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「実装するだけ」でパワーオフシーケンスを実現! 電源管理を備えたインダクタ内蔵DC/DCモジュールFPGAの過酷な電源仕様に応える

MPSは、降圧DC/DCコンバータICとインダクタを1パッケージに集積して電源管理機能を搭載した「マルチチャネルPMIC電源モジュール(インダクタ内蔵DC/DCコンバータモジュール)」の拡充に力を入れている。主に電源仕様の要求が厳しいFPGA向けの製品で、最小構成では同モジュール1個とコンデンサ5個で電源回路が実現する。パワーオン(起動)やパワーオフ(停止)のシーケンスを簡単に組めることも特徴だ。

» 2024年05月07日 10時00分 公開
[PR/EE Times Japan]
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電源管理機能を備えたインダクタ内蔵DC/DCモジュール

 AI(人工知能)をはじめ、高速かつ膨大な量の演算処理のニーズが高まるにつれて、組み込み機器向けのSoC(System on Chip)やFPGAは多機能化と高性能化が進み、論理回路などの規模も大きくなっている。それに伴い、FPGA/SoCの電源仕様はますます厳しくなっている。FPGAでは各機能ブロックに電源電圧を供給する必要があるため、機能ブロックが増えると電圧レール数も増える。1つの電圧レールに1個のDC/DCコンバータICから電源を供給していたのではDC/DCコンバータICの数が増え、コストや設計工数の増大を招く。電源を立ち上げる順番も重要だ。ここを誤ると正常に動作しないだけでなく故障や不具合につながる恐れがある。そのため電源を立ち上げる順番や時間を厳密に制御する電源管理が求められる。こうした厳しい電源仕様に応えるべく、電源ICを手掛ける半導体メーカーは複数のチャネルや機能を1パッケージに統合するなど、電源ソリューションの小型化や電源回路の実装面積の縮小を図る努力が続いている。

 MPS(Monolithic Power Systems)も、そうしたアナログ半導体メーカーの一つだ。同社はこの4〜5年、マルチチャネルの降圧DC/DCコンバータICとインダクタを1パッケージに集積した「PMIC電源モジュール(インダクタ内蔵DC/DCコンバータモジュール)」に力を入れている。

 MPSのPMIC電源モジュールは“PMIC(Power Management IC)”の名の通り、電源管理機能を搭載していることが特徴だ。MPSジャパンでシニアFAEを務める蜷川顕二氏は「既存のPMICはあくまでも電源を管理するICで、インダクタなどを内蔵したモジュールではない。インダクタとDC/DCコンバータICを1パッケージに統合したモジュールは他社も提供しているが、われわれが知る限り、電源管理機能を持つ製品は見受けられない。MPSのPMIC電源モジュールは、インダクタを統合し、かつ電源管理するという点で既存品とは一線を画す製品になっている」と語る。

MPSの「PMIC電源モジュール(インダクタ内蔵DC/DCコンバータモジュール)」の製品ラインアップ MPSの「PMIC電源モジュール(インダクタ内蔵DC/DCコンバータモジュール)」の製品ラインアップ 提供:MPSジャパン

パワーオフシーケンスを容易に構築可能

MPSジャパンでシニアFAEを務める蜷川顕二氏 MPSジャパンでシニアFAEを務める蜷川顕二氏

 MPSは、PMIC電源モジュールのラインアップを多数そろえている。最もベーシックな製品が4チャネル出力の「MPM54304」だ。4チャネルDC/DCコンバータとインダクタが、7×7mmのパッケージに集積されている。出力電流は3Aが2チャネル、2Aが2チャネルで、並列接続して使用できる。6A(3A+3A)/4A(2A+2A)のように2つの出力で使う、6A/2A/2Aのように3つの出力で使う、といった具合だ。そのため多少負荷が重くても1個のMPM54304で対応できる。

