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そうだ、LabVIEWを組み込もう! 複雑な組み込みシステムを少人数のチームで素早く開発NIDays 2012 開催リポート

組み込みシステムが複雑化・多機能化するのにともない、開発プロジェクトには数多くの専門分野で構成される大規模な開発チームを必要とするようになってきた。システム開発プラットフォームであるNI LabVIEWは、少人数のチームで短期間に複雑な組み込みシステムを開発するための強力なツールである。日本ナショナルインスツルメンツの天沼千鶴氏がその詳細を語った。

» 2012年11月29日 10時00分 公開
[PR/EE Times]
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 組み込みシステムの複雑化と多機能化が止まらない。例えば、携帯電話機は普及が始まった当初は、音声通話機能だけの端末だった。それがデータ通信機能を備えることにより、電子メールの送受信もインターネットアクセスも使えるようになった。現在ではさらに、音楽やビデオのマルチプレーヤ機能、ICレコーダ機能などに加えて、様々なアプリケーションプログラムを処理する機能を有するようになっている。名称も「携帯電話機」から、「スマートフォン」へと変わった。

 こういった複雑化や多機能化は、スマートフォンに限らない。組み込みシステムのプログラミングに必要なコードの行数は、膨大な数に上っている。洗濯機ですら10万行に達しており、複雑で大規模な航空機では650万行、MRIスキャナでは700万行、高級乗用車では1000万行にも達する。行数の増加によって当然ながら、バグ(デフェクト)も増加する。適切な期間内にバグをつぶすためにはテストエンジニアを増員しなければならない。

図1 組み込みシステムとプログラムの行数 図1 組み込みシステムとプログラムの行数 (クリックで画像を拡大)

「技術者のスキル向上」だけには頼れない

 もちろん、課題はテスト作業の増大だけではない。設計品質の向上、開発期間の短縮、開発コストの削減、新製品の開発など、数多くの課題がある。これらの課題は組み込みエンジニアに人材開発企業が調査した結果だが、解決策についても尋ねている。その結果、トップでおよそ6割を占めたのが「技術者のスキル向上」だった。

日本NIの天沼氏 日本ナショナルインスツルメンツ プロダクト事業部 テクニカルマーケティングエンジニアの天沼千鶴氏

 「技術者のスキル向上」が解決策になるという回答は、一見するともっともらしいのだが、よくよく考えてみるとおかしなところがある。天沼氏は「この回答を疑問に思いました」と述べていた。なぜなら、世の中は常に進化しているからだ。ハードウェア技術、ソフトウェア技術、すべて刻々と進化していく。技術者のスキルが向上したとしても、こういった技術の進歩に追いつくだけで、新しい技術を使いこなせるようになるだけで、精一杯となりかねない。「技術の自転車操業になりかねませんか?」と天沼氏は聴衆に対して疑問を投げかけていた。

 もちろん「技術者のスキル向上」が不要というわけではない。技術者のスキルを向上させただけでは、組み込み開発の課題は解決できないということだ。何かしらの工夫が必要になる。

PCの進化がNI LabVIEWを進化させる

 その工夫の候補の1つが、「NI LabVIEW」の導入である。ハードウェア技術とソフトウェア技術が融合したシステム開発プラットフォームであるLabVIEWは、両方の技術の進化を常に取り込む形で発展してきた。PCをプラットフォームとしているので、プロセッサ(CPU)の進化とPCの進化がそのまま、LabVIEWを進化させる。

 またナショナルインスツルメンツは最先端のFPGAメーカーとパートナーシップを結んでいるので、ハードウェア技術の進化の恩恵にも預かれる。言い換えると、LabVIEWを導入することで、継続して最新の技術を使いこなせるようになる、ということである。

独自開発と外部調達の長所を取り込む

 別の観点からも、NI LabVIEWの導入にはメリットがある。開発リソースの調達問題にどのように応えるのかという観点からだ。単純化すると、独自開発(ビルド)か、外部調達(バイ)か、という問題である。

 独自開発(ビルド)では、カスタムのハードウェアとソフトウェアを、社内のリソースを活用して製品を作り上げる。要件には完全に対応可能であるものの、開発には長い期間を要する。外部調達(バイ)では、汎用品のハードウェア部品とソフトウェア部品を購入し、これらを組み合わせて製品を作り上げる。社内のリソースは少なくて済むほか、開発期間が短くなるものの、購入部品の機能には不要なもの(オーバーヘッド)が少なくない。使わない機能まで購入させられていることになる。

 ビルドとバイのいずれにも長短がある。通常の組み込み開発ではビルドとバイを組み合わせることが多い。この場合は組み合わせのバランス取りが簡単ではなくなる。ここが悩ましい。

