メーカー都合によって生産が終了した「EOL(End of Life)品」を供給するRochester Electronics。コロナ禍での半導体の供給難を経て調達に対する意識が変わりつつある中、同社は「戦略的なサプライチェーン管理」の提案に力を入れている。完成品在庫だけでなく再設計/再生産も含めて継続供給ソリューションを提案し、中長期的な視点での調達戦略を支援する。日本オフィス代表の藤川博之氏は、「当社が最も強みを発揮できる部分だ」と意気込む。
――足元および2024年後半の景況感をお聞かせください。
藤川博之氏 2023年から2024年上半期にかけて厳しい市況が続いている。現行品は過剰供給の状態で顧客の買い控えも継続しているが、やや風向きが変わってきた。回復基調に向かう兆しが見られ、2024年下半期から2025年にかけて成長路線に戻るという感触を得ている。
――製造中止品(EOL品)の需要についてはいかがでしょうか。
藤川氏 製造中止品(EOL品)は引き続き需要が高まっている。背景として、半導体メーカーによる戦略的な製造中止の増加やエレクトロニクス商社のM&Aによる販売チャネルへの影響などが挙げられる。EOL品の早期手配の必要性が高まり、当社の顧客は調達戦略を先鋭化させている。
コロナ禍のサプライチェーンの混乱から調達に対する意識が変わり、当社への期待値も上がっている。EOL品についてより早い段階で手を打ちたいと考える顧客が増えてきた。部品の販売チャネルを一元化したいというニーズも多く、取り扱い製品/メーカーの拡張が常に求められている。
――国内外の半導体サプライチェーンの現状についてお聞かせください。
藤川氏 国際的なリスクや問題への対応に日々迫られているものの、コロナ禍に比べるとずいぶん安定してきた。ただ、先行きが不透明な状況は変わらないため、半導体メーカーはわれわれのような外部パートナーと提携しながらBCP(事業継続計画)施策を強化する傾向にある。パートナーシップの重要性はこれまで以上に高まっている。
――この1年で、主にどういったメーカーとパートナーシップを契約しましたか。
藤川氏 香港Intelligent Memoryおよびスイスu-bloxと新たにパートナーシップを締結、また米Semtechとの協業を開始した。ルネサス エレクトロニクスやAnalog Devices、NXP Semiconductorsなどの既存のパートナーとも継続供給の製品群を拡張したり再生産ソリューションを提供したりして、パートナーシップを積極的に拡大している。2023年1月に契約を締結した東芝デバイス&ストレージについては製品移管が順調に進み、在庫規模は約2900万個に達した。2024年後半から販売促進を強化する。
――継続供給に対する意識が高まる中、Rochester Electronics(ロチェスターエレクトロニクス)はどのような戦略を進めていきますか。
藤川氏 今後は「戦略的なサプライチェーン管理」を実現するためのソリューション提案に力を入れる。セーフティーストックしての完成品在庫だけでなく、再設計/再生産の提案や移管を予定している在庫の先行手配も含めた継続供給ソリューションを提案し、中長期的な視点での調達戦略を支援する。コロナ禍のサプライチェーンの混乱によって、製造業は半導体の偽造品の流通や販売チャネルの開拓・変更によるコスト増など、多くの問題に直面した。サプライチェーンに予期せぬ問題が発生したとしても、戦略的なサプライチェーン管理のためのソリューションを提案することで従来よりも上位の層で顧客が対策できるようにサポートする。これこそ、当社の強みを最も発揮できるところではないか。
――具体的にはどのような施策を行っていきますか。
藤川氏 まずはコロナ禍以降、物流センターや倉庫を拡大してきた。倉庫のレイアウトやオペレーションを最適化し、1日当たりの出荷量や納入量を改善した。シンガポールや米国のオフィスの拡張や移転に加え、イタリアのミラノにオフィスを開設した。
グローバルにおいてシステムを刷新して受発注業務を効率化した。日本では、これによって生まれたリソースで、技術営業を含めた顧客対応を強化している。顧客とのコミュニケーションの手段や製品の販売手法も選択肢を増やして柔軟性を持たせ、多様なニーズに応えられる体制を整えた。これまで米国本社にしかなかった、サプライヤーとのオペレーションを行う部署を日本にも設けてきめ細かく対応できるようにした。
代替品の提案にも注力する。ここは面白い分野で、「システム認証の再取得にかかるコストを抑えるために、認証済みである旧世代の半導体を使用したい」というニーズが根強く存在する。このような“旧世代への置き換え”提案へもアプローチする。
――Rochester Electronicsは、オリジナルメーカー認定の下、再生産も行っています。再生産ソリューションについての戦略をお聞かせください。
藤川氏 再生産ではわれわれもOSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)に委託するケースがあるが、近年は半導体パッケージを自社で製造できるように生産ラインの構築に投資している。OSAT側で製造中止になっているパッケージがあり、それをわれわれで継続供給するためだ。OSATで製造中止になったセラミックパッケージやBGA、QFNなどの樹脂パッケージも内製し始めた。後工程でのパッケージの製造中止が増加していることもあり、この分野の需要が非常に高くなっている。再生産ビジネスについては、こうした後工程のEOL対応を含めて認知度の向上も図りながら施策を強力に推進する。
――半導体の模造品問題はいかがでしょうか。
藤川氏 一時期に比べるとだいぶ落ち着いてきたが、残念ながら半導体の偽造品は完全にはなくならない。コロナ禍で出回っていたほど悪質なレベルの偽造品は見掛けなくなったが、今後もウェビナーなどを介して偽造品問題に関する啓蒙(けいもう)活動を続ける。
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提供:Rochester Electronics, Ltd.
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2024年9月20日