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100円で小型組み込み無線モジュールを売る、その狙いを明かしますガイアホールディングス 代表取締役 郡山 龍氏(1/3 ページ)

組み込みソフトウェアを手掛けるアプリックスが今、新たな事業として小型無線モジュールに注力している。各種機器に容易に組み込むことができ、簡単にM2M通信を実現できるモジュールだ。200円と安価で、近い将来に100円を切ることを目指す。業界では「そんなに安いのはおかしい」という声も上がっているという。そのからくりや狙いは何か。親会社であるガイアホールディングスの代表取締役で、モジュール事業を主導する郡山 龍氏に聞いた。

» 2013年01月16日 12時53分 公開
[薩川格広,EE Times Japan]

EE Times Japan(EETJ) アプリックスは旧来、携帯電話機やデジタル家電などに向けた組み込みソフトウェアの開発を主力事業として手掛けてきました。なぜ、M2M( Machine to Machine)通信向け無線モジュールというハードウェア事業に乗り出したのですか(参考記事)。

郡山氏 確かに無線モジュールそれ自体はハードウェア製品ですし、それを商品として販売しているわけですから、当社(アプリックス)がハードウェア事業に乗り出したというのは、間違いではありません。ですが実は、ソフトウェアを作り、それを売って生計を立てていくという、当社の基本は変わっていないのです。ハードウェアを販売するふりをして、実はソフトウェアを売る。無線モジュール事業では、そういうビジネスモデルを描いています。

 これまでも当社は、何度かビジネスモデルを変えてきました。当初に手掛けたのはパッケージソフトウェアです。CDのマスタリングツールなどを開発・販売していました。しかしその後、MicrosoftやAppleがOS自体にその機能を組み込んだので、そうしたパッケージソフトの市場は一気に消滅してしまったんです。

 そこで次はJavaのソフトウェア開発に取り組み、携帯電話機やデジタル家電に向けてライセンス供与するビジネスに主軸を移しました。特に携帯電話機に広く採用が進み、事業として大きく伸びました。しかし、それにも転機がやってきます。Googleが非常にクオリティの高いプラットフォームをオープンソースの形態で提供し始めた。それで、携帯電話機向け組み込みソフトウェアのライセンスという商売が事実上、成り立たないという状態になってしまいました。

 このとき、同業他社の多くは「上に逃げた」んです。つまり、アプリケーションソフトウェアやサービスという上位階層へとビジネスの転換を進めた。一方で当社は、「下に向かう」ことにしました。ミドルウェアからファームウェア、モジュールレベルのハードウェア、そして半導体チップまで、階層を「下へ下へ」と進むわけです。実際に今、製品化して供給している無線モジュールは、それ自体も、それに搭載しているチップも自社で設計したものです。

 しかし、当社がソフト屋であることをやめてハード屋になったのかというと、そうではありません。携帯電話機やタブレット端末の中核チップを供給するQualcommやNVIDIAを例に挙げましょう。彼らは半導体ベンダーとして知られていますが、実は製品の価値の源泉はソフトウェアにあります。Qualcommのチップの製造原価は、公表されている情報から見積もると2米ドル程度ですが、それを20〜30米ドルで売っている。NVIDIAはすごく速い計算機のチップを作って、そこにグラフィックス処理のソフトウェアを載せることでアクセラレータとして機能させています。やはりハードの価値ではなく、ソフトの価値で商売をしている。当社の無線モジュール事業も、これと同じようなビジネスモデルを狙っています。当社がソフトウェアベンダーであることは変わりません。ソフトの価値を収益化する手法がこれまでと変わるだけです。

EETJ 2012年12月に発表した最新品種の無線モジュールは、大量購入時の単価を200円に設定しています(アプリックスの参考プレスリリース:PDFファイルが開きます)。ソフトの価値をこのハード製品の価格に上乗せしているというわけではなさそうです。

郡山氏 その通りです。ソフトの価値は別の形で提供して収益化します。ですからモジュール自体は、製造原価にほぼ近い価格で販売します。

 最新品種の「JM1L2」は、ロット当たり2万個の場合に、日本の顧客に対して中国の深センにある工場での引き渡し価格を200円に設定しました。さらに、次に投入する品種では新たな設計で製造原価をさらに引き下げて、100円を切りたいと考えています。

 業界の相場は今、ロット当たり何十万個とかなり大量に購入した場合の単価が500円程度らしく、他のモジュールメーカーから当社に「何でそんなに安く売るんだ!商売にならない」とクレームが入っているほどです。

JM1L2 2012年12月に発表した無線モジュールの最新品種「JM1L2」である。出典:アプリックス (クリックで画像を拡大)
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