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イットリウム系超電導変圧器の開発と耐性実験に成功、九州電力などエネルギー技術

Y(イットリウム)系超電導線材を利用すると、線材の細線化によって交流損失を1/3に低減でき、変圧器の体積や重量を抑えられる。今回は2万kVA級変圧器の1/50容量モデルで実証した。

» 2010年08月20日 11時00分 公開
[畑陽一郎,EE Times Japan]

 九州電力などは、2010年8月19日、スマートグリッドなどにも利用可能な超電導変圧器を開発し、短絡性能を実証したと発表した(図1)。超電導電力ケーブルと組み合わせることで、高効率な次世代電力供給システムを設計できるという。

 開発した超電導変圧器は、Y(イットリウム)系超電導線材を用いたもの。2万kVAの実用変圧器を検証するための1/50容量モデルである。Y系超電導変圧器の開発は世界初であるという。

 Yを含む金属酸化物「YBCO」(YBa2Cu3O7)が液体窒素温度下で超伝導現象を起こすことを利用した変圧器だ。「GdBCO」(GdBa2Cu3O7)も用いた。どちらも超電導用線材としては一般的な材料である。Y系超電導線材は電圧がゼロのとき最大電流値(臨界電流)が大きく、線材の細線化によって交流損失を低減しやすい特徴がある。細線化によって交流損失を1/3に低減でき、変圧器の体積や重量も抑えられるという。

ALT 図1 開発したY系超電導変圧器 Y(イットリウム)系超電導巻線の外観(左)とY系超伝導変圧器の外観(右)。巻線は直径565mm×高さ810mm、変圧器は直径738mm×高さ2300mm。出典:九州電力

短絡性能と限流機能を確認

 今回の実験では3層構造の線材を用いた。Y系超電導線材の周囲にAg(銀)とCu(銅)を用いた安定化層を追加したことが改良点である。6.9kVを0.2秒間印加する短絡試験を実施したところ、定格(174A)の6倍の電流が流れたときにも、巻線にかかる電磁力に耐え、変圧器としての性能の低下がないことを確認した。

 別の実験では、短絡事故電流が流れた場合に電流を抑制する限流機能が動作することも確認した。限流機能は、事故発生後4ms以内に電流を抑制しなければならない。容量10kVAのY系超電導限流機能付加変圧器を用いて、瞬時電圧低下を起こさずに、短絡電流だけを抑制できることを確認した。限流機能が働かないと1200Aの電流が流れる条件のもとで、43Aに抑えることができた。

 この超電導変圧器の開発は、新エネルギー・産業技術総合研究開発機構(NEDO)が委託した「イットリウム系超電導電力機器技術開発」プロジェクトによるもの。九州電力と九州大学、国際超電導産業技術研究センター、フジクラ、昭和電線ケーブルシステムが参加した。イットリウム系超電導電力機器技術開発では超電導変圧器の他、超電導電力貯蔵システムと超電導電力ケーブルを開発する。

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