QualcommとArmの法廷闘争において、米国デラウェア州の連邦地方裁判所で陪審が下した評決について、Armが自社の見解を明らかにした。Armの最高マーケティング責任者(CMO)であるAmi Badani氏が、米国EE Timesの電話インタビューに応じた。
QualcommとArmの法廷闘争において、米国デラウェア州の連邦地方裁判所で陪審が下した評決について、Armが自社の見解を明らかにした。Armの最高マーケティング責任者(CMO)であるAmi Badani氏は、米国EE Timesの電話インタビューに応じ、陪審の判決に対する同社の見解や、Armの次世代アーキテクチャ「v10」のライセンス交渉を巡る問題などについて語った。
Badani氏は、損害賠償額が名目的な2米ドルにとどまったことの他、裁判官が今後のライセンス供与条件の監視に難色を示したことを理由に「Armは裁判の『勝者』となった」と主張する。その一方で、Qualcommとの間では現在も、技術的/商業的協業関係が続いていることを強調した。
同氏は、RISC-Vのような他のアーキテクチャの台頭についても言及した。専門家たちは、「プロプライエタリ(独占的)なフレームワークにより、半導体設計メーカーは、進化するAIワークロードの需要に対応する上で、オープン標準規格へ移行せざるを得なくなる可能性がある」と警告しているという。
米国デラウェア州ウィルミントンで行われた複数の審理を傍聴したBadani氏は「Qualcommに対する損害賠償額をわずか2米ドルとした陪審判決は、Armの立場を支持するものだ」と主張する。陪審は、ライセンス契約違反に対して1米ドル、QualcommとMetaの取引関係への干渉に対して1米ドルの賠償金を認めた。その一方で、他の申し立てについてはArmに有利な判断を下した。
Badani氏は「損害賠償額が最小限にとどまったということは、ArmがQualcommとのライセンス契約関係を通して誠実に事業を進めていて、それによって重大な金銭的損害がもたらされたとする主張を正当化するものではないという、われわれの立場が支持されたことになる」と主張した。
Badani氏は、裁判官であるMaryellen Noreika判事の下で行われた最終弁論に関するBloombergの最近の報道も引用した。Noreika判事は審理中、Armの次期v10アーキテクチャの新しいライセンス条件について、Armに誠実な交渉を命じるよう求めたQualcommの申し立てに対し、強い危惧を表明した。
Noreika判事は、Qualcommが取引条件に対する裁判所の監視を求めたことは「極めて強硬な措置だ」と指摘。「裁判所がArmの商慣行を規制すべく介入したり、規制監督機関のような役割を担うことはない」と述べている。
さらにBadani氏は、裁判所がライセンス料率を決定したり、金銭的措置の追加を認めることに難色を示したことなども、Armの立場を裏付ける要素として挙げている。また同氏は「独占禁止法およびライセンス供与の残りの申し立てに関する最終的な決定書が完成するまでには、数週間を要するとみられる。両社が、司法審査に関する最終的な書面を提出しなければならないためだ」と述べる。
Badani氏は、法廷闘争が4年間に及んだにもかかわらず、ArmとQualcommが引き続き技術的/商業的協業関係を維持していくという点を強調した。同氏は「Armの見解では、Qualcommはさらなる金銭的補償を積極的に求めているわけではなく、現在も続くライセンス契約関係によってもたらされる商業的/技術的価値を最大化したい考えだ」と指摘する。
またBadani氏は、オープン標準規格の命令セットアーキテクチャ(ISA)、特にRISC-Vが、半導体分野最大のパートナー企業である両社間の法廷闘争から大きな恩恵を受けるとする業界の分析についても直接言及した。同氏は「RISC-Vが世界の主流市場において、独自アーキテクチャから大きな商業市場シェアを奪っている」という主張を否定している。
Badani氏は「RISC-Vは、代替プロセッサアーキテクチャとして大きなけん引力を獲得しているわけではない。ただし、中国は別だ。中国国内市場におけるRISC-Vの成長は、国際市場において確立された命令セットが根本から商業的に置き換えられたわけではなく、主に国家による莫大な資金援助や直接的な政府支援によるものだ」と主張する。
同氏のコメントは、Qualcommや、コンピュータアーキテクチャの著名な研究者たちが、ハードウェアの長期的傾向について評価している見解とは対照的だ。RISC-Vアーキテクチャを用いたプロセッサ設計を手掛ける米国の半導体スタートアップAkeanaは、2026年10月にQualcommに買収された。AkeanaのCEOは、LinkedInの投稿でその買収を認めている。
AIアルゴリズム/モデルが急激に進化する中、半導体設計メーカーは、プロセッサコアの修正や、特殊なマイクロアーキテクチャ機能の追加、全体的なエネルギー効率の向上などを実現可能な柔軟性が求められている。
バルセロナスーパーコンピューティングセンター(BSC:Barcelona Supercomputing Center)のディレクターであるMateo Valero氏は、EE Timesの取材の中で「AIが進化する中、半導体設計メーカーには、コアに新しい機能を適用し、性能を向上させるための総合的な柔軟性が必要だ。ArmのようなクローズドISAに依存すると、自由に新機能を実装したり消費電力を削減したりする可能性が制限されてしまう。Arm IP(Intellectual Property)のアーキテクチャをフルライセンスで使用している最大手メーカーでさえ、Armの厳しい条件や限られたサポートのために、設計を最適化することが困難になっている。このためわれわれは、RISC-Vのようなオープン標準のISAが最適な代替になると確信している」と述べる。
Armは、名目的な2米ドルの損害賠償額と、裁判所がライセンス交渉への介入に消極的な姿勢を示したことを、同社が誠実に事業を行ってきたことの裏付けと捉えている。しかし、4年間にわたる法廷闘争の影響は、ウィルミントンの法廷内にとどまらない。ArmとQualcommは技術面や製品ロードマップで引き続き協力しているものの、両社の法的な対立は、半導体設計企業が重要な岐路に立たされていることを浮き彫りにしている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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