複雑さを増すサプライチェーン 経営層とのコミュニケーションの課題も：一部ではAI導入コストが逆風に（1/2 ページ）

[EE Times]

　グローバルサプライチェーンは現在、コミュニケーション上の課題や在庫レベルの変化、関税、新技術の登場などによって複雑な状況にあり、グローバルな製造戦略や在庫、貿易関係などを根本的に再検討する必要に迫られている。各種調査でこのような動きがフォーカスされ、さまざまな分野の企業にとっての潜在的な逆風やチャンスが明らかにされている。

経営幹部とサプライチェーンリーダーの認識のズレが明らかに

　米国の市場調査会社Wakefield Researchが行った調査によると、米国企業の経営幹部とサプライチェーンリーダーとの間には、重大なコミュニケーションギャップが存在することが明らかになったという。

　この調査は、経営幹部とサプライチェーンリーダーそれぞれ100人に行ったアンケートによるものだ。その結果には、ビジネス成長をけん引していく上でのサプライチェーンの戦略的な重要性について、それぞれの見解の違いが表れている。

　両グループの大半の人々が、サプライチェーンが成長の原動力であると認識しているが、この認識に関しては、サプライチェーンリーダー（85％）と経営幹部（70％）の間で15ポイントの顕著なギャップがある。こうした相違によって、サプライチェーンへの投資の優先順位が下げられるなどの問題が生じる可能性がある。一方で、経営幹部の約半数（46％）は人材配置（41％）や投資（38％）の計画的増加に伴って、今後1年間で経営幹部内でサプライチェーン業務の可視性が高まると予測している。

　さらにこの調査では、両グループの見解が一致する分野が特定されている。経営幹部とサプライチェーンリーダーはいずれも、デジタルサプライチェーン同期の主なメリットとして、サプライヤーの信頼性向上（経営幹部の54％／サプライチェーンリーダーの53％）や、成長／収益の拡大（同51％／53％）、納期順守率の向上（同48％／49％）などを認識している。

　しかし、リスクの優先順位は異なる。経営幹部が最も懸念しているのは、生産中断の増加（53％）と、市場変動への対応の遅れ（43％）だ。一方でサプライチェーンリーダーは、在庫コストの上昇、企業イメージの悪化、収益減少（それぞれ53％）の他、業務イノベーションの遅れに伴う規制順守リスク（50％）を重視している。

　重大な発見として浮き彫りになったのが、コミュニケーションの断絶だ。経営幹部の99％とサプライチェーンリーダーの100％が「サプライチェーンリーダーは自らの価値を企業側に明確に伝えることに苦労している」という見解で一致している。さらに、両グループの大多数（経営幹部の55％／サプライチェーンリーダーの61％）が「コミュニケーションを改善する責任は、サプライチェーン側にある」と考えているという。

　両グループの最大の関心事も異なっている。サプライチェーンリーダーは主に、持続可能性目標のバランスを取ること（41％）や、コンプライアンス／規制変更への対応（41％）、出荷能力を犠牲にせずにコストを削減すること（37％）などに焦点を合わせている。一方、経営幹部が最も懸念しているのは、材料不足や遅延による混乱の管理（38％）と、持続可能性と業務効率のバランス（37％）である。

半導体業界は過剰在庫から脱却

　電子部品ディストリビューター大手のFusion Worldwideは「State of the Industry Report 2025: From Excess to Equilibrium（業界の現状レポート2025：過剰から均衡へ）」を発表した。同報告書は電子部品のサプライチェーンの現在および将来の動向を分析し、半導体業界が過剰在庫からよりバランスの取れた需要主導型市場へと移行することを強調している。

　同レポートは、市場活動の回復の指標としてリードタイムの増加を挙げ、主要セクター全体にわたる生産と購買の回復を示唆している。また、企業がサプライチェーンを最適化して将来の混乱に備えるための調達と在庫管理の戦略についても概説している。さらに、地政学的な変化、特に米中貿易摩擦が調達戦略にどのような影響を及ぼすかについても検証している。