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ESD解析の「最適解」 高精度なシミュレーションから始めるノイズ対策「CST Studio Suite」で静電気の伝播を可視化する

半導体や電子部品の小型化・高性能化に伴い、電子機器のESD(静電気放電)対策は複雑で困難になっている。そこで重要になっているのがESDのシミュレーションだ。ダッソー・システムズの3次元EM(電磁界)シミュレーター「CST Studio Suite」は、時間領域ソルバーによって短時間で高精度なESD解析ができる。

» 2024年02月01日 10時00分 公開
[PR/EE Times Japan]
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デバイスの小型化でESDの課題が顕著に

 電子機器の設計において最も重要な項目の一つがESD(Electro-Static Discharge:静電気放電)対策だ。ESDとは、人体と電子機器などの電位が異なる2つの物体が接触もしくは接近したときに発生する静電気の放電現象を指す。空気が乾燥している冬に、ドアを開けたりセーターを脱いだりしたときに「パチン」と静電気が発生し、痛い思いをしたことがある人は多いだろう。これもESDの一例だ。

 人体から発生するESDは数キロボルトに上る。人間であればビリッとした痛みを一瞬感じるだけで済むが、電子機器においては大きな問題になる。数キロボルトもの高電圧のパルスが電子機器に侵入すれば、回路の誤動作やIC/電子部品の故障につながるからだ。ESDの影響の例としては、トランジスタ接合部の熱損傷、トランジスタゲートの酸化絶縁被膜の絶縁破壊、電気信号やソフトウェアの障害を引き起こす電磁干渉などが挙げられる。

 近年、ESD対策は複雑かつ困難になっている。理由の一つは、ICの小型化や低電圧動作、スイッチング速度の高速化が進んでいることだ。これらは全てICの「進化」と捉えられ、メリットとして認識されているが、こうした「進化」によってESD耐性が低下し、ESD対策の複雑化を招いている。

複雑で難しいESDの試験

 もう一つの理由は、ESDの耐性評価試験が難しいということだ。ESDの試験規格には電子機器、半導体、車載用部品など、試験の対象によって複数の種類がある。電子機器であれば「IEC 61000-4-2」。その他にも、車載用電子機器に対応した「ISO 10605」や、半導体の「IEC 60749-26/27」がある。

 いずれの試験規格にも共通するのが、試験のシナリオが多岐にわたり、かつ試験の条件が非常に細かいことだ。一般的にESDの試験では、ESDガンを使って静電気を特定の箇所に放射し、電子機器が正常に動作するかどうかを確認する。その際、環境条件、印加電圧、ESDガンの先端形状まで細かく定められている。加えて、ESDの試験は人が触れるだろう全ての箇所で行う必要がある。PCのディスプレイであればどの部分にも触れる可能性があるので、全面を試験する。さらに、ESDガンを機器に当てる角度やESDガンのグランドケーブルの引き回し等によって測定値が変動する場合もある。そのために何度もESDガンを当てていく。このようにESDの試験は複雑で難しく、時間を要する工程なのだ。

 そこで重要になってくるのがESDのシミュレーションだ。設計の段階で、ESDの影響を高い精度でシミュレーションできれば、設計の手戻りや製品発売後の不具合、故障発生のリスクを削減できる。こうしたシミュレーターの一つが、ダッソー・システムズ(以下、ダッソー)の3次元EM(電磁界)シミュレーションソフトウェア「CST Studio Suite」だ。

簡単な操作で、高速かつ高精度なシミュレーションが可能に

 ダッソーは、自動化、電磁界解析、流体解析、構造解析といったさまざまな分野向けの設計シミュレーションツールを「SIMULIA」ブランドで展開している。CST Studio SuiteもSIMULIAの一つで、簡単な操作でESDのシミュレーションを高速かつ高精度に実行できることが特徴だ。また、ESD以外にも5G等の高速通信や車載用アンテナ・センサ等を対象とした大規模・高精度の解析にも対応可能である。さらに、マルチフィジックスや最適化解析によるSIMULIA製品との連携や、CATIAやSOLIDWORKSとのモデルと連携することで、より用途に適した柔軟で効率的なシミュレーション/解析ができる。

 CST Studio Suiteは時間領域ソルバー、周波数領域ソルバー、積分方程式ソルバー(モーメント法)、漸近ソルバー(レイトレース)など、全てのソルバー(解析手法)を単一のユーザーインタフェースで利用できる。複数のソルバーを連結して使うことも可能だ。時間領域ソルバーを使えば、高速なESD電流が時間の経過とともにどのように伝播(でんぱ)していくかを可視化できる。

“本物のESDガン”を用いた場合に近い環境でシミュレーションを実行

 ここからは、接触放電と気中放電の2つの事例でCST Studio Suiteのワークフローを見てみよう。いずれの場合も、まずESDガンと試験の対象物(スマートフォンの筐体や基板など)の3次元モデルをインポートし、それらのモデルを組み合わせて(アセンブリして)放電電流を打ち込む位置を決める。その後、ESDのシミュレーションを実行する。

ESDシミュレーションのワークフロー ESDシミュレーションのワークフロー。接触放電でも気中放電でも、インポートした3次元モデルを組み合わせてシミュレーションするという流れになる 提供:ダッソー
ダッソーの技術部 SIMULIA インダストリー・プロセス・コンサルタントの山口雄一氏 ダッソーの技術部 SIMULIA インダストリー・プロセス・コンサルタントの山口雄一氏

