大規模なリストラにより、2012年度の当期純損失が1500億円まで膨れ上がるルネサス エレクトロニクス。その一方で、2012年度の下期単体の業績では、2014年度の目標としている営業利益率10%以上を確保する見込みだ。これは、リストラ効果や汎用マイコンなどの回復に加えて、“アミューズメント向けSoC”の大型案件が大きく寄与している。
デジタル家電向けSoC(System on Chip)からの撤退、5千数百人規模の人員削減、国内8工場/9ラインの売却もしくは閉鎖により、2014年度の営業利益率を10%以上に高めるための収益基盤強化策を発表したルネサス エレクトロニクス(関連記事)。
この収益基盤強化策と同日に発表した2012年度(2013年3月期)の通期業績見込みによれば、人員削減と国内生産拠点の再編に1550億円の費用を計上しているため、2012年度の当期純損失は1500億円まで膨れ上がる見込みだ。
その一方で、2012年度の下期単体の業績見込みだけを見ると、売上高が4620億円(この内半導体売上高が4340億円)、営業利益が465億円となっており、既に2014年度の目標である営業利益率10%以上を確保しているのである。
ルネサスは、2012年度の半導体売上高の見込みについて、マイコンは前年度比で1桁%中盤の増加、アナログIC&パワー半導体とSoCは前年度並みとしている。マイコンの増加は、2011年度後半から変わらず需要が堅調な車載向けをベースに、汎用マイコンの需要が回復するからである。アナログIC&パワー半導体は、撤退した大型液晶ドライバICや村田製作所に売却したパワーアンプなどの減少分を、スマートフォン向けの中小型液晶ドライバICと民生用機器向けのアナログICの需要増でカバーして、ほぼ横ばいになるという。
SoCについては、カーナビゲーションシステム向けなどが2011年度後半から変わらず需要が堅調ではあるものの、新製品開発を中止するデジタル家電向けSoCの売上高は減少する。この減少分を穴埋めするのが、下期以降の売上高に加わる「アミューズメント向けSoC」の大型案件だ。これは、2012年末までの発売が想定されている任天堂の新型ゲーム機「Wii U」向けである可能性が高い。
ルネサス社長の赤尾泰氏は、このアミューズメント向けSoCの大型案件について、「既に契約を締結済みなので、通期業績見込みの下振れ要因にはならない」としている。
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