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小型/低消費電力FPGAに最新インタフェースIP群が加わり、新たなビジネスモデル創出へラティスセミコンダクター 社長 竹原茂昭氏

Lattice Semiconductorは、2015年3月にSilicon Imageを買収し、新体制となった。標準規格対応の最新インタフェースIPコアを実装した小型/低消費電力のFPGAを容易に実現できるなど、合併によるシナジー効果に期待がかかる。Lattice Semiconductorの日本法人であるラティスセミコンダクターの社長を務める竹原茂昭氏が、2016年の事業戦略などについて語った。

» 2016年01月12日 00時00分 公開
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新生ラティスセミコンが始動

――ラティスセミコンダクターにとって、2015年は激動の年でした。

竹原茂昭氏 買収に関する発表が2015年1月に行われ、3月には買収が完了した。6月にはLattice Semiconductorを存続会社として2社は合併した。これら一連の業務はかつて経験したことのないスピードで行われた。

 日本では、2015年3月の買収完了以降、両社の社員が一緒に活動を始めた。活動拠点を東京・大崎に集約し、組織の統合作業なども全て完了した。存続会社となったラティスセミコンダクターの日本法人は、合併に伴い合同会社から株式会社へ変更した。販売代理店は、マクニカのテクスターカンパニー、東京エレクトロンデバイス、マイクロテックの3社が行うこととなった。

――それぞれの強みや買収/合併の狙いなどを聞かせてください。

竹原氏 ラティスセミコンダクターのFPGA事業は、比較的小規模で低消費電力と小型パッケージにフォーカスして製品を展開してきた。用途もモバイル機器やウェアラブル機器への採用実績が多い。採用事例として代表的な用途は2つある。1つは、異なるインタフェース規格を接続可能にするブリッジチップとしての用途である。例えば「MIPI」から「Sub-LVDS」への変換などである。もう1つは待機状態にある端末を、必要に応じて起動させるウェイクアップトリガーチップとしての用途である。

 さらに、これからのFPGA事業においては、低消費電力と小型パッケージという特長に加えて、多様なインタフェースIPコアを用意して、FPGAに実装していけるかが製品の差異化につながる。そのためには、さまざまなインタフェースIPを保有するベンダーとの協業が必要となる。

 買収したシリコンイメージは、業界標準となるインタフェース規格の確立や、有線/無線インタフェースIP及びASSP(Application Specific Standard Product、特定用途向け標準IC)の開発/供給を行っている。例えば、デジタル家電製品向け通信インタフェース規格「HDMI(High-Definition Multimedia Interface)」の仕様を策定するファウンダの1社でもあり、関連のIPコアやASSPを開発し供給してきた。

多様なインタフェースIPコアを用意して、FPGAの差異化と用途拡大を狙う 出典:ラティスセミコンダクター

60GHz帯利用のワイヤレス接続にも対応

――他にも、モバイル機器向けビデオインタフェースやワイヤレスビデオ伝送規格のIPやICもありますね。

竹原氏 はい。モバイル機器向けの高速映像伝送用インタフェース規格「MHL(Mobile High-definition Link)」や、ミリ波帯(60GHz帯)の電波を利用して高速データ伝送を可能とする「WirelessHD」規格の仕様策定にも関わり、これらの規格に対応する製品を開発、販売している。

 当社のsuperMHLトランスミッタIC/レシーバICを用いると、USB Type-Cコネクタを介して、4k/60fpsビデオ信号とUSB 3.1 Gen1/Gen2データを同時に伝送することが可能だ。WirelessHD規格対応のデバイスには、60GHz帯RFトランシーバー、ベースバンドプロセッサ及びアンテナアレイを小型のシングルチップパッケージに集積した製品もある。

 これらのミリ波帯(60GHz帯)の製品は子会社であるサイビームで取り扱っており、WirelessHDの製品の他、ワイヤレスコネクタ技術「Snap」及び「WiGig」に加えて、「Backhaulに対応するトランスミッタIC/レシーバIC」を提供している。「Snap」は60GHz帯を利用したワイヤレス接続により、最大12Gビット/秒のスループットで、USB3.1のデータを伝送することができる。さらに、スマートフォンやタブレット端末、アクションカメラなどから物理的な接続部品を取り除くことができるため、防水性などに優れたシステムを実現することができる。

ラティスセミコンダクターのFPGAやインタフェースICが活用されている代表的な応用事例 出典:ラティスセミコンダクター

 合併後も、旧シリコンイメージが行ってきたビジネスは継続して行う。同時に、シリコンイメージが保有するインタフェースIPをFPGAで再利用したり、新たな標準規格のインタフェースIPを開発してFPGA向けIPコアとしてラインアップしたりする。これによって、FPGAの機能や用途はさらに広がり、事業拡大にもつながると確信している。

――新生ラティスセミコンダクターとして取り組むことは。

竹原氏 今後、多様なインタフェースIPを実装するためのプラットフォームを用意していく。HDMI規格に対応したより高速なデータ伝送を可能とするSerDes(Serializer/Deserializer)回路の開発なども予定している。

