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メモリとマイコン/アナログが融合! 新生スパンションを紹介組み込み機器のキーデバイスを網羅する

スパンションは2013年8月に、富士通のマイコン/アナログ半導体事業を統合し、エンベデッドシステム向けデバイスの総合メーカーとして生まれ変わった。“新生スパンション”としてのスタートからわずか数カ月だが、マイコン、アナログ半導体、そしてメモリという組み込み機器に欠かせないキーデバイスを網羅する強みを生かしたエンベデッドシステムソリューションを開発している。

» 2013年11月18日 09時30分 公開
[PR/EE Times]
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 NOR型フラッシュメモリをはじめとした組み込み機器向けメモリの大手メーカーとして知られるスパンションは2013年8月に、富士通のマイコン/アナログ半導体事業を統合し、エンベデッドシステム向けデバイスの総合メーカーとして生まれ変わった。“新生スパンション”としてのスタートからわずか数カ月だが、早くも組み込み機器に革新をもたらすエンベデッドシステムの開発に着手。マイコン、アナログ半導体、そしてメモリという組み込み機器に欠かせないキーデバイスを網羅する強みを生かしたソリューション提案を行っている。本記事では、新生スパンションが開発した最新ソリューション例としてオリジナルプラットフォーム「Connected Life Event Recorder」を紹介する。


インデックス

Connected Life Event Recorder

(1)Event Detecting Unit

   ・エナジーハーベスティング・スタータキット

   ・エナジーハーベスティング向け電源IC

   ・低消費電力のセンサー制御/RF部

   ・誰でも開発できる充実した設計環境

   ・「mruby」も対応へ

(2)Data Recording Unit

   ・Data Recording Unitを支えるマイコン「FM3ファミリ」

   ・充実するミドルウェア群

   ・Cortex-M4搭載マイコン「FM4ファミリ」も計画通り展開中

   ・組み込み機器のデータ蓄積に最適な「ファイルシステム」

ET2013でConnected Life Event Recorderを披露


Connected Life Event Recorder

 Connected Life Event Recorderは、住宅向け遠隔監視システムを想定したプラットフォームで、電池レスのセンサー端末を無線ネットワークでつなぎ、受信したデータをセキュアに格納、クラウドサービスとも連携させる。エナジーハーベスト技術やIoT(モノのインターネット)/M2M技術、セキュア処理技術など、組み込みシステム分野で注目されるあらゆる技術要素が盛り込まれている。

Connected Life Event Recorderの活用イメージ オリジナルプラットフォーム「Connected Life Event Recorder」の活用イメージ
Connected Life Event Recorderの構成 「Connected Life Event Recorder」の構成 (クリックで拡大)

 オリジナルプラットフォーム「Connected Life Event Recorder」は、「Event Detecting Unit」と「Data Recording Unit」と2つのユニットからなり、各ユニットを以下に紹介する。

(1)Event Detecting Unit

 人の生活に関係するイベントを検知するセンサー部であるEvent Detecting Unitは、スパンションが11月から一般販売する「エナジーハーベスティング・スタータキット」をベースに開発した。エナジーハーベスティング・スタータキットに、人感センサーや振動センサーを接続し、住居への不審者の侵入や住居の異常を検知するセンサーシステムを電池レスで実現する“ゼロエナジーセンサー”となっている。

エナジーハーベスティング・スタータキット

 エナジーハーベスティング・スタータキットは、その名の通り、エナジーハーベスティングシステムを誰でも簡単に構築できる開発キットだ。キットは、エナジーハーベスティング用電源ICと、ARM Cortex-M3コア搭載した低消費電力マイコン「FM3ファミリ」、温度/照度センサー、無線モジュール、LCDパネルを実装したボード2枚と、小型太陽光発電パネル、サンプルソフトウェアを同梱。キットを手に入れれば、数分間で無線通信を使ったエナジーハーベスティングシステムを動かすことができる。