 ここで重要なのが、CST Studio SuiteのESDガンモデルはIEEEの文献などで妥当性が十分に確認されたものだという点だ。IEC 61000-4-2で定義されたESDガンの校正条件において、文献で検証されたガンモデルを使用したシミュレーション結果は、IEC 61000-4-2の規格値に適合していることが分かる。さらに、他のIEEE文献によるESDガンモデルと対象物モデルとのシミュレーションでも、シミュレーション値が“実物のESDガン”を用いたときの測定値とほぼ同等の結果が得られている。ダッソーの技術部 SIMULIAでインダストリー・プロセス・コンサルタントを務める山口雄一氏は、「CST Studio Suiteによるシミュレーションは“本物のESDガン”を用いた場合に近い環境で実施されていることを示している」と語る。

IEC 61000-4-2の規格とシミュレーション結果の比較になり、立ち上りや電流等の規格値に適合した解析値になる IEC 61000-4-2の規格とシミュレーション結果の比較になり、立ち上りや電流等の規格値に適合した解析値になる 提供:ダッソー

モデルのアセンブリが容易な接触放電シミュレーション

 CST Studio Suiteは、モデルの作成や複数のモデルをアセンブリしやすいことも特徴だ。金属ボックスの上面に放電電流を打ち込む場合、マウスでクリックするだけで簡単にボックス上面の中心部とESDガンの先端部分の位置決めができる。「中心部の位置をユーザーが調べて値を入力しなければならないシミュレーションツールもある。CST Studio Suiteは線や面の正確な中心を選択できるツールを幾つか用意しており、それらを使うことでモデルの変形やアセンブリが簡単にできる。そのため、シミュレーションにおいて重要なモデルの作成時間を短縮できる」

 接触放電のシミュレーションでは、回路との連成解析も可能だ。ESD対策部品としてダイオードを実装した基板をシミュレーションするとしよう。ESD信号を励振する部分と終端を含む回路に、ESD対策用ダイオード(ツェナーダイオード)のSPICE等の等価回路モデルを回路解析モデル上に配置し電磁界解析と回路解析を連携させる。これによってダイオードの効果をより視覚的に確認できる。

接触放電シミュレーションと回路の連成解析 接触放電シミュレーションと回路の連成解析。ダイオードなどの対策部品の効果を直感的に確認できる 提供:ダッソー

Rompe-Weizel則適用のモデルと連携した気中放電シミュレーション

 CST Studio Suiteの気中放電シミュレーションは、火花抵抗則であるRompe-Weizel則を適用したSPICEモデルを組み込んだ回路解析と連携している。2つの物体が接触して発生する接触放電に対し、気中放電は物体の間に隙間(空気)が存在する。その空気中を静電気がどのように伝播するかは、気温(室温)や湿度等によって変わる。その変化を公式で表したものがRompe-Weizel則だ。Rompe-Weizel則を適用したSPICEモデルを用いることで、より高精度な気中放電のシミュレーションが可能だ。「CST Studio Suiteを使った気中放電のシミュレーション結果も、IEEEの文献に示されている測定値とほぼ同等になっている」(山口氏)

複雑な解析モデルにも対応

 CST Studio Suiteは、スマートフォンのような多数の部品や多層基板を用いた複雑な構造の電子機器も容易にシミュレーションできる。スマートフォンであれば、多層基板を搭載した筐体モデル、ESDガンモデル、PCB(プリント配線板)モデルそれぞれに「アンカーポイント」と呼ぶ接続ポイントを設定しておく。アンカーポイント同士を接続することで複数のモデルを簡単に接続できる。

各モデルの「アンカーポイント」(点線で囲まれた部分)同士を接続することで、より複雑な解析モデルを簡単に生成できる 各モデルの「アンカーポイント」(点線で囲まれた部分)同士を接続することで、より複雑な解析モデルを簡単に生成できる 提供:ダッソー

 「CST Studio Suiteの単一のユーザーインタフェースにより、さまざまな3Dモデルを組み合わせたモデルを容易に作成可能である。多層基板のような複雑な解析モデルを簡単に組み合わせて高精度なシミュレーションを高速に実行できることが、CST Studio Suiteの特徴の一つ」と山口氏は強調する。

 時間領域ソルバーを使ってESDを解析することも大きなメリットになっている。既存のシミュレーターでは、一般的に時間領域ではなく周波数領域でESDを解析する。そのため、ESDの伝播を3次元で視覚的に確認できない。「周波数領域の解析データにFFT(高速フーリエ変換)をかけて時間領域のデータに変換できるが、それでも3次元での伝播を直感的に確認するのは難しい」(山口氏)

 時間領域ソルバーは解析手法としてFIT(有限積分法)やTLM(伝送線路行列)を使っている。CST Studio Suiteはシミュレーションの実行にGPUを用いることができ、大規模な演算を高速に実行できる。

 ESDを高精度で高速に解析できるCST Studio Suiteは、自動車業界,ハイテク業界などのさまざまなメーカーが採用している。

 山口氏は、「CST Studio Suiteの時間領域ソルバーによるESDシミュレーションは、IEEEなどの文献でしっかり妥当性が検証されている。半導体や部品の高性能化、小型化によってESD対策は難しくなっているが、シミュレーターの性能も上がっている」と強調する。ESDを高精度に解析できるCST Studio Suiteの実力を試してみてはいかがだろうか。

 CST Studio Suiteを使ったESDシミュレーションのデモは、以下の動画で見ることができる。

ESDシミュレーションのデモは、こちらから

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提供:ダッソー・システムズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2024年2月23日

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