 最大の特徴は、パワーオフ(停止)シーケンスを簡単に組めることだ。パワーオン(起動)シーケンスは、DC/DCコンバータICが一般的に備えているイネーブル端子とパワーグッド端子を組み合わせて容易に構築できる。だが、パワーオフシーケンスをパワーオンシーケンスのようにハードウェアだけで構築するのは難しい。蜷川氏によれば、そもそもパワーオフシーケンスは数年前まで要求されてこなかったという。

 「近年、FPGAやSoCの製造プロセスが進んで線幅が微細になり、要求される電圧レール数も非常に多くなっている。FPGAやSoCの電源起動/停止の順序を誤ると回路間で導通し、意図しない電流が流れて故障につながる恐れがある。そのため、5年ほど前からパワーオフシーケンスを構築できるかどうかを顧客が強く意識するようになってきている」

 MPM54304は、パワーオフシーケンスを含めて顧客から要求された個別設定を書き込んだ状態で出荷する。「ほぼ“実装するだけ”でパワーオフシーケンスを構築できる」。これにより、パワーオフシーケンス構築のハードルが下がると蜷川氏は強調する。「『複雑なソフトウェアやハードウェアを駆使してパワーオフシーケンスを構築するほどではない』と考えていた設計者も、パワーオフシーケンスを採用しやすくなるのではないか」

「MPM54304」の概要。「電源管理の機能が7×7mmのパッケージに収められていることに驚く顧客も多い」(蜷川氏)という 「MPM54304」の概要。「電源管理の機能が7×7mmのパッケージに収められていることに驚く顧客も多い」(蜷川氏)という 提供:MPSジャパン

最小構成は「MPM54304+コンデンサ5個」

 上記の特徴から、MPM54304を用いた際の最小構成はMPM54304と入力コンデンサが1個、出力コンデンサが4個(4チャネル分)と、極めてシンプルになる。入力コンデンサは、定格電圧が25Vで静電容量が10〜22μFクラスのセラミックコンデンサ1個で足りる場合もある。マルチチャネルのDC/DCコンバータICの場合、基本的には各チャネルに入力コンデンサが1個ずつ必要だ。MPM54304のように4チャネルであれば4個使うのが一般的だ。MPM54304であれば、内部のレイアウトの工夫やフェーズシフト制御の活用などにより、静電容量が比較的小さい入力コンデンサ1個で済む。これは調達面でもメリットが大きい。「MPM54304を本格的に展開し始めた頃は、25V/10μ〜22μFクラスのセラミックコンデンサが供給難で非常に入手しにくかった。入力コンデンサが1個で済むというのは、設計面でも調達面でも大きなメリットがある」(蜷川氏)

 電源ICは、どれほど機能が搭載されていても電源回路を構成するにはある程度の周辺部品を要する。だがMPM54304の場合、「最小構成は本当にコンデンサを5個追加するだけだ」と蜷川氏は強調する。AMDのローエンドSoCである「Zynq 7000」やIntelのローエンドFPGA「Arria 10」に、MPM54304のみで電源供給できる。MPM54304を使うことで電源回路の実装面積を約70%も削減できる。

MPM54304を使うとZynq 7000の電源回路を約70%削減できる MPM54304を使うとZynq 7000の電源回路を約70%削減できる 提供:MPSジャパン

 「既存の電源ICと静電容量が小さいインダクタで安価に電源回路を構成することもできるが、その場合はパワーオフシーケンスを構築するのが難しい。MPM54304は、パワーオフシーケンスも組めることもメリットだ。インダクタを内蔵した既存の電源ICは高さがあるので、基板の部品面に実装することがほとんどだ。MPM54304は高さが2mmと低いのではんだ面にも実装でき、実装の自由度が上がる」(蜷川氏)

