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回路トポロジーに迷いがちなAC/DCの設計に「ちょうど良い選択肢」を MPSが製品群を拡充中強みはDC/DCだけじゃない

MPS(Monolithic Power Systems)は、DC/DC電源モジュールなどの電源ICに強みを持つファブレス半導体メーカーだ。だが同社の強みはそれだけではない。近年、力を入れているのが電子機器の「入り口」とも言えるAC/DCソリューションだ。用途に適したアーキテクチャの選択が難しいAC/DC電源設計のために、MPSは使い勝手に優れた製品群を拡充している。

» 2023年11月13日 10時00分 公開
[PR/EE Times Japan]
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電子機器の「入り口」部分にも強いMPS

 小型のモバイル機器から大型の産業機器まで、あらゆる電子機器に欠かせないのがAC/DC電源だ。家庭や工場、オフィス、商業施設などにはAC電圧(交流電圧)が供給されるが、電子機器に組み込まれているほとんどの電子回路はDC電圧(直流電圧)で動作する。そのため、AC電圧をDC電圧に変換するAC/DC電源は、「電子機器の入り口」に相当する重要な部品だ。

 それだけに、AC/DC電源には要件も多い。まず、省エネルギーの観点から効率の改善が求められている。軽負荷から最大負荷までの全範囲でいかに高効率を実現するかが、AC/DC電源の設計者にとっての必須の課題だ。効率の向上は発熱の低減にもつながる。高効率化と電源周辺部品の小型化のために、GaN FETのような高周波スイッチング素子を用いるケースも増えており、そうした新しいデバイスを使いこなすことも要求される。AC/DC電源のアプリケーションは電力レベルが小さいモバイル機器から大電力の産業機器まで多岐にわたるので、必要な電力に適した回路トポロジーや回路規模を選択しなくてはならない。ほぼ全ての電子機器に搭載されるAC/DC電源は、このように課題も多い。

MPSジャパン シニアFAEマネージャー 岩本純一氏 MPSジャパン シニアFAEマネージャー 岩本純一氏

 そうした課題に応えるためにAC/DC電源の関連ソリューションを拡充しているのがアナログ半導体メーカーMPS(Monolithic Power Systems)だ。高度な集積技術を生かしたDC/DC電源モジュールやパワーマネジメントICを提供しているというイメージが強いMPSだが、AC/DCソリューションのラインアップ強化にも力を入れている。

 MPSジャパンでシニアFAEマネージャーを務める岩本純一氏は、「AC/DCソリューションを展開し始めたのは約10年前なので当社にとっては比較的新しい製品群だが、最近はかなりラインアップがそろってきた」と語る。

 数百ワットから1キロワット以下の電力を使用するアプリケーションをターゲットに、DC/DC電源で培ってきた技術や得意とする集積技術を生かした小型で高効率なAC/DCソリューションを用意している。

MPSが提供するAC/DC製品群 提供:MPS MPSが提供するAC/DC製品群 提供:MPS

ZVSを活用したAC/DCコンバータ

 まずは、AC/DCコンバータの回路トポロジーとして代表的なフライバック方式の製品群をひと通りそろえた。その中でも特徴的なのは、ZVS(Zero Voltage Switching)を用いた1次側向けのフライバックコントローラ「HFC0652」だ。

 ZVSは、スイッチング素子のドレイン−ソース間電圧がゼロになってからオン/オフする方式だ。ソフトスイッチングの一つで、スイッチング損失を抑えられるので高効率化に効果がある。ZVSを用いたフライバックコンバータ技術は比較的新しく、「このタイプの製品を展開しているのはMPSを含め数社程度しかない」という。

 集積技術を生かした「All in One」ソリューションもある。1次側のフライバックコントローラと2次側の同期整流ドライバを1チップに統合し、1次側と2次側を容量絶縁方式で絶縁した製品だ。この絶縁技術はMPSが強みを持つもので、同社のDC/DC電源モジュールに使われてきた。All in One製品の「MPX2002」「同2003」では、4.5kVac以上の絶縁電圧を実現している。

 All in Oneと同等の回路をディスクリートで構成する場合、フライバックコントローラ、フォトカプラー、基準電圧源、同期整流コントローラの4つのチップが必要だが、MPSのAll in Oneを使えば1チップで済む。部品点数が少なくなるので設計を簡素化できる。

「All in One」の回路。1チップに統合しつつ、1次側と2次側の間をMPSの絶縁技術で絶縁している 「All in One」の回路。1チップに統合しつつ、1次側と2次側の間をMPSの絶縁技術で絶縁している 提供:MPS

 これらのコントローラを駆動するFETは、MPSが最も得意とする製品の一つでもある。高い駆動能力を持つFETを使っても、コントローラとFETの回路全体でコストを抑えられることも利点だ。

 また、MPX200xシリーズでは外付けであった1次側MOSFETも内蔵した「MPX0x00」シリーズも開発を開始しており、2023年から一部サンプル供給も開始している。

PFCとLLCを組み合わせたデジタル電源コントローラ

 2015年ごろからは、PFC(力率改善)コントローラとLLCコントローラを一体化した製品(以下、PFC+LLCコンボコントローラ)にも力を入れてきた。TVやゲーム機器、PC用電源、電動工具など、100〜1000Wクラスの電力を使う民生機器用の製品だ。

