茨城大学は、マグネシウムシリサイド基板を用いたフォトダイオード(PD)リニアアレイを開発した。安価で環境負荷が小さい半導体材料であるマグネシウムシリサイドを用いた「SWIR(短波赤外域)イメージセンサー」の早期実用化を目指す。
茨城大学大学院理工学研究科/応用理工学野の鵜殿治彦教授を中心とする研究グループは2024年10月1日、マグネシウムシリサイド(Mg2Si)基板を用いたフォトダイオード(PD)リニアアレイを開発したと発表した。安価で環境負荷が小さい半導体材料であるMg2Siを用いた「SWIR(短波赤外域)イメージセンサー」の早期実用化を目指す。
SWIRイメージセンサーは、波長が900〜2500nmのSWIRに感度を持つ半導体材料を用いたイメージセンサーである。作物内部の水分量検査や、暗闇での監視、工業製品の非破壊検査など、幅広い用途で利用されている。ただ、現行のSWIRイメージセンサーは、InGaAs層でPDを形成するなどしているため、極めて高価な製品となっている。
そこで研究グループは、安価かつ大量生産が可能で環境負荷も小さいMg2Siに着目。これまでに、直径50mmで高品質のMg2Si単結晶を育成することに成功している。
今回の研究では、Mg2Si基板を用いMg2SiのPDリニアアレイ構造を作製した。具体的には、まず垂直ブリッジマン法を用い、グラファイトるつぼ内でn型Mg2Si単結晶(n=1×1015〜1×1016cm−3)を成長させ、結晶を切断加工してMg2Si基板を作製した。
その後、Mg2Si基板の裏面にアルミニウム(Al)を熱拡散し、n型側のオーミック電極を作製。基板表面にはプラズマCVD装置でSiO2層を成膜、フォトリソグラフィによって回路などのパターンを形成した。また、電子ビーム蒸着あるいはスパッタ法で銀(Ag)を堆積し、熱拡散でpn接合を行った。さらに、リフトオフプロセスとCF4エッチングガスを用いて反応性イオンエッチング(RIE)を行い、p層上にAu/Niリング電極を形成した。
低コストで大量生産に適したこれらの工程を経て、画素サイズが80μm角、ピッチ200μmの8画素/列のPDリニアアレイを作製した。試作品の性能を評価するため、PDごとの「I−V測定」と「分光感度測定」を行った。この結果、単一PDと同等の暗電流密度と整流性、分光感度特性が得られることを確認した
研究グループは今後、高画素化に向けて2次元アレイの開発を行うとともに、ダイナミックレンジの改善などにも取り組んでいく。
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