Xilinxの「7シリーズFPGA」や「Zynq-7000 EPP」など、FPGAの世界に新しい潮流が生まれている。このトレンドをしっかり見極め、FPGAを使った革新的な設計技術・手順や実装方法を体験できる実践型の技術セミナー「X-fest 2012」が7月に東京と大阪で開催される。PCI Expressからビデオ、無線、組み込みネットワークなど、さまざまなアプリケーション開発のノウハウが満載のこのテクニカルセミナーの見どころを紹介しよう。
最先端の半導体プロセスで製造される新世代FPGAの時代が本格的に幕を開けた。
FPGA最大手ベンダーのXilinx(ザイリンクス)は、28nmプロセスを適用した「7シリーズFPGA」のサンプル出荷を他社に先駆けて2011年3月に開始。2012年に入り、一部品種の量産出荷を開始するとともに、次世代FPGA統合開発環境「Vivado Design Suite」も発表。28nm FPGAを開発する環境が整った。量産出荷の第1弾は、同シリーズの中でも特に価格対性能比を重視して最適化された主要製品「Kintex-7 FPGA」だ。いよいよ量産品がユーザーの手に届く時がやってきた。
新世代FPGAに注目している組み込み機器設計者は、以前からFPGAを活用してきた既存ユーザーだけではない。従来は主にASICを利用していたり、汎用DSPや組み込みプロセッサを使ったりしていたという設計者らも今、新世代FPGAに熱い視線を注ぐ。なぜか? それは28nm世代への移行によって、FPGAが“非線形”な進化を遂げるからだ。
新世代FPGAは、微細化の最先端をいく半導体プロセスを採用することで、ロジック規模を大幅に増やしながらもロジック当たりのコストを引き下げることに成功している。もちろんFPGAはこれまでも、このような微細化を進めてきた。しかし28nmへの移行によって、現在ASICで主に使われている半導体プロセスに対して、ロジック規模でもコストでもFPGAが優位に立てるようになるのだ。これは、FPGAの今までの“線形”な進化とは異なる意味を持つ。ASICユーザーが雪崩を打つようにFPGAに乗り換え始める可能性がある。
さらにXilinxは、ARMのデュアルコア型プロセッシングシステムに28nmのプログラマブルロジックを組み合わせた「エクステンシブル プロセッシング プラットフォーム(Extensible Processing Platform:EPP)」と呼ぶ新コンセプトの製品群も投入する。それが「Zynq-7000」と名付けた製品群だ。これにより、ASICの置き換えのみならず、これまではASSPにDSPや組み込み用プロセッサを組み合わせて構成していたようなシステムを丸ごと、1個のZynq-7000に収めることも可能になる。この新たな提案も、“非線形”な進化を後押しするもう1つの大きな要素だ。
28nm世代への移行で、多くの組み込み機器設計者にとって魅力がグンと増すFPGA。しかし一言で組み込み機器と言っても、実際にはその世界は広い。通信/ネットワーク分野のインフラ機器から、車載機器、放送機器、医療機器、そして消費者向け機器に至るまで、多種多様のアプリケーションがあり、それぞれ要件が大きく異なる。個々の設計者は、「果たして新世代FPGAは、自分が開発するシステムの要件を満たす選択肢になり得るのだろうか」という疑問を抱えているだろう。
従来からFPGAを使いこなしていたユーザーであっても、新世代FPGAの特長と自身が取り組むアプリケーションの要件を突き合わせて、その「使いどころ」を見極める必要がある。
「FPGAひとつで成り立つようなシステムは存在しません。電源やアナログ周辺機能、外付けの大容量メモリ、コネクタやプリント基板、アルゴリズム開発ツールなど、さまざまな構成要素をまとめてシステムを組み上げる必要があります。しかも、FPGA自体の品種はもちろん、こうしたFPGA周辺の構成要素についても、開発対象のシステム1つ1つで最適な解は異なります」(アヴネット ジャパンの第一プロダクトセールス本部 第一プロダクトセールス部 マーケティンググループでマネージャーを務める森山寛嗣氏)。
自分は、次の設計で新世代FPGAを使うべきなのか。自分の設計にとって、周辺の構成要素の最適解は何なのか――。これらを確かめる絶好の機会が7月にやってくる。技術商社のAvnet(アヴネット)が世界各地で開催している実践型の技術セミナー「X-fest 2012」が日本でも東京と大阪で実施されるのだ。
このイベントには、基礎から応用まで10を超えるセッションが用意されている上に、展示会場も設けられており、Xilinxに加えて、周辺の構成要素を提供するベンダー各社もずらりと顔をそろえる。ここに足を運べば、新世代FPGAとZynq-7000を使ったシステム開発の“実際”を1日で把握することができる。
このイベントを主催するアヴネットは、ワールドワイドに展開する“調達力”だけでなく、最新テクノロジーをソリューションに落とし込むための“設計支援力”も併せ持つ、希有(けう)な技術商社だ。その設計支援力を具現化したのが同社の「デザインチェーン」サービスである。製品開発の各設計プロセス(構想設計〜詳細設計〜製造・評価・試験)を支える、アプリケーション・ベースのソリューションから、デザインツール、技術サポート、各種技術トレーニングまで、多彩な技術サービスを提供中だ。
