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基本性能と応用技術を追求し「開発の面倒」を軽減――日清紡マイクロデバイス日清紡マイクロデバイス 常務執行役員 開発本部長 大久保秀氏

日清紡マイクロデバイスは、新日本無線とリコー電子デバイスの経営統合で得た豊富な技術資産を基盤にして「電子機器開発の面倒を軽減すること」を目指した技術、製品を開発。「ノイズ対策の設計負担を軽減」「部品の使いやすさの向上」など6つのテーマで新製品を投入している。同社常務執行役員で開発本部長を務める大久保秀氏に開発方針と足元の開発成果について聞いた。

» 2024年08月20日 10時00分 公開
[PR/EE Times Japan]
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豊富な技術資産を活用し、6つのテーマで開発の面倒を軽減

――日清紡マイクロデバイスの技術、製品開発方針についてお聞かせください。

大久保秀氏 省人化に向けた超スマート社会の実現や省資源を目指したグリーン社会を目指す動きといった社会の変化に対応し、変化を先導すると同時に電子機器開発の面倒を軽減する技術、製品を提供することに主眼を置いている。電子機器の設計開発は難易度が高まり、煩わしさが増している。当社の技術、製品でそうした煩わしさ、面倒を少しでも軽減したい。

 日清紡マイクロデバイスは2022年に新日本無線とリコー電子デバイスが経営統合して誕生した。統合により、多くの技術資産を保有することになった。売り上げ規模は1000億円に満たない半導体メーカーだが、「小さいを強みに」して人と技術の“融合”を進め、多くの技術資産を有効活用した技術と製品の開発が実現しつつある。

――電子機器開発の面倒を軽減する技術、製品とはどのようなものですか。

大久保氏 面倒の軽減のために、6つの開発テーマを掲げて取り組んでいる。「バッテリーの長時間駆動を実現」「ノイズ対策の設計負担を軽減」「実装面積の制約を軽減」「部品選定にかかる手間を軽減」「部品の使いやすさの向上」「メンテナンスの手間を軽減」だ。

 これら6つの開発テーマについて、「電源ICやオペアンプなどの製品単品の基本性能を追求する」「複数の技術を組み合わせた応用技術を追求する」という2つのアプローチで開発を進めている。

6つの開発テーマとそれぞれの開発成果例[クリックで拡大] 提供:日清紡マイクロデバイス

基本性能を磨き、使いやすさを向上

――直近の開発成果について幾つかご紹介ください。

大久保氏 バッテリーの長時間動作を実現する製品として、1A出力降圧DC/DCコンバータ「NC2650」と0.3A出力昇圧DC/DCコンバータ「NC4650」を間もなく製品化する。両製品は、新規プロセスの適用による特性向上で高性能CPUの処理や長距離無線通信に対応する大電流化の実現と低消費電力化を両立させた点が大きな特徴だ。新しいコンパレータ回路を用いることで、これまで変換効率が20〜70%程度だった0.1mA以下の低負荷時の変換効率を90%近くに高めることに成功した。低負荷の待機時間が長いIoT機器などのバッテリー駆動時間を大幅に延長できる。

 部品の使いやすさの向上を目指した製品としては、オペアンプ「NL3002」がある。逐次比較(SAR)型ADコンバータ(ADC)を使った回路では、ADCを正常に動作させるためにADC前段の入力バッファー回路にフィルターとして配置するコンデンサーの容量を大きくする方法が最も手っ取り早い。ただ、コンデンサーよりも前段に位置するオペアンプにとってコンデンサーの容量増は負荷容量増になり、発振の恐れが高まる。そのためオペアンプが発振しない程度までしかコンデンサー容量を大きくできず、ADC回路設計に大きな制約を与えていた。

 NL3002は、「Enhanced C-Drive」と呼ぶ独自回路技術によって1000pFという高負荷容量でも発振しないという発振耐性を実現した。これによってオペアンプの発振を気にせずに大容量のコンデンサーを採用できるので、ADC入力バッファー回路の設計工数が大幅に短縮する。

NL3002の特長[クリックで拡大] 提供:日清紡マイクロデバイス

 電波ノイズ対策の設計負担軽減に向けては、オペアンプ「NJM2902B」や電源IC「R1526シリーズ」といった高EMC設計を施した製品シリーズを拡充しており、車載用途を中心に採用が拡大している。

より良いソリューションに向けて磨き続ける基本性能

――いずれも基本性能を追求した製品ですね。

大久保氏 モジュールのような複数の技術を組み合わせたソリューションのニーズが高まっている。そうしたソリューションの良しあしを左右するのが基本性能であり、基本性能の追求は重要だと考えている。

 高精度オペアンプでは補正回路などを搭載した間欠動作のゼロドリフト品が主流だ。リニアのオペアンプでの特性を追求することがゼロドリフト品などの性能向上にもつながる。新製品のオペアンプ「NL6002」は耐圧7V以下の低消費リニア品として温度ドリフト性能0.9μV/℃(max)を実現している。

 オペアンプや電源IC、AFEと光デバイスなどの主力製品分野を中心に、業界トップクラスの基本性能を常に追求する。

“回路、デバイス、実装”の三位一体で実現

――優れた基本性能の技術、製品をベースにした応用製品の開発成果についても教えてください。

大久保氏 一つの製品例として「NJU7890」がある。AEC-Q100対応を含め車載用途に磨きをかけた新製品を開発しているが、これらの製品は電気自動車(EV)の高圧監視用で、外付けのアッテネータなどを用いずに1000Vまでの高圧ノードを直接監視できるユニークなASSP製品である。EVのバッテリーとパワートレインはエネルギー効率を高めるために高電圧化が進んでおり、高電圧になるほど安全を確保するための電圧監視が重要になる。ただ、800〜1000Vといった高電圧を検知するにはオペアンプなどとディスクリート部品を組み合わせる必要があり、その部品点数は180点にも及ぶ。NJU7890なら1000Vまでの電圧を直接監視できるので、周辺部品を含めても18点で済む。高電圧監視回路を大幅に小型化できる。

 NJU7890はオペアンプなどの回路技術と開発していた高電圧プロセス、高度なパッケージング技術の“回路、デバイス、実装”が三位一体で実現した製品だ。ディスクリートで構成して苦労していた回路を「当社の技術でIC化すれば開発の面倒を解消できるのではないか」と着目した点でも、NJU7890は理想的な開発成果だ。

NJU7890の概要。パッケージング技術を駆使し、高電圧部と低電圧部を分離して1000V対応の十分な沿面距離を確保している[クリックで拡大] 提供:日清紡マイクロデバイス

 他にも、RF/DC整流器とDC/DCコンバータを組み合わせたワイヤレス給電(WPT)ソリューションや超音波センシング技術をベースにした予知保全用センサーモジュール「NM2101」などの応用製品も投入している。今後もコアになる基本性能を磨き続けて、コアを組み合わせて、開発の面倒を軽減する製品を提供する。


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提供:日清紡マイクロデバイス株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2024年9月20日

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