早稲田大学は、約0.6Vの低い駆動電圧で最大180Gビット/秒の高速光通信を実現できる小型の「光送信器」を開発した。レーザーを安定動作させるための冷却制御が不要で、AIデータセンター向け光回路の高集積化や小型化/低消費電力化につながる。
早稲田大学理工学術院の北智洋教授らによる研究グループは2026年10月、約0.6Vの低い駆動電圧で最大180Gビット/秒の高速光通信を実現できる小型の「光送信器」を開発したと発表した。レーザーを安定動作させるための冷却制御が不要で、AIデータセンター向け光回路の高集積化や小型化/低消費電力化が可能となる。
AIデータセンターでは、大容量のデータを高速かつ低消費電力で伝送するために、光通信技術が不可欠となっている。このため、個別に用意した波長可変レーザーと光変調器を組み合わせ、1本の光ファイバーに波長が異なる光を多数通す「波長多重通信」が用いられている。一方で通信容量の増大に伴い、使用する部品のさらなる高集積化や低消費電力化などの要求が高まってきた。
研究グループは今回、広範囲に波長を変えることができる「シリコンフォトニクス波長可変レーザー」と、電気信号を光信号に高速変換できる薄膜LN(ニオブ酸リチウム)光変調器を一体化した光送信器を開発した。両デバイスの波長特性をあらかじめ協調して設計する手法も開発した。この手法を採用したことで、両デバイスを直接つないでも安定して動作させることに成功した。
開発した光送信器はCバンド全域を含む1529.1〜1595.8nmの約67nmにわたって波長を変えることができるという。波長可変レーザー上には2個のマイクロヒーターを設置。このヒーターに加える電力を調整すれば、レーザーから出力される光の波長を高精度に制御できることを確認した。レーザーを一定温度に保つための冷却制御を行わなくても、安定して動作することも確認した。
実験の結果、光変調器を電圧約0.6Vの電気信号で駆動し、最大180Gビット/秒という高速光信号を生成することに成功した。一般的な3V駆動と比べると、同じ電気回路条件では駆動に必要な電力を理論上約25分の1に低減できる。光信号を切り替える速度は180Gbaudで、現在広く普及している400G級のデータセンター間通信で用いられる約60Gbaudに比べ、約3倍となった。
さらに、180Gビット/秒で動作させた時のアイパターンを観測したところ、明瞭な目の開きを確認し、高速動作に対応できることを実証した。高い線形性を備えた薄膜LN光変調器を採用したことで、信号波形のひずみを補正するDSP処理を用いずに、約0.6Vの低電圧駆動で180Gビット/秒の通信を実現した。
研究グループは今後、「より速い通信速度での動作検証」「光変調器や接続部分での光損失低減」「さらなる省電力化」などに取り組む予定だ。
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