Cypress Semiconductor(サイプレス セミコンダクタ)/Spansion(スパンション)は、自動車のプライマリ電源用途に向けた最大出力5V/2.4Aの昇降圧型DC-DCコンバータIC「S6BP202Aシリーズ」を開発した。バッテリ電圧が出力電圧以下に降下しても、安定した出力を得ることができる。実装面積も従来製品に比べて約3割の削減を可能とした。
2015年3月にスパンションと経営統合した新生・サイプレスは、重複の少ない従来のサイプレス、スパンションの両社の強みを融合させ、幅広い組み込みシステム領域で事業拡大を図っている。その中でも、車載市場向けビジネスを重点事業の1つと位置付けて強化を継続的に行っていく方針だ。
新生・サイプレスの車載向け製品としては、「Traveoファミリ」に代表されるマイコン製品をはじめ、静電容量式タッチボタン/パネルコンとローラ、メモリなどがある。そして、2015年2月からは、ここに電源ICが加わった。
従来のスパンションは、2013年に富士通から継承した電源ICを中心としたアナログ半導体事業を主力事業の1つに据え、製品構成の充実化を図ってきた。その一環として、モバイル機器や通信機器分野で培った電源IC技術を車載向けに応用し、2015年2月に車載向け電源ICの第1弾製品「S6BP401A」を投入した。同製品は、「ADAS(先進運転支援システム)に必要とされる全ての電源を1チップで供給できる」をコンセプトにセカンダリ(2次)電源用の6チャンネルパワーマネジメントICで、民生機器分野で培ったマルチチャンネルの高集積型電源技術を車載向け電源へと応用した。
そして、新生・サイプレスとして、新たに開発したS6BP202Aシリーズは、プライマリ(1次)電源用の昇降圧型DC-DCコンバータIC。第1弾のS6BP401Aと合わせて、ADASやボディ制御領域のバッテリから負荷までのプライマリ、セカンダリの両電源をカバーできる体制が整ったことになる。
では、S6BP202Aシリーズを詳しく紹介していこう。
S6BP202Aシリーズは、入力電圧範囲が2.5〜42Vと広く、12/24Vの車載バッテリに直接接続することができる。出力電圧/最大出力電流によって3製品を用意した。5V/2.4Aの「S6BP202A」、5V/1.0Aの「S6BP201A」そして3.3V/2.4Aの「S6BP203A」である。出力精度も±1.5%と高い。ADASやボディ制御、インフォテインメントシステム、クラスタなどの用途向けだ。
S6BP202Aシリーズの最大の特徴は、昇降圧型のため電圧変動などに対する応答性が優れている点だ。例えば、自動車のエンジン始動時などで、セルモータを駆動した際にバッテリの出力電圧が一時的に大きく降下するコールドクランクなどが発生しても、安定した電圧を出力することができる。これまでのように、コールドクランク対策用として大型のキャパシタなど、外部に特別な部品/回路を設ける必要もない。
既に市場には昇降圧型の製品も存在するが、電圧変動に対する追従性が十分でない場合もあり、200mV近く変動する製品もあるという。一方でS6BP202Aシリーズは、競合品の5分の1程度の電圧変動に抑えるとともに、入力電圧の急激な上昇が生じるロードダンプなどに対しても安定した出力が得られる利点がある。
高密度実装に対応できるのも特長の1つだ。S6BP202Aシリーズは、外付け部品として小型のセラミックコンデンサなど9個で済み、実装面積も約220mm2と極めて小さくできる。他社の同等製品で構成すると、合計で16個の電子部品が必要となり、実装面積は310mm2程度を占めることもあるという。
S6BP202Aシリーズは、低負荷時の電力効率も高い。電圧制御方式として、PWM(パルス幅変調)方式とPFM(パルス周波数変調)方式を切り替えることにより、電力変換効率は90%を達成している。同社は、「最大電流では他社製品とほぼ同じ電力効率を示すが、100mA以下の軽負荷時における効率は他社製品と比べて10%も高い」としている。
自己消費電流が20μA(5V出力時)と、極めて小さいのも特長だ。シャットダウン時の消費電流は1μA以下である。S6BP202Aシリーズは生成した5Vを内部電源に使用するなどの工夫を行ったため、電流消費を抑えることができた。
スイッチング周波数は200kHz〜2.1MHzである。外部周波数(200〜400kHz)との同期動作も可能だ。これにより、AM帯のラジオ受信に影響を与えそうなノイズ源となる周波数を回避することができる。この他、高精度電圧監視の「Power Good」出力機能や、過電流/過熱などの保護機能などを搭載している。車載向けICの品質規格「AEC-Q100」にも準拠した。
パッケージは外形寸法が4.40×4.96×1.2mmの16端子HTSSOPで供給する。商用サンプル品の供給は2016年3月を予定している。
S6BP202Aシリーズは、同社として自動車のプライマリ電源用途に向けた初めての製品となるが、引き続き用途別に適したシリーズ製品を用意していく予定だ。例えば、より高性能なグラフィックLSI向けの電源IC製品を用意していく。また、48V系電源ラインに対応するプライマリ電源ICや、プライマリ電源ICとセカンダリ電源ICの機能を1パッケージに集積した統合型製品などを計画している。この統合型製品は、同社が新たな車載マイコンとして注力するARM Cortex-R5搭載のTraveoと組み合わせることで、最大のパフォーマンスを引き出すことができるように設計された製品である。2015年内にはラインアップできる見通しだ。
なお、サイプレスは2015年5月20〜22日にパシフィコ横浜(横浜市)で開催される「人とくるまのテクノロジー展」に出展し、S6BP202AシリーズやS6BP401Aの展示を行う。また、グラフィックス処理向けやモータ制御向け、車載ネットワーク制御向けの製品群がそろうToraveoファミリを使用した動作デモ展示や、統合によりポートフォリオが拡大した車載向けのメモリ製品などの展示も実施する予定だ。
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提供:Cypress Semiconductor(サイプレス)
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2015年6月19日
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