東京科学大学と東京大学、北里大学、筑波大学らによる研究グループは、有機半導体のデバイス性能に、デバイス界面における分子の構造や動的な振る舞いが大きく影響することを実証した。有機半導体デバイスのさらなる高性能化が期待される。
東京科学大学と東京大学、北里大学、筑波大学らによる研究グループは2026年10月、有機半導体のデバイス性能が、デバイス界面における分子の構造や動的な振る舞いが大きく影響することを実証したと発表した。有機半導体デバイスのさらなる高性能化が期待される。
パイ電子系分子からなる有機半導体は、軽量で柔軟性や透明性に優れているほか、インクのように塗るだけで電子回路を作製できる。これらの特長から電子ディスプレイなどに利用されている。一方で、無機半導体に比べ「電荷移動度が一桁以上低い」という課題もあった。
研究グループは今回、n型有機半導体「PhC2-BQQDI」を基盤とし、置換基の異なる位置にフッ素を導入した分子群を新たに開発した。これらの分子を用いて単結晶薄膜トランジスタを試作し、結晶構造と移動度について検証した。
開発した分子群で特性が明確に違ったのは、フッ素をパラ(p-)位に導入した位置異性体の「p-FPhC2-BQQDI」と、メタ(m-)位に導入した位置異性体の「m-FPhC2-BQQDI」である。両分子とも結晶構造はPhC2-BQQDIに類似している。このため、トランスファー積分計算では、明確な違いがなかったという。
ところが、試作した単結晶薄膜トランジスタで移動度を評価したところ、性能に大きな差が出た。p-FPhC2-BQQDIの移動度は最大3.6cm2V-1s-1で、m-FPhC2-BQQDIは0.9cm2V-1s-1となり、実に4倍以上の差となった。
結晶構造のデータに基づき、分子動力学シミュレーションによる分子運動を検証した。この結果、p-FPhC2-BQQDIに比べて、m-FPhC2-BQQDIの分子運動が大きく、トランスファー積分に現れるパイ軌道の重なりが、より激しく乱されることが分かった。こうした分子運動の差が生じるのは、フッ素を含む分子間相互作用にあると考えた。
例えば、高い移動度を示したp-FPhC2-BQQDIは、同一の電荷輸送分子層内で相互作用している。これに対しm-FPhC2-BQQDIは、異なる分子層を介して相互作用することで集合体構造を安定化していた。このように、電荷輸送分子層間で集合体構造が安定化される場合に、移動度は低下した。
これらの結果から、電荷輸送層内で集合体構造を安定化させる置換基設計が、有機半導体デバイスの性能向上につながることを明らかにした。
今回の研究成果は、東京科学大学物質理工学院応用化学系の岡本敏宏教授と熊谷翔平特任准教授、福崎英治特任准教授、東京大学大学院新領域創成科学研究科物質系専攻の竹谷純一教授、北里大学未来工学部の渡辺豪教授、筑波大学数理物質系物質工学域の石井宏幸教授らによるものである。
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