茨城大学や北里大学、物質・材料研究機構、北海道大学の研究グループは、発光性高分子材料に少量のキラル分子を混ぜ合わせることで、「円偏光電界発光(CPEL)」と「スピン偏極したキャリア輸送」という2つの特性を共存させることに成功した。光とスピンを組み合わせた新たなデバイス開発につながるとみられる。
茨城大学や北里大学、物質・材料研究機構、北海道大学の研究グループは2026年10月、発光性高分子材料に少量のキラル分子を混ぜ合わせることで、「円偏光電界発光(CPEL)」と「スピン偏極したキャリア輸送」という2つの特性を共存させることに成功したと発表した。光とスピンを組み合わせた新たなデバイス開発につながるとみられる。
研究グループは今回、アキラルな青色発光性高分子のポリフルオレン誘導体(PFO)に対し、キラルなペリレンジイミド誘電体(BPP)を重量比10%で混合し、スピンコート法で薄膜を形成し180℃で熱処理した。熱処理前に比べて円二色性(CD)シグナルが大幅に増え、PFOに由来する円偏光発光を観測することができた。
これらの結果から、キラル分子を添加し熱処理を行うことで、PFOにキラルな構造が誘起されることが分かった。この薄膜を発光層に用いて有機EL(OLED)を作製したところ、PFOに対応する発光波長で円偏光電界発光を確認した。
同じ組成のキラルドープ薄膜を、高配向性熱分解グラファイト(HOPG)上に作製し、強磁性プローブを用いて磁気伝導原子間力顕微鏡(mc-AFM)による測定を行った。そうしたところ、プローブの磁化方向に依存する電流−電圧特性が観測された。また、BPPのキラリティに応じてスピン選択性が反転し、約70%という高いスピン偏極率となった。これは、キラル誘起スピン選択(CISS)効果によるスピン選択的なキャリア輸送の存在を示すものだという。
研究グループは、スピン偏極したキャリアの再結合がCPELの発現に寄与している可能性を検証するため、デバイスの発光色について印加電圧に対する依存性を調べた。この結果、低電圧ではPFOの青色発光に加えBPPに由来する発光を確認した。しかし、電圧が大きくなるとBPP由来の発光は弱くなった。
CPELの電圧依存性も調べた。BPP由来の発光がほぼ消滅する電圧領域では非対称因子gEL値も変化した。これにより、電荷の輸送や再結合といったキャリアの挙動が、円偏光電界発光特性に影響することを示した
左図はデバイスの円偏光電界発光スペクトル、中図はPFO:(R,R)-BPP薄膜のmc-AFMによる電流−電圧曲線、右図はデバイスのELスペクトルの電圧依存性と発光色変化[クリックで拡大] 出所:茨城大学他今回の結果は、キラルドープ薄膜からの円偏光電界発光に、スピン偏極キャリアの再結合が関与する可能性を示したものだという。今後は、磁場印加やスピン注入などによりスピン状態を制御し、スピン偏極キャリアの再結合が円偏光発光に寄与するかどうかを実験により証明していく予定である。
今回の研究成果は、茨城大学大学院理工学研究科博士後期課程の朝日宗将氏、同大学学術研究院基礎自然科学野の西川浩之教授、北里大学理学部の長谷川真士教授、物質・材料研究機構高分子・バイオ材料研究センターの長田裕也グループリーダー、北海道大学触媒科学研究所の中野環教授らによるものである。
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