 この点、LabVIEWはビルドとバイの両方の特長を併せ持ったハイブリッドなプラットフォームだといえる。1枚のボードにCPUとFPGA、I/Oが載っている。CPUではリアルタイムOSとソフトウェアが動く。そしてFPGAを書き換えることでI/Oをカスタマイズする。I/Oでは外部からセンサの情報を取得したり、外部のアクチュエータを制御したりする。

図2 ハイブリッドのプラットフォーム 図2 ハイブリッドのプラットフォーム (クリックで画像を拡大)

ハードとソフトのカスタマイズを共通言語で実行

 そして最も重要な特長は、ハードウェアとソフトウェアのカスタマイズをいずれもNI LabVIEWという共通の開発言語で実行できることだ。例えばFPGAのカスタマイズでは、普通はハードウェア記述言語(HDL)を使う。英数字と記号で構成されたプログラムのコードを記述していくことで、FPGAの動作を決定する。

 これがLabVIEWでは、グラフィカルなアイコンを配置することでカスタマイズを実施する。コードを記述することがない。直感的に理解しやすい形で記述される。例えばFPGAを使ってLED(発光ダイオード)を1秒に1回の頻度で点滅させる動作の例では、ハードウェア記述言語では20行程度のコードを記述する。それがLabVIEWでは、5点くらいのアイコンで記述されることになる。まったく違うプログラミング方式となる。

図3 LEDを点滅させる動作をハードウェア記述言語でプログラミングした場合 図3 LEDを点滅させる動作をハードウェア記述言語でプログラミングした場合 (クリックで画像を拡大)
図4 LEDを点滅させる動作をNI LabVIEWでプログラミングした場合 図4 LEDを点滅させる動作をNI LabVIEWでプログラミングした場合 (クリックで画像を拡大)

性能の違いによる幅広いラインアップ

 NI LabVIEWの開発プラットフォームは基本的には、CPU(プロセッサ)とFPGA、I/Oで構成されている。そして処理性能と大きさの違いにより、幅広いラインアップが存在する。ロードエンドではシングルボードのプラットフォームがあり、それからCompactPCIモジュールのプラットフォーム、高性能PCに拡張ボードを挿入するタイプのプラットフォーム、PXIモジュールのプラットフォームがある。いずれのプラットフォームも、LabVIEWという同じプログラミング言語で開発を実施できる。

開発効率が4倍に高まる

 NI LabVIEWのようなシステム開発プラットフォームを利用することで、開発者の人数を減らすとともに、開発期間を短縮できるようになる。従来の開発手法では、CPUとFPGA、I/Oを含めた組み込みシステムの開発には、少なくとも6名のエンジニアが必要だった。具体的には、ドメインエキスパート(対象とするアプリケーション分野の専門家)、ソフトウェア設計者、FPGA設計者、機構設計者、カスタムIC設計者、ASIC設計者である。これがLabVIEWを利用することで、ドメインエキスパートとシステムアーキテクトの2名で開発を実行できるようになる。

 別の調査では、従来の開発ツールを使って12.5カ月かかっていた開発期間が、グラフィカルな開発ツールの採用で6.2カ月に短縮されるとともに、開発チームの人数が11.5名から4.8名に減ったとの報告がある。開発期間が半分になり、開発チームの人数が半分になった計算だ。開発効率がおよそ4倍に高まったことになる。グラフィカルな開発環境の導入によって開発効率がここまで高まるとは、驚きである。

医療機器にもNI LabVIEWを組み込む

 天沼氏は講演で、NI LabVIEWを組み込んだ医療機器の事例も紹介した。眼の水晶体をレーザーメスで切開する機器で、その制御にLabVIEWを採用した。水晶体の切開には非常に精密な制御が要求される。LabVIEWを組み込んだレーザ装置は、人手による切開よりもきれいに水晶体を切開できているとした。

 この他、エネルギー関連業界や工作機械の制御用コントローラなどにも LabVIEWは利用されているという。

年間生産数量が1000台未満の機器に適する

 NI LabVIEWは非常に優れた開発プラットフォームだが、すべての用途に対応しているわけではない。適していると考えられる用途は、高速・高分解のアナログ計測や、複雑な制御と信号処理などであり、カスタムハードウェア並みの性能を要求しており、市場に早期に製品を投入したい場合だとする。

 生産量は大量生産ではなく、少量生産〜中量生産が適する。もう少し詳しく説明すると、年間生産数量が1000台に満たない組み込み機器が最適だという。


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提供:日本ナショナルインスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2012年12月31日

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