 最大の特徴は、デジタル制御を備えている点だ。特に、多数のパラメーターを調整しなくてはならないLLCコントローラで、デジタル制御の利点が生きる。抵抗値や保護機能用のしきい値などのパラメーターをUARTインタフェース経由で簡単に変更できるので設計の負担が減り、工数も短くなる。既存品では変更できなかったパラメーターも含めて「できるだけ設計の手離れが良くなるようにパラメーターを変更できるようにした」。軽負荷モード時のパルススキップやバーストモードのパラメーターを変更できるのも特徴だ。

 アナログ制御のコントローラでは、パラメーター調整のためのピンが多数必要なのでパッケージも大きくなってしまうが、デジタル制御であればその課題も解決する。フィルターの設定も可能なのでノイズ耐性が高まり、「耐ノイズ性が要求される産業機器やTVなどに、ようやく使えるようになってきた」と岩本氏は説明する。

 250〜1000Wクラスのアプリケーションを対象にしているMPSの従来品はPFC回路に電流連続モード(CCM)を採用しているが、90〜400Wと少し小さな電力向けに電流臨界モード(CRM)をPFC回路に採用した品種も開発した。ターンオン時のノイズやスイッチング損失が小さいというメリットがあるCRMは、TVをはじめ電力が300W以下の民生用AC/DC電源によく使われている。CRMを採用した製品をそろえたことで、市場規模が大きい300W以下の民生分野を狙いやすくなる。

PFC+LLCコンボコントローラ「HR1211」の回路構成の一例 PFC+LLCコンボコントローラ「HR1211」の回路構成の一例 提供:MPS

“隙間”の電力「240W」にフィットするコントローラ

 2024年上半期には、当製品シリーズの最新製品として、デジタルCRM PFC + AHBフライバックコンボコントローラのリリースが予定されている。最大240Wの電力供給が可能なUSB PD(Power Delivery) 3.1対応のアプリケーションに要求される変換効率を満たす製品だ。

 「150〜240Wは、AC/DC電源の最適な回路選定という意味で難しい電力レベル」だと岩本氏は説明する。「回路規模が大き過ぎるとコストが高くつくし、単純なフライバック方式だとトランスのサイズが大きくなったり高効率の実現が難しかったりする。設計者にとっては、AC/DC電源の価格と性能、設計工数のバランスを取りにくい」。150〜240Wは“ちょうど良い”回路規模のAC/DC電源を設計しにくい、“隙間”のような電力レベルなのだ。

 こうした“隙間の電力レベル”に対応できて、効率も良く、2次側の設計も簡単なAC/DCコンバータとして開発されたのが来年上半期にリリースされる新製品だ。自らVCC電圧を昇圧して生成できる機能を備えているので、USB PDの供給電力の変動による電源電圧の低下にも対応できる。「このような、かゆい所に手が届く機能は顧客からも良い評価を得ている。当製品のサンプル出荷は間もなく開始予定で、引き合いも強いと確信している」

 なお、LLCとPFCを一体化するとグランドが離れた場合にノイズ対策が難しくなることがあるので、「ノイズ対策を強化しやすいよう、単体のデジタルLLCコントローラを個別に開発している」(岩本氏)。また、もう少し高い出力電力が必要な用途向けに、2フェーズのフライバックコントローラの開発も進んでいる。「さまざまな要件に応えられる製品を今後も積極的に増やす計画だ」

GaN FETを内蔵して小型化に貢献

 フライバックコントローラにFETを内蔵したシリーズも拡充している。「HFG610」は、定格電圧650VのGaN FETを搭載していることが特徴だ。高周波スイッチングができるGaN FETを使うことで受動部品を小型化でき、効率も上げられる。「将来的には、SiC FETや酸化ガリウムFETなどの新しいFETを搭載することも考えている。FETの材料にこだわらず、特性の良いFETを統合してAC/DCフライバックコントローラの効率を高めていく」。今後は、40W、60W、75Wと出力電力を高めた品種もリリースする計画だ。

「HFG610」と「MP9986」で構成した、65Wの電力を供給するUSB PDソリューション向けの基板(左) 「HFG610」と「MP9986」で構成した、65Wの電力を供給するUSB PDソリューション向けの基板(左)。従来のディスクリート品で構成する場合(右)に比べて、かなりシンプルになっていることが分かる 提供:MPS

DC/DC技術の強みを生かす

 MPSのAC/DCソリューションに共通するのは、集積技術やデジタル化技術による使い勝手の良さだ。集積化でも、単に1チップ化、1パッケージ化するのではなく、PFCとLLCを組み合わせたり絶縁技術を統合したりと、もともと強みを持っているDC/DC電源技術で蓄積したノウハウを存分に活用している。

 岩本氏は「ターゲットの電力に合わせて最適なAC/DC製品を選べるように、今度もどんどん製品群を拡充する」と意気込む。「MPS Now」では、日本語で相談できることも設計者にとって心強いだろう。回路規模や回路トポロジーに悩んだら、“ちょうど良いAC/DCソリューション”を追求し続けるMPSの製品を試してみてほしい。

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提供:MPSジャパン合同会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2023年12月4日

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