何にでも変身できる魔法の部品“マイコン”。これから4回にわたり、マイコンとはどういうものなのかを、分かりやすく紹介していきます!!
ここのところ、世の中の技術が発達したおかげで本当に便利になってきたと感じることが多くあります。例えば、PCが1つあれば、インターネットショッピングで本やDVD、大手スーパーマーケットのサービスを使うと、トイレットペーパーからお総菜まで家の中にいたまま買えてしまいます。重たいお米やビールなども玄関まで持ってきてくれるので、子どももいて共働きの我が家では、本当にありがたい存在です。
スマートフォンもアプリ1つでゲーム機になったり、家計簿やスケジュール管理、音楽を聴いたり映画を見る、自動車に乗ればカーナビの代わりにもなってしまいます。
電子機器というと、ついそういった最新技術の方に目が向いてしまいがちですが、ふと日常生活に目を向けてみると、まだまだ身の回りにはたくさんの電化製品がありますよね。例えば、テレビやクーラー、洗濯機や炊飯器など日ごろからよく利用しているものもあります。
テレビやエアコンのリモコン、また炊飯器にも翌朝炊けるようにタイマーによる予約機能がついていたりします。どうやらそれらの機械の内部にコンピュータが入っていて、それで制御しているようだということは、もうお分かりだとは思いますが、では果たして、普段使っているPCやタブレットと同じものが入っていて、それで制御しているのでしょうか? そんなはずはありませんよね。もしテレビのリモコンの中にPCが使われているとしたら、リモコンだけで数万円もしてしまいますし、片手では持てないくらいの大きさや重さになってしまいます。
それらはどうやってコントロールしているのでしょうか? PCほどの性能はいらないし、リモコンにはリモコンだけの機能、炊飯器には炊飯器だけの機能があれば十分だけれど、もう少し小型で安価なコンピュータはないだろうか?
実はあります。その正体が「マイコン」と呼ばれるものなのです。
マイコンという名前はどこから来たのでしょうか? PCのWindowsを使っている人は「マイコンピュータ」の略と勘違いする人もいると思いますがちょっと違います。
マイコンとは、「マイクロコントローラ」もしくは「マイクロコンピュータ」の略語とされています。では「マイクロコントローラ」と「マイクロコンピュータ」は何が違うのでしょうか?
実は、明確な違いはないというのが答えなのです。
少し歴史をたどってみると、その昔、ICチップを使った電卓の開発が盛んに行われていたころ、電卓の機能ごとに異なる専用のICチップを使っていました。しかし、それでは効率が悪いということで、「インテル入ってる」のCMでおなじみインテルのテッド・ホフ氏が「ソフトウェア」という考えを用いることで、ソフトウェアを変えることにより同じICチップで計算だけでなくさまざまな機能を実現しようと、ROM(4001)、RAM(4002)、I/Oポート(4003)、演算装置(4004)という4個のIC(カッコ内はICの型番)で構成したシステムを作りました。このシステムをのちに「マイクロコンピュータ」として1971年に発表しました。今でいうパーソナルコンピュータ(PC)のイメージに近いですね。
一方、マイクロコントローラは直訳ですが「小さな・制御するもの」ということなので、こちらの方が現在のマイコンのイメージを適切に表しているのではないかと思います。
また電化製品以外では、自動車や新幹線、飛行機、さらには宇宙に行くロケットの中にまでマイコンは入っています!! 自動車の中には多いときは1台に100個以上のマイコンが使われているのです。
つまりマイコンとは、それぞれの機器の用途に応じた動作が可能な、小型で安価なIC、一言でいうと『何にでも変身できる魔法の部品』と言ってもいいかもしれません。
そんな魔法の部品「マイコン」を、これから4回にわたり一緒に学んでいきましょう!
最初に、そんな魔法の部品「マイコン」はどんな形をしているのでしょうか?
言葉で説明するより、まずはマイコンの写真をご覧ください。
いろいろな形がありますね。この形のことを「パッケージ」と呼び、その形によって呼び名が決まっています。ここでは代表的なマイコンの例として、LQFPパッケージ、QFNパッケージ、BGAパッケージの写真を掲載します。
それぞれのパッケージの名前の由来は
というように、まさに形を現した名前になっていますね。
中心の黒い部分を「モールド」と呼び、この中に半導体のチップが入っています。モールドの外側に生えているピンを「端子」と呼びます。この端子を通して電気信号のやりとりを行います。
ひと言で端子といっても、さまざまな種類の端子があります。端子の種類についてはまた次の機会にご説明いたします。
ちなみに、QFNパッケージ、BGAパッケージには端子が見えませんよね。なぜでしょうか?
QFNパッケージはモールドの外周に端子となる金属部があります。またBGAパッケージはモールドの裏側全面に、端子の代わりとなるハンダボールが並んでいる構造をしているのです。そのため、小さな外見にもかかわらず、多くのピンを持つことが可能となるのです。
こうすることで、小さな機器の中の狭いスペースにもマイコンを置くことができますね。
では、そんな魔法の部品「マイコン」の中身はどのようになっているのでしょうか?
一体どうやってさまざまな機能を実現しているのか、その仕組みを学んでいきましょう。
まず、マイコンの基本的な構成を示します。
マイコンの基本的な構成としては次の5つがあります。
1.演算装置:マイコンの頭脳となっていろいろな計算をする部分です。
2.RAM:演算装置が計算をするにあたって、計算途中の値を一時的に覚えておく場所(メモリと呼ぶ)です。マイコンの電源が切れてしまうと、RAMの中の値も消えてしまいます。
3.ROM:マイコンがどのような動作をするかを決める「プログラム」と呼ばれる命令の集まりが記憶されている場所です。マイコンの電源が切れてしまっても、内容は消えないようになっています。
4.タイマー:演算装置を動かすための一定間隔の信号を作っています。
5.I/Oポート:演算装置で計算した結果をマイコンの外に出したり、マイコンの外にあるセンサーやスイッチから、値を入力して演算装置に知らせることができます。
これらの機能が、モールドの中にあるICチップの中に入っていて、それぞれの機能がお互いに協力することで、やりたいことを実現してくれます。
次回はマイコンの種類(ARMってなに?)、マイコンを自在に操る方法などを学んでいきたいと思います。炊飯器からロケットにまで使われてる魔法の部品『マイコン』、あなたのアイデア次第で無限に広がります!!
※この記事は電波新聞社発行の電子工作マガジンの2013夏号に掲載されたものです。許可を得て転載しています。
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アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2014年4月5日
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