X-fest 2012にも、同社がこのサービスを提供する中で培った設計支援力が惜しみなく注がれている。
新世代FPGAに関心を持つ機器設計者であれば、既にFPGAベンダーの発表や販売代理店が提供する資料に触れているだろう。展示会などにも足を運び、情報を収集しているかもしれない。実際、新世代FPGAの詳細な仕様は既にXilinxが発表しているし、2011年11月に国内で開催された組み込み機器開発の総合展示会「Embedded Technology 2011」でも、評価ボードの出品や高速シリアルトランシーバの実動デモがあった。
それらを既に目にしている機器開発者にとって、X-fest 2012に参加する意義はあるのだろうか? ――大いにある。それが答えだ。
X-fest 2012を主催するアヴネット ジャパンで代表取締役社長を務める安原信之氏は、「新世代FPGAの発表後これまでに開催されている総合展示会は、自動車の新型車の発表に例えると、“コンセプト展示”や“予告広告”のようなものです」と話す。これに対しX-fest 2012は、「限りなく“試乗会”に近いイベントだといえるでしょう。参加者のみなさんが実際に新型車のハンドルを握って動かしてみる。そんな機会を提供できると思います」(同氏)。これはカタログやパンフレットを眺めるのとは次元が違う、リアルな体験だ。
さらに安原氏は、「みなさんの隣にプロが座ってドライビングテクニックを伝授したり、メカニックチームが実車を前に、みなさん個々の要件に合わせた最適なオプションパーツを提案したりするような機会も用意しています」と言う。すなわちX-fest 2012では、新世代FPGAを一般ユーザーに先んじて使い込んでいる専門家が、そのノウハウを実際のアプリケーションの形態で披露したり、電源やアナログICなどのベンダー各社が、新世代FPGAとの親和性や参加者の個々の設計要件を考慮して、周辺の構成要素を提案したりする場が提供される。
「例えば高速シリアルトランシーバを1つとっても、単にアイパターン(伝送波形)を見せるだけではありません。評価ボードを使ってPCI Expressのコントローラを実装し、そのプロトコルでデータを送受信するといった具合に、アプリケーションレベルの動作をご覧いただきます」(アヴネット ジャパンの森山氏)。
さらに、先に述べた通り、アプリケーションに応じたFPGA周辺の構成要素についても解説する。「高速シリアルトランシーバの例で言えば、実装するプロトコルや設計の要件によって電源の最適解は変わってきます。電力効率を求めてDC-DCコンバータを採用すべきか、低ノイズ性を重視してリニアレギュレータを選ぶべきか。使いやすいモジュール品を利用するか、低コスト化を優先して自前で電源回路を組むか。電源の設計に関しては、新世代FPGAではコアロジック部の電源電圧も従来品に比べて低くなっていますから、その面でも難易度が高くなっています。X-fest 2012ではこのような実際的な課題について、座学のセッションに加えて、併設の展示会場でも詳しいお話ができると思います」(森山氏)。
もう1つX-fest 2012で見逃せないのが、Zynqの新型評価ボード「ZedBoard(ゼドボード)」だ。AvnetとXilinx、FPGAボードメーカーのDigilentが3社で共同開発したもので、国内ではX-fest 2012が初披露の場となる。ZedBoardについては、Xilinxのホームページでも紹介されており、コミュニティサイト「zedboard.org」も立ち上がっているが、当初は情報が制限されており「コミュニティベースのZynq-7000 EPP 開発キット」であることしか公表されていなかったので、一部で“うわさ”になっていた。
ZedBoardの特長は、豊富な機能を備えながらも価格を3万9000円と低く抑えた点だ。Zynqの評価ボードとしては、既にXilinx製の「Zynq-7000 EPP ZC702 評価キット」が提供されているが、価格は10万円を超えていた。このZedBoardを入り口にすれば、Zynqに取り組むハードルが一気に低くなるだろう。
「ZedBoardは、話題のZynqを“ちょっといじってみたい”という方にピッタリです。Zynqはデュアルコア構成のCortex-A9 MPCoreを搭載していますから、ZedBoardはそのままデュアルコアのARMワンボードマイコンとして使えます。さらにZynqのFPGA領域を活用すれば、ZedBoardが自分だけのSoC(System on Chip)に早変わりするわけです」(森山氏)。
このようにX-fest 2012は、新世代FPGAとその応用製品であるZynq、そして組み込みシステムの構築に欠かせないFPGA周辺要素について、基礎から応用まで1日で学べるテクニカルセミナーだ。Zynqの新型の評価ボードもいち早く体験できるこのイベントに、ぜひ足を運んでみてほしい。
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提供:アヴネット ジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2012年6月30日
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