 シリコンイメージはこれまで、インタフェースIPコアのライセンスやASSPを提供し、民生機器分野で強みを発揮してきた。今後はこれらのASSPがIPコアの形態でFPGAに内蔵されることにより、ラティスセミコンダクターが得意としてきたインダストリ分野でも、画像処理システムなどの用途において需要を拡大していくことができる。

応用事例などをきちんと説明

――具体的にどのような活動を展開していきますか。

竹原氏 社内でもFPGAとビデオインタフェースICの会社が合併することに、いくらかの違和感はあった。しかし、いずれの製品も顧客に対する最初のアプローチで、応用事例などをきちんと説明し提案していくという部分は共通している。FPGA事業で器(チップ)だけ供給しても採用されることは難しく、製品の特長を生かす有効な活用方法や使用事例を提案してこそビジネスが成り立つ。ビデオインタフェースICのビジネスについても同様なことがいえる。最終的に機能を実現する手段がFPGAかASSPかの違いだけである。

 当社には、FPGAとビデオインタフェースの技術について、それぞれ豊富な知識と経験を持つ専門家がいる。さらに、旧シリコンイメージの担当者の中には、規格標準化の活動状況などを熟知している人材もいる。こうした専門家が中心となって、顧客に対する技術サポートを行っていく。

――日本市場における事業環境はいかがですか。

竹原氏 日本市場においてはほぼ計画通りの売上高を達成している。FPGA関連について、インダストリ向けは堅調に推移する。民生機器向けは、デジカメなどに採用されており需要は右肩上がりとなっている。インタフェースIC関連では、TV受像機全体から見るとメーカーは苦戦しているようだが、4k TV受像機に限れば需要は堅調である。

4k/8k TV向けなどに期待

――2016年の事業戦略をお聞かせください。

竹原氏 ビデオインタフェース関連では、各標準化団体で新たな規格策定が進んでおり、これらが新たに立ち上がってくる。これまでは新規格に準拠したASSPを開発して供給すればよかったが、これからはFPGA向けIPコアの開発やIPのライセンス販売にもビジネスを拡大していく。詳細については述べられないが、MHL規格はほぼ18カ月ごとに新しいリビジョンが発表されている。HDMLはフォーラムのメンバー数も多く、次期規格の策定にはもう少し時間がかかるようだ。

 さらに、8k放送や輝度を拡大して高画質を実現する「HDR(High Dynamic Range)」技術、22.2チャネル音響伝送技術など、画質/音質をさらに高める技術が次々と登場している。これらの規格に対応する新たなインタフェース技術もサポートしていかなければならない。新たな規格に対応したIPコアをいち早く開発/供給していくことが当社の使命でもある。

 2016年もFPGAと有線/無線インタフェースIPコア/ASSP事業および、インタフェース規格の標準規格活動と、3つの柱を中心に事業を展開していくことになる。

FPGA事業、有線/無線インタフェースIP/ASSP事業、及びインタフェース規格の標準規格活動を中心に事業を展開 出典:ラティスセミコンダクター

――日本市場における2016年の見通しはいかがですか。

竹原氏 2016年の売上高は前年に比べて10〜20%の伸びを計画している。インダストリ分野向けのFPGA事業をベースとして、コンシューマ向けFPGAなどに期待している。インタフェース関連のICでは、4k TV向けHDMI/MHLトランスミッタ/レシーバICに期待している。さらに、2016年10月に8k TVの試験放送が開始される。本格的に需要が拡大するのは2018年以降とみられるが、この分野でも当社のICが搭載されることになろう。この他、4k対応Blu-ray装置やHDR技術に対応するインタフェースICの需要にも期待している。

――FPGAの製品戦略に変化はありますか。

竹原氏 基本的にこれまでの戦略を継続していく。小型FPGAの「iCE40 ファミリ」がターゲットにしている主なアプリケーションはモバイル機器である。これらの用途では消費電力が小さく、小型パッケージの要求が強い。こうした要求はこれからも強まる見通しから、そのための技術革新を加速していく。その上で、最新の高速ビデオインタフェース規格などに対応する多様なインタフェースIPコアを実装していく。

 日本でも、製造する電子機器が少量多品種となり、設計者には開発期間や開発費の節減が求められるようになったため、FPGAが重要視されてきたと認識している。心臓部となる主要な回路はMCUやSoCで実現し、機能拡張を行う際に、コンパニオンチップとして小型FPGAを利用するケースが増加している。多様なインタフェース規格への柔軟な対応、仕様変更の容易さなどが評価されてきた。

 ウェイクアップトリガーチップとしての応用も期待している。電池動作のモバイル機器などでは、待ち受け状態時に電力消費が大きいアプリケーションプロセッサなどは停止させ、消費電力が極めて小さいFPGAのみをオン状態にしておく。音声コマンドなどをトリガーチップが認識したら、システム全体を起動させる仕組みである。このために当社のFPGAが採用されている。さまざまな用途に活用できる機能であり、その応用はさらに拡大しそうである。


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提供:ラティスセミコンダクター株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2016年2月11日

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