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NVIDIAが描くAI市場の「次章」、日本の活路はどこか:大山聡の業界スコープ(105)(2/3 ページ)

» 2026年10月15日 11時00分 公開

Mediatekを活用してフィジカルAI市場も牛耳ろうとするNVIDIA

 NVIDIAとMediaTekは2026年8月31日、AIインフラやローカルAIコンピューティング、自動車分野にわたる次世代AIコンピューティングプラットフォームの構築に向け、協業関係を強化したと発表した。協業拡大の一環として、NVIDIAはMediaTekが発行した転換社債に35億米ドルを投資した。

 この発表で、筆者はNVIDIAの狙いがようやく見えてきたような気がした。1個7万米ドルも13万米ドルもするGPUを、75%の粗利を取ってハイパースケーラーに売りまくる同社が、どうやってAIを普及させていくのか。コスト競争の厳しそうなフィジカルAI市場で、こんな高価で粗利率の高いGPUなど売れるものか。そう思っていたのである。

 Mediatekは、車載(Dimensity Auto)、ロボット、家電、IoT、テレビ向けにSoC事業を展開しており、NVIDIAが目指すフィジカルAI領域をほぼカバーしている。しかもコスト対応力に優れ、NVIDIAが直接入り込めないような市場でも大きな実績を挙げている。MediatekはNVIDIAが提供するAIプラットフォームを採用するにあたり、NVIDIAにライセンス料を払うことになるだろう。だが、Mediatekの顧客にしてみれば、比較的安価にNVIDIAが提供するAI環境を入手できる。「NVIDIAのAI代理店」として極めて力強い存在になるだろう。一方のNVIDIAにしてみれば、フィジカルAI市場におけるコスト競争に直接巻き込まれることなく、ライセンス料だけもらって自分たちのAIプラットフォームをフィジカルAI市場でも普及させることができる。実に「したたか」な戦略ではないだろうか。

NVIDIAの「AI代理店」はまだ増えるのか

 MediatekがNVIDIAの「AI代理店」として成功を収めれば、NVIDIAのAIプラットフォームはクラウド側でもエッジ側でも普及することになる。NVIDIAは「AIの業界標準」に限りなく近づくことが予想される。NVIDIAブランドの半導体は売れなくてもライセンス料は入ってくるし、「AIの業界標準」の象徴として業界を牛耳ることになるだろう。「NVIDIAとの協業の道を強化しよう」と考えるデバイスメーカーもいるかもしれない。

 Broadcomはどうだろうか。NVIDIAとはデータセンター向けソリューションにおいてお互いに補完関係にあり、競合はしていない。同様の理由で、MarvellもNVIDIAとは競合しておらず、これらの企業がNVIDIAとの補完関係を強化する目的で「AI代理店」になる可能性はあるかもしれない。またAMDがNVIDIAと強調することで、Intelへの対抗力を強めるなど、NVIDIAの「求心力」が業界の構図に大きな変化をもたらす可能性はあり得るのではないだろうか。

今後のAIの進化、普及について

 Open AIがChatGPTを一般公開したのが2022年11月。当初は「間違いだらけのAI」として話題を呼んだが、質問の仕方を変えると回答の精度が上がってくるなど、初めて一般に公開された「生成AI」は注目を集め、あっという間に世界中に普及した。この間、ハイパースケーラー各社はChat GPTの使われ方や評判、影響などを観察しながら、自社の生成AI開発に注力し、NVIDIAのGPU争奪戦を繰り広げていたことになる。NVIDIAの業績が急上昇したのは、ChatGPT一般公開から約半年後の2023年後半ごろで、現在に至るまで、AIの進化および普及はNVIDIAのもくろみ通りに推移していることだろう。だからといって、今後もNVIDIAのもくろみ通りにAI業界が推移するかどうかは分からない。ただ、NVIDIAがAI業界の中心にいることは間違いなく、Huangs氏のコメントにも耳を傾ける必要はあるだろう。

 昨今ではAIの進化に潜むリスクにも注意が払われるようになったが、開発を止める、ブレーキをかけることは難しく、AIは確実に進化と普及を続けることになる。

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