Griffin」(型番:N6060)の主な仕様 SmartNIC「Griffin」(型番:N6060)の主な仕様[クリックで拡大] 出所:アルチザネットワークス

 PTP、SyncEによる高精度な時刻同期、クロック同期機能も搭載し、O-RANアライアンスで策定されているコンフィグレーション「O-RAN LLS(Lower Layer Split)-C1」「同C2」「同C3」に準拠したO-DU(O-RAN Distributed Unit)のL1処理をGriffin上で実行できる。「O-DUのL1処理であれば、GriffinはCPUのおおよそ10倍高速に行えるだろう。言い換えれば、10個のCPUが必要だったところが1枚のGriffinで済むようになる」(同社開発統括本部 第4開発部マネジャー 三井登司男氏)とする。

 O-DUのL1処理以外にも、O-CU(O-RAN Central Unit)やUPF(User Plane Function)などの5GC(5th Generation Core network)ノードのデータプレーンオフロードなどにも対応できる見込み。三井氏は「4G用周波数帯域を5Gとして活用する“周波数転用”時に必要になる仮想セルサイトルータ(vCSR)にもGriffinは活用でき、その用途はとても幅広い」とする。

vRAN用途における「Griffin」のユースケース(1)vRAN用途における「Griffin」のユースケース(2) vRAN用途における「Griffin」のユースケース[クリックで拡大] 出所:アルチザネットワークス

 幅広い用途で使用できるGriffinだが、それぞれの用途に応じて容易にカスタマイズもできる。「インテル Open FPGA Stack(OFS)」に対応しているからだ。

 インテル OFSとは、インテル FPGA SmartNIC N6000-PL プラットフォームなどさまざまなFPGAカードをインテル Xeon プロセッサーベースのサーバのオフロードアクセラレーターとして使用する際に必要なハードウェアIPやソフトウェアなどが提供される開発環境ソリューション。vRAN用のハードウェアIPやソフトウェアも数多くインテル OFS上で提供されており、短時間に高性能なハードウェアアクセラレーターを構築できるほか、ユーザーアプリケーションソフトウェアも開発できる。

インテル Open FPGA Stack(OFS)の概要 インテル Open FPGA Stack(OFS)の概要[クリックで拡大] 出所:アルチザネットワークス

 門田氏は「インテル OFSで提供されるハードウェアIPやソフトウェアなど設計開発リソースは今後、さらに充実していく見通しで、Griffinの使いやすさも日々、向上していく。また、アルチザネットワークスとして設計開発のサポートも提供していく。設計開発を丸々請け負うことも可能で、充実したサポートもGriffinの特長としていきたい」とする。

放送、医療、半導体製造装置など幅広く展開へ

 アルチザネットワークスは、vRAN用途とターゲットにGriffinを開発したわけだが「vRAN以外の用途でも使用できるアクセラレーションカードであり、vRANに限らず幅広い用途での販売を目指す」との方針で、放送分野や医療分野などへの提案活動を展開。2022年11月には、放送技術関連展示会である「Inter BEE 2022」に出展し、IPベースの映像信号(SMPTE ST2110 IP)をSDI(Serial Digital Interface)ベースの映像信号に変換(Decap)する処理にGriffinを使用することを提案した。

 「Inter BEE 2022では、放送機器関係だけでなく、医療機器メーカーや半導体製造装置メーカーなどのエンジニアからも引き合いがあるなど多くの反響があった。CPUの処理をオフロードするハードウェアアクセラレーターとして用途は無限大にある。インテル OFSに対応し、日本語でのサポートも提供する国産のFPGAアクセラレーションカードとして販売していく。今後も、最新のFPGAを搭載したアクセラレーションカードを継続的に開発し、一定の売り上げ規模を誇る事業にしていく」(門田氏)

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提供:株式会社アルチザネットワークス
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2023年2月20日

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