エナジーハーベスティング・スタータキットのボード(降圧型DC-DCコンバータ/MB39C811実装側)の構成図 (クリックで拡大)
小型太陽光パネルをハーベスタに接続した実際のボード写真。

 キットに同梱される2枚のボードは、1枚が降圧タイプのエナジーハーベスティング用DC-DCコンバータIC(MB39C811)を、もう1枚は昇圧型の同IC(MB39C831)を搭載している。発電電圧の高い、低いにかかわらず、あらゆる発電素子(ハーベスタ)を入力に使用することが可能。キット同梱の小型太陽光発電パネルの他、室内光発電パネル、温度差発電素子、振動発電素子、無線給電(NFCなど)といったさまざまな発電素子を使ったシステム開発が行える。また、ハーベスタ入力は、2系統あり、“太陽光+振動”といったデュアルソース構成のシステムも構築できる。

 エナジーハーベスティングシステムの開発で課題になるのは、微量の発電電力をいかに有効活用するかだ。そのため、電力を回収、変換する電源ICの効率性と、マイコン、センサー、メモリといったセンサー制御用デバイスや無線用デバイスの低消費電力性の2つがカギを握る。

エナジーハーベスティング向け電源IC

 キットを構成する2種の電源ICは、ITの省エネ化を実現する製品/技術を表彰する「グリーンITアワード2013」(主催:グリーンIT推進協議会/JEITA)でグリーンIT推進協議会会長賞を受賞するなど業界トップレベルの効率性を実現する。例えば、降圧型のMB39C811は、自己消費電流が1.5μAであり、無駄なく電力を変換できる。昇圧型のMB39C831も0.35Vという超低電圧の入力でも昇圧動作が行え、電力の回収効率を高めることが可能だ。

エナジーハーベスティング用DC-DCコンバータIC「MB39C811」「MB39C831」の特長 (クリックで拡大)

低消費電力のセンサー制御/RF部

 低消費電力性が求められるセンサー制御部では、ARM Cortex-M3コアベースのマイコン「FM3ファミリ」を使用する。同ファミリの中でも、より低消費電力性能を追求したウルトラローリークグループ製品の「MB9AFA32N」を搭載している。さらに、スパンションの誇る低消費電力フラッシュメモリを追加実装可能。低消費電力と性能を両立したセンサー制御部を採用している。なお、スパンションでは、各種フラッシュメモリの他、FM3ファミリよりも、低消費電力化、低コスト化を追求したARM Cortex-M0+ベースの「FM0+ファミリ」も展開し、さまざまな性能、消費電力の要求に応えられる製品も用意する。

 無線部は、交換可能なモジュール式を採用し、さまざまな無線モジュールを実装できる。キットに同梱するモジュールは、2.4GHz帯の低消費電力無線モジュール。通信効率が高いスパンション独自プロトコルも搭載され、無線部もすぐに使用できるようになっている。

 高効率な電源IC、低消費電力のセンサー制御/RF部で構成されるボードとともに、キットには、ハーベスタとして小型太陽光発電パネル(発電能力は500ルクス照度で250μW)、470μF容量のキャパシタ、さらにはシステムの動作状況を確認できるPC用ビューワーを含めたソフト一式が添付され、すぐにゼロエナジーセンサーとしての評価が行える。

エナジーハーベスティング・スタータキットを動作させた様子。左の写真は、手前左が小型太陽電池を接続し温度を計測する送信側ボード。奥のPCに接続されたボードが受信側で、PCに送信側ボードで測定した温度を掲示している。手前右のボードは、振動発電素子を接続した送信側ボード。振動を検知し、発電した場合に受信側にアラートを送る。右の写真は、振動発電素子が動作した場合の様子 (クリックで拡大)

 キットに同梱されたハード、ソフトをそのまま使用する標準構成で、振動発電による無線伝送ソフトの場合、「振動発電→充電→無線送信→次の動作のための充電完了」という一連の動作で消費するエネルギーは、120.78μJ。全体の消費電流も、平均6mA(3.3V動作)と低い。仮に、小型太陽光発電パネルが蛍光灯の明かりに相当する500ルクス照度下で250μWの発電を行った場合には、一連の動作は約0.25秒で終えられる。

