早稲田大学や物質・材料研究機構(NIMS)、日本原子力研究開発機構、東京大学および、名古屋大学の研究グループは、自然界には存在しない構造を持った2次元酸化鉄を作製することに成功した。
早稲田大学や物質・材料研究機構(NIMS)、日本原子力研究開発機構、東京大学および、名古屋大学の研究グループは2026年4月、自然界には存在しない構造を持った2次元酸化鉄を作製することに成功したと発表した。さまざまな遷移金属酸化物をグラフェン/炭化ケイ素(SiC)界面で2次元化できれば、より高温での超伝導や巨大磁気抵抗効果の発現が期待できるという。
遷移金属酸化物は、絶縁体から金属、超伝導体までさまざまな電子物性を示す材料だ。今回は、強磁性体(磁石)として知られる鉄(Fe)と、その酸化物に注目した。酸化鉄の中でマグネタイト(Fe3O4)は磁石として古くから知られている。酸化鉄でも構造が違うウスタイト(FeO)やヘマタイト(Fe2O3)では、その物性も大きく異なるという。
研究グループは、2次元物質のグラフェンと3次元物質のSiC基板の界面に生じる特異な現象に注目した。例えば、水素雰囲気ガス中で加熱すると、水素がグラフェン/SiC界面に侵入する「インターカレーション」と呼ばれる現象が生じる。ただ、鉄やその化合物に関するインターカレーションの報告はこれまでなかったという。
そこで今回、新たな作製手法を開発した。具体的には、バッファ層上に真空中で鉄を蒸着した後、試料をいったん大気中にさらす。そのあと再び真空中に戻し加熱処理を行う。こうすることで、酸化鉄のインターカレーションが起こり、グラフェンとSiCの界面に2次元酸化鉄が形成されることを確認した。
新手法と従来手法を用いて作製した試料について、高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)と高角環状暗視野走査透過型電子顕微鏡(HAADF-STEM)を用い、これらの断面を観察した。従来手法で作製した試料は、多層グラフェンとケイ化鉄が不均一に形成されていた。これに対し、新手法で作製した試料は、グラフェンとSiCの界面に一様な輝点の周期配列が確認できた。原子番号が大きい元素ほど明るく見えたという。輝点領域の元素分析を行ったところ、グラフェンとSiC界面に酸化鉄の2次元結晶が形成されていることが分かった。
2次元酸化鉄の原子配列について、HAADF-STEMシミュレーション結果と実験データを比較した。この結果、「SiCの直上ではFeとOがSiCと同じ四面体構造を持っている」ことと、「グラフェンの直下では、塩化ナトリウム型の八面体構造を持っている」ものとして、矛盾なく説明できることが分かった。
このような構造を持つ2次元酸化鉄について、メスバウアー分光測定を行った。そうしたところ、室温では常磁性を示すが、低温(100K)だと反強磁性秩序を持つことが分かった。
今回の研究成果は、早稲田大学の乗松航教授、NIMSの榊原涼太郎博士(当時は名古屋大学所属)、日本原子力研究開発機構の寺澤知潮研究副主幹、東京大学の河内泰三技術専門職員、福谷克之教授、名古屋大学の伊藤孝寛准教授らによるものである。
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