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協業や企画力強化で省電力/小型/低ノイズ電源ICの価値の最大化に挑むトレックストレックス セミコンダクター 執行役員 山本智晴氏/開発本部 大川智氏

電源ICメーカーであるトレックス セミコンダクターは、省電力、小型、低ノイズといった特長を持つ高付加価値電源ICのラインアップを中高耐圧領域などへと広げている。同時に、ユニークな電源周辺デバイスの開発やパートナー企業との協業も積極的に行いシステムレベルのソリューションを構築し、電源ICの価値を最大化する取り組みにも着手。2021年度から5カ年の中期経営計画をスタートさせ、さらなる事業成長に挑む同社執行役員で製品企画 海外統括本部長を務める山本智晴氏と開発本部製品開発部XCL製品グループ長の大川智氏に、技術開発/製品開発戦略について聞いた。

» 2021年08月24日 10時00分 公開
[PR/EE Times Japan]
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「脱炭素社会」の実現に貢献するグローバル企業を目指す

――今年度、2021年度(2022年3月期)から5カ年の中期経営計画を策定されました。計画の概要、狙いをお聞かせください。

執行役員 製品企画 海外統括本部長 山本智晴氏

山本智晴氏 トレックス・セミコンダクターは省電力、小型、低ノイズの電源ICを強みに事業を展開してきた。また子会社で半導体受託製造事業を展開するフェニテックセミコンダクターは、パワー半導体を強みにしてきた。

 今回の中期経営計画では、トレックス、フェニテックそれぞれの強みを生かし、世界的なトレンドである「脱炭素社会」の実現に貢献するグローバル企業を目指すことを理念にしている。

 数値目標としては、最終年度である2025年度にフェニテックを含むトレックスグループ連結売上高として、2020年度比約1.5倍に相当する350億円の達成を掲げている。

トレックスグループの概要

――中期経営計画で掲げる理念、目標達成に向けて、重要なこと、不可欠なことはありますか。

山本氏 トレックスの強みを生かした“トレックスらしさ”をより多くの顧客に、価値として認識してもらうことが大切だと考えている。

 顧客の要求に応える省電力、小型、低ノイズといった特長あるトレックス独自の電源ICを提供していくことはもちろんのことだが、トレックスの電源ICを使うことで省電力、小型、低ノイズというさまざまな価値をより実感できるようにしていく必要がある。そのために、電源ICの提供だけでなく、周辺デバイスを含めたシステム提案、ソリューション提案を強化していくことが、今回の中期経営計画の1つのテーマ。トレックスは電源ICメーカーであり、全ての周辺部品を1社で提供することは不可能だ。そこでパートナー企業との協業を積極的に行い、システム提案、ソリューション提案の幅を広げていく。

次世代電池+電源ICなどソリューションを拡大

――パートナー企業との協業の取り組みについて教えてください。

山本氏 元々、モバイル機器向けチップセットメーカーなどと協業して、多くの評価用ボードに電源ICが採用されてきた実績がある。現在は、チップセットメーカーとの協業に加えて、電池メーカーとの協業を進めている。その一例が、半固体電池と呼ばれる次世代型リチウムイオン電池「EnerCera」を展開する日本ガイシとの協業がある。EnerCeraと、トレックスのバッテリーチャージャーやDC/DCコンバーターなどを組み合わせたソリューションを構築し、共同での拡販を実施している。現在、複数の全固体電池メーカーとも協業を推進しており、次世代電池+充電/電源ICソリューションを提供していく。

日本ガイシとの協業イメージ

――ソリューションの核になる、トレックスらしい独自製品の開発面で取り組んでいることはありますか?

山本氏 市場動向、顧客ニーズに合致した製品を、よりタイムリーに提供できるよう、中期経営計画に先立って、2020年7月に組織体制を大きく変更し、製品企画部門を強化した。5年、10年先に市場で求められる電源ICはどのようなものかを製品企画部門で検討し、ロードマップとして定義するようにした。そして、そのマーケット志向のロードマップに沿って、開発部門が要素技術を構築し製品をタイムリーに開発、提供していく方針だ。

中高耐圧対応、高精度出力、小型パッケージといった要素技術を開発

――現時点で、開発に注力されている要素技術とはどのようなものでしょうか。

開発本部 製品開発部 XCL製品グループ長 大川智氏

大川智氏 近年、継続して事業拡大に注力してきた車載機器市場、産業機器市場のニーズにより多く応えるため、40V耐圧など中高耐圧領域での要素技術開発に重点を置いている。現状、中高耐圧領域での基本的な要素技術は構築できた段階。これからは、低耐圧領域で培った省電力、小型化、低ノイズといったトレックスらしい技術を高耐圧/大電流の領域にも対応させるための要素技術を構築していくイメージ。パッケージについても、中高耐圧領域向けの小型パッケージの開発を進めている。