 出力電圧範囲は0.55〜5.5Vで、10mVステップで設定可能な事前書き込みタイプと、1品種で適用範囲を広げられる外付け抵抗設定タイプも用意している。

「並べるだけ」でパワーオフシーケンスが組める

 負荷が比較的小さいアプリケーションをターゲットとするMPM54304に対し、負荷がより大きい用途向けのPMIC電源モジュールも用意している。それが「MPM54532」「MPM54322」だ。どちらも2チャネル品で、1チャネル当たりの出力電流はMPM54532が6Aで、MPM54322が3A。2チャネルを並列接続すると12Aまたは6Aの出力が可能だ。

 両製品の特徴は、並列接続するとシーケンスクロックを共有し、隣接したMPM54532/MPM54322同士でパワーオンシーケンスやパワーオフシーケンスを自由に構築できる点だ。MPM54532とMPM54322で並列接続した場合もシーケンスクロックを共有できる。6チャネルでシーケンスを組みたい場合はMPM54532やMPM54322を3個並列接続すればよい。「難しいパワーオフシーケンスを並列接続するだけで構築できるメリットは大きい」

 「大きな負荷電流が必要なのは1カ所のみで、他への電源供給は3Aで事足りる」という場合にも便利だ。12A(6A×2チャネル)出力のMPM54532と3A出力のMPM54322を組み合わせて並列接続すれば、全体でシーケンスを容易に組める。「大規模なFPGAでも大きな負荷電流が必要なのはコアのみで、I/Oやその他の機能ブロックではそれほど大きな負荷電流は要らないというケースも多い。このようなときに、電源シーケンサを追加したりシーケンスのプログラムを記述したりする必要がなくなる。シーケンスを立ち上げるタイミングだけ設定すれば、それで済む」(蜷川氏)

「MPM54532」「MPM54322」の概要。図版右下に示した通り、並列に接続すれば簡単にシーケンスを構築できる 「MPM54532」「MPM54322」の概要。図版右下に示した通り、並列に接続すれば簡単にシーケンスを構築できる 提供:MPSジャパン

 「当社のPMIC電源モジュールを使うことで、FPGAを使う設計者は電源回路の設計にリソースを割く必要がなくなり、アプリケーションを実現するための本来の設計業務に集中できる」

 MPM54532/MPM54322のパッケージサイズはいずれも5×5.5×1.85mmと小型だ。大規模なFPGAを搭載する多層基板は層数だけで10層を超えるのが一般的になっている。実装面積の増加はコスト増に直結するので、電源回路をいかに最小限にするかは極めて重要だ。「デバイスを1個追加するだけでコストが大幅に増えるため、シーケンスを組むだけのためにマイコン1個を追加してはいられない。実装面積を大幅に削減できるPMIC電源モジュールは、その点でも有利だ」(蜷川氏)

最大20Aを出力可能な品種も

 さらに大きな負荷電流が必要な場合は「MPM54524」という選択肢もある。出力電流5Aを4チャネル備え、最大で20A出力できる製品だ。MPM54304とチャネル数は同じだが、負荷電流が大きく変動しても高い出力電圧精度を維持できるドループ制御機能を搭載している。これにより、静電容量が小さい出力コンデンサが使える。シーケンスを構築する際に、MPM54304よりも高度あるいは柔軟に対応できることも特徴だ。

 MPSは、今回紹介した4製品をはじめ、PMIC電源モジュールについて日本語で相談できるサポートサイト「MPS Now」も用意している。

 FPGAが大規模になり、電源仕様や部品コストに対する要求が厳しさを増す中、FPGA向けの電源ソリューションはますます小型化や実装面積の削減が求められるだろう。蜷川氏は「MPSのPMIC電源モジュールにより、シーケンス構築を含めて要求通りの電源を簡単に実現できる」と強調する。FPGAへの電源供給に適した電源管理機能を搭載してインダクタまで統合したMPSの小型PMIC電源モジュールは、厳しい電源仕様の要求に応え得る最適解の一つになるだろう。

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提供:MPSジャパン合同会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2024年5月17日

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