Nitta氏は「Emergence AIは、ファブレス領域から事業を開始した。ファブレスメーカーは製品を設計するが、製造プロセスを直接管理しているわけではない。機能試験の結果やパラメトリック歩留まり、全体の歩留まりなど、半導体チップそのものに関するデータを保有しているが、ファブ内部で何が起きているかについてのデータは保有していない」と述べる。
「データを分析することで、歩留まりの異常変動がファブの製造プロセス、設計、テストのいずれに起因するのかを特定できる。ウエハーテストや最終テストで問題が生じることは珍しくない。プローブカードが適切に接触せず、再テストが必要になる場合もある」(Nitta氏)
Nitta氏によると、AIエージェントは、このようなデータを大規模に分析し、複数の製品に共通するパターンを記憶できる。例えば、1500製品のうち30%で、リングオシレーターブロックに共通する不具合パターンが見られることを検出し、そのブロックの再設計を提案するといった使い方が考えられる。同氏は「これは、人間の認知能力の限界を超える、AIエージェントならではの処理だ」と述べる。
「当社の特定分野に特化したAIエージェントは、根本原因の分析も行う。デバイスの物理特性に関する知識を活用し、見せかけの相関関係と実際の原因を区別する必要がある」(Nitta氏)
既存のLLMやGPTと競合するのかという質問に対し、同氏は「直接競合するとは考えていない。われわれの考えは、LLMは必要だが、それだけでは十分ではないということだ」と回答した。LLMをベースとするAIは有用だが、ミッションクリティカルな問題に対応するには不十分だとも指摘した。
「Emergence AIは、先進パッケージング分野にも取り組み始めている。多くのパッケージング技術は現在も開発中なので、プロセスの中で何が間違っていたのかということよりも、そもそもの根本的原因の方が問題となる」(Nitta氏)
同氏は一例として、線膨張係数(CTE)のミスマッチを挙げ、「これは物理的な問題としての側面が強い」と指摘する。
「例えばAIエージェントは、有限要素法やマルチスケールの物理シミュレーションを実行し、ライナー材料と銅が適合しないことや、ガラス基板と銅はCTEのミスマッチが大きいことなどのために、熱サイクルでの破損の原因になるということを示す必要がある。ビアを再設計したり、アスペクト比を変更する他、ライナーの厚みを増やすことなどによって、プロセスウィンドウはより成熟していく」(Nitta氏)
同氏によるとEmergence AIは現在、複数の先進パッケージングメーカーとの間で積極的に話し合いを進めていて、基本合意書(MOU)の締結へとつながる可能性がある。今後2〜3カ月の間に、こうした協業に関する発表をいくつか行う見通しだという。一方、半導体製造装置メーカーとの間では、具体的な協業案件はないという。
同氏は「ファブレス顧客の中には、ファブレス部分とファブの両方を保有している垂直統合メーカー(IDM)もある。ファブレス分野における取り組みから着手し、現在ではIDMから、ファブでの協業に関する要望もある。ファブ関連の取り組みは、今もまだごく初期の段階にある」と語った。
ファブレス顧客の中には業界最大手クラスの企業も含まれるとしながら、Nitta氏は企業名は明かさなかった。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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