250μWの発電を行った場合のキットの動作、電力消費の例 (クリックで拡大)

誰でも開発できる充実した設計環境

 もちろん、キット同梱の標準構成以外にも、さまざまなハーベスタ、キャパシタ、センサー、無線モジュールを接続し、多様な処理をマイコンで実行できる。ただ、各種ハーベスタや処理内容などに応じて、電源ICの出力電圧やキャパシタ容量などを最適な値に設定しなければ、システムとして効率的な動作が行えない。このことが、エナジーハーベスト応用システムの設計を難しくしている。

 そこでスパンションでは、PC上でMB39C811/MB39C831を使ったエナジーハーベストシステムの動作をシミュレーションできる機能をオンラインツール「Easy DesignSim」で提供する(なお、MB39C831への対応は2013年12月からを予定)。

オンラインツール「Easy DesignSim」での電力計算イメージ (クリックで拡大)

 同ツールでは、使用するハーベスタやの仕様の他、マイコンなど制御/RF部で行う処理内容(最大20ステップまで)を入力することで、ハーベスタの発電能力と負荷(制御/RF部)を比較するなどの「パワーバジェット解析」を行い、最適な電源ICの設定値やキャパシタ容量を割り出すことができる。従来は実機で動作確認を行って最適化していた作業をPC上で実行できるため、短時間で高効率なエナジーハーベスト応用システムが設計可能だ。この「パワーバジェット解析」についてはET2013のカンファレンス「スマートエネルギートラック」(2013年11月20日)で紹介される。

「mruby」も対応へ

 スターターキット、そして、オンラインシミュレーションツールの提供により、誰でも手軽にエナジーハーベスティングシステムの開発を行える環境を構築するスパンションでは、さらに開発負担を低減する取り組みを実施している。

 高い生産性で注目される組み込み機器向けプログラム言語「mruby」をFM3ファミリで実行するための環境構築で九州工業大学と連携。C言語よりも記述量が1/2程度で済むmrubyで記述したプログラムを、FM3ファミリ搭載のエナジーハーベスティング・スタータキットで実行するための技術開発を進めている。mrubyによるプログラムを実行するには、マイコン側にmrubyVMという仮想マシンを実装しなければならない。今回、スパンションと九州工業大では、mrubyVMをマイコンに実装可能なサイズに小型化した超軽量版mrubyVMを開発し、FM3ファミリへの実装を可能にした。ARM Cortex-M3ベースのマイコンへのmrubyVMの実装は「業界初」(スパンション)とし、既にmrubyで記述したプログラムをエナジーハーベスティング・スタータキット上で動作させることに成功している。

(2)Data Recording Unit

 Data Recording Unitは、Event Detecting Unitが人感/振動センサーで検知した情報の受け手となるホスト側システムだ。情報をストレージに蓄積する他、情報に基づいて監視カメラを動作させるなどの住宅設備の制御やインターネット/クラウドサービスとの連携機能も行えるシステムであり、スパンションの豊富な製品群、技術力をベースに構築している。

Data Recording Unitを支えるマイコン「FM3ファミリ」

 スマートハウスの中心的な役割を担うData Recording Unitの中でも核となるのが、FM3マイコンだ。FM3は、低消費電力が要求されるゼロエナジーセンサーのマイコンとして使用できる製品だけでなく、高い処理性能が要求される用途にも対応する幅広い製品群を持つ。オリジナルプラットフォーム/Connected Life Event RecorderのData Recording Unitには、FM3ファミリの中で最も高性能な製品グループである「ハイパフォーマンスグループ」に位置するMB9BF618Tを使用する。

