2023年に入り、電気自動車(EV)関連企業がオンセミ(onsemi)のSiC(シリコンカーバイド/炭化ケイ素)を用いたパワー半導体「EliteSiC」を採用する動きが相次いで明らかになっている。なぜ、オンセミのSiCパワー半導体・EliteSiCがEV関連企業に選ばれているのだろうか。
地球環境保護、二酸化炭素排出削減に向け、電力を効率良く使用することが求められている。その中でキーデバイスとして注目されるのが「SiCデバイス」だ。従来のシリコンによるパワー半導体よりも大幅に電力損失が小さいという特長を持つ。そのため、SiCデバイスは次世代パワー半導体とも呼ばれる。
次世代パワー半導体と聞くと、まだまだ普及には程遠い未来のデバイスという印象を抱くかもしれない。だが実はそうではない。近ごろ、SiCデバイスの採用発表が相次ぎ、本格的な実用化段階に突入している。特にSiCデバイスが航続距離延長に直結するEVでの採用が相次いでいる。
▼オンセミとフォルクスワーゲン(VM)グループ、次世代EV向けSiC技術に関する戦略的契約に合意し、戦略的提携を強化 <2023年1月>
▼オンセミのトラクションインバータ用SiCパワーモジュール、現代自動車グループの高性能EVに採用 <2023年1月>
▼オンセミのSiC技術がBMWグループの次世代EVに搭載 <2023年3月>
▼オンセミと中国EVメーカーZEEKR、SiCパワーデバイスの長期供給契約を締結 <2023年4月>
▼オンセミとKempower、EV用充電器に関する戦略的契約を締結 <2023年5月>
上記は2023年以降に発表されたEV関連企業のSiCデバイス採用に関する動きだ。EV領域でSiCデバイスが実用化時期に差し掛かっていることが分かる。同時に、SiCデバイスのサプライヤーとしてオンセミがEV関連企業に選ばれていることにも気付くだろう。
多くのEV関連企業がオンセミのSiCデバイスを採用する背景の一つに、SiCパワーデバイスの一貫した生産体制が挙げられる。
半導体不足で自動車の生産が滞ったことは記憶に新しい。自動車メーカーにとって半導体製品の安定調達は喫緊の課題であり、長期安定供給が半導体製品を採用する際の必須条件になっている。
一方で、SiCデバイスの供給網はシリコンに比べてぜい弱だ。特にSiCウエハーを切り出す前の単結晶材料であるSiCブールの生産量は少なく、今後の急速なSiCデバイス普及期に対応できる生産量が確保できているとは言い難い。この安定供給に難を抱えている点がSiCデバイスを採用する際の大きな懸念点となっている。
オンセミは、SiC粉末やグラファイトを調達してSiCブールから自社で製造する体制を整えている。最も供給懸念の大きいSiCブールを自社で製造できる体制を持つからこそ、安定したSiCデバイス供給が約束され、EV関連企業での採用につながっているわけだ。
SiCブールからパッケージング/テストまでの完全な一貫生産体制は、デバイスの安定供給の実現と同時にSiCデバイスの潜在能力を存分に引き出すことが可能になるというメリットを持つ。オンセミは、一貫生産体制で生産する高性能SiCパワーデバイスを2022年1月から「EliteSiC」という名称で展開している。
EliteSiCは、1700V耐圧までのSiC-MOSFETやSiC-SBD(ショットキーバリアダイオード)がそろう。その一つ「1700V EliteSiC MOSFET」は1200V、40Aのテスト条件で200nCのゲート電荷(Qg)を達成。高速スイッチング時の低損失化が見込め高電力再生可能エネルギー用途などに向く。
定格1700VのSBDは、最大逆電流(IR)が25℃時40μA、175℃時100μAという優れた逆方向リーク性能を実現。こちらもエネルギーインフラや産業機器用途での電力損失削減に貢献するSiCデバイスになっている。
EV用途に適したEliteSiCの新製品として2023年5月発売の「1200V EliteSiC M3Sデバイス」がある。1700V EliteSiC MOSFETと同様に高速スイッチングを実現するSiC-MOSFET製品の他、ハーフブリッジPIMタイプのモジュール製品も用意。モジュール製品は標準F2パッケージを採用し、低オン抵抗が大きな特長。800VのEV向けオンボードチャージャー(OBC)やEV充電システム、エネルギーインフラに最適なデバイス/モジュール製品だ。
EliteSiCに関する詳しい情報は下記リンクで確かめてほしい。
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