 先端プロセスを使用した高性能プロセッサやFPGA、マイコンなどに向けて低電圧出力電源ICについては、大電流かつ高精度を実現するための要素技術開発も実施している。例えば、トレックス独自の高速過渡応答を実現するスイッチング制御技術「HiSATーCOT」の大電流対応がある。これまでは、低耐圧製品の対応にとどまったが、今後1〜2年以内に中高耐圧製品にも対応できるように要素技術を構築している。

――製品展開領域を中高耐圧へと広げるためには開発リソースの増強が必要になります。

山本氏 順次、開発リソースの増強を行っている。その一貫として、2019年にインドのミックスドシグナルICメーカーであるCirel Systemsと資本提携を結んだ。Cirelとは共同拡販などの連携とともに、トレックスの設計方法、設計思想をCirelに提供してトレックスが企画した製品をCirelで開発するといった連携も進めている。近くCirelで開発した製品がリリースできる見込みであり、新製品の開発速度はよりスピードアップできるだろう。

コイル一体型DC/DCなど高付加価値製品群を拡充

――今後の製品展開方針を教えてください。

大川氏 継続してDC/DCコンバーター製品、特にトレックスのDC/DCコンバーター製品のフラグシップであるコイル一体型DC/DCコンバーター「micro DC/DC」のラインアップを強化する。先述した中高耐圧領域の要素技術を導入し、中高耐対応の「micro DC/DC」を充実させていく。

 2020年には、「クールポスト」という放熱性に優れ大型コイルを搭載しやすいパッケージを採用した36V動作600mAのmicro DC/DC「XCL230/XCL231シリーズ」を投入した。2021年内には、これを1.5Aまでの電流に対応した製品シリーズを投入できる見込み。その後も高電圧、大電流に対応する製品を投入していく。

さまざまなパッケージがそろうコイル一体型DC/DCコンバーター「micro DC/DC」。最新パッケージであるクールポストタイプはコイルの熱を基板に逃がしやすい構造で、大型コイルを一体化しやすく、高耐圧/大電流対応に向く

――DC/DCコンバーター以外の製品展開方針についても教えてください。

大川氏 DC/DCコンバーターと合わせて、ソリューションとして価値を提供するためにDC/DCコンバーター周辺ICも積極的に開発していく。ただ、周辺ICといっても広いので、トレックスらしさ、独自性を発揮できる領域や特定アプリケーションに絞って、製品開発を進めていく。

――トレックスらしさ、独自性の強い周辺ICとはどのようなものですか?

大川氏 直近の例として、ロードスイッチIC「XC8110/XC8111シリーズ」がある。IoTデバイスなどでは、USB給電などの電源と、バッテリーという2系統の電源を持ち、その2つの系統の電源をロードスイッチICで切り替える。同時に、それぞれの電源系統に他方の電源の電力が逆流することを防ぐため、ショットキーバリアダイオードが必要になる。そうした中で、XC8110/XC8111シリーズは、一般的なダイオードに存在し電力損失の一因となる順方向電圧(VF)がほぼゼロに等しい“理想ダイオード機能”を備え、逆流防止用ダイオードを省略できる上に、損失も低減できる製品になっている。この理想ダイオード機能は、これまでLDOレギュレーターなどで培ってきた技術を応用して実現した。このように、これまで培ってきた技術をベースに、高い付加価値を提供できる領域を見極め、周辺ICを提供していく。

理想ダイオード機能搭載ロードスイッチIC「XC8110/XC8111シリーズ」の概要

――トレックスグループとして、電源ICと並ぶ強みであるパワー半導体についての取り組みについて教えてください。

山本氏 パワー半導体については、子会社のフェニテックが中心に取り組みを進め、従来のIGBTに加え、次世代パワー半導体材料であるSiC(炭化ケイ素)を用いたショットキーバリアダイオードのサンプル出荷を開始するなどしている。さらに、SiC同様次世代パワー半導体材料として注目されている酸化ガリウムを用いたパワー半導体技術を要するノベルクリスタルテクノロジーと資本業務提携を結び、酸化ガリウムパワー半導体の開発にも着手している。まだ検討段階ではあるが、パッケージングやモジュール化の面で独自性を発揮できるようであれば、トレックス・セミコンダクターとしてもSiCや酸化ガリウムパワーデバイス製品を開発、販売していきたいと考えている。


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提供:トレックス・セミコンダクター株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2021年9月24日



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