FM3ファミリの製品一覧

充実するミドルウェア群

 MB9BF618Tは、144MHzで動作し、処理能力は約180MIPSであり、従来の32ビットマイコンを超える処理能力を持つ。このMB9BF618Tに、μT-Kernel仕様に準拠した独自開発リアルタイムOS「μT-REALOS」を実装し、インターネット連携を図るためのTCP/IP、HTTP、SMTPといったミドルウェア群も搭載しWebサーバ機能も果たせる。さらにMB9BF618Tの高い処理能力を生かして、外出先からインターネットを介してData Recording Unitに蓄積したデータを閲覧する場合などに、秘匿性を担保するためには不可欠な暗号化ミドルウェアも備え、「AES-128」「SHA-256」といった暗号化システムを実現できる。

Data Recording Unitのソフトウェア構成

 これらのネット接続/暗号関連のミドルウェアは、全てFM3ファミリ/μT-REALOSに最適化したIPとしてスパンションから提供されるため、容易に実装できる点も特長だ。スパンションでは、ネット接続/暗号関連以外のミドルウェア群の提供も積極的に行っており、ソフトウェア開発負担を軽減する環境を整えている。

Cortex-M4搭載マイコン「FM4ファミリ」も計画通り展開中

 さらにスパンションでは、FM3ファミリの製品強化とともに、DSP/FPU(浮動小数点ユニット)搭載のARM Cortex-M4をCPUコアに採用したマイコン「FM4ファミリ」も2013年7月から順次、サンプル出荷を開始。FM3ファミリ以上に高性能な演算処理が要求される用途にも対応できる体制が整う。なお、スパンションは、富士通セミコンダクター時代のマイコン開発ロードマップを変更せずに踏襲し、FM4ファミリやFM0+ファミリなどを計画通り、製品化していく。

FM3、FM4、FM0+の開発ロードマップ (クリックで拡大)

 FM3の高い性能を生かしたデータ処理/システム制御機能とともに、Data Recording Unitの重要な機能であるデータ蓄積機能など、スパンションの技術力を生かした高度なソリューションを実装している。

組み込み機器のデータ蓄積に最適な「ファイルシステム」

 データ蓄積には、暗号化などによるセキュアなデータ保持と同時に、長期間、データエラーなく高信頼にデータ保持する必要がある。だが、これまで組み込み用途のデータ保持は、コストや技術面での制約により、「SDカード」や「コンパクトフラッシュ」といった市販のメモリカードにデータを記録するケースが多く、十分な信頼性が確保できなかった。

 データストレージの信頼性を高めるには、メモリセルへの書き込みを均等化させてメモリの寿命を伸ばすウェアレベリング機能などをシステムに搭載する方法があるが、同機能に対応したフラッシュメモリコントローラの追加などが必要で、コスト、サイズ、開発負担の増大を招いた。

 NOR型だけでなく、NAND型フラッシュメモリなど組み込みメモリを総合的に展開するスパンションでは、ウェアレベリング機能などメモリの信頼性を高めるフラッシュファイルシステムを開発。このフラッシュファイルシステムを高性能なFM3/FM4ファミリに実装可能なソフトウェアとして提供を開始。デバイスの追加や開発負担増を伴わず、高い信頼性の組み込みストレージが容易に構築できるようになった。もちろん、ET2013でデモを公開するData Recording Unitにもフラッシュファイルシステムが実装され、セキュアで高信頼なデータ格納システムを実現している。

 以上のように、スパンションの強みであるフラッシュメモリ技術とマイコン/アナログ事業の技術がソフトウェアも含めて融合しており、事業統合による効果が早くも製品開発に結びついている。

ET2013でConnected Life Event Recorderを披露

 ここで紹介したオリジナルプラットフォーム/Connected Life Event Recorderは、2013年11月20〜22日にパシフィコ横浜(横浜市)で開催される「組込み総合技術展 Embedded Technology 2013」(ET2013)で公開される。ET2013のスパンションブースの展示テーマは、“Innovating for IoT”。業界をリードする組み込みメモリ技術と、富士通セミコンダクターから継承したマイコン/アナログ技術の融合を図る“新生スパンション”として、IoTに革新をもたらす技術/製品を一挙に紹介する。



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提供:Spansion Inc.(スパンション)
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年12月17日

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