NTTコミュニケーションズは、400G光信号による波長多重伝送実験を実施し、1907kmの長距離伝送実験に成功したと発表した。札幌から大阪までの伝送距離に相当し、「世界最長」という。
NTTコミュニケーションズは2016年5月24日、400G光信号による波長多重伝送を実施し、「世界最長」(同社)となる1907kmの長距離伝送試験に成功したと発表した。高度なデジタルコヒーレント光伝送技術と伝送路設計技術で実現できたという。
今回伝送に成功した距離は大阪から札幌までの伝送距離に相当し、商用環境での利用を考慮に入れても十分な伝送距離を担保できる長さのため、既設の100G伝送網に現行の4倍となる400G対応のアップグレードを実施する技術的なめどがついたことになる。
400G伝送網は、4K/スーパーハイビジョン(8K)/VR(仮想現実)などの大容量映像配信の普及や、IoT市場の拡大に伴う大容量トラフィックの流通に資する基幹網の構築を可能にする。また、既設の100G伝送網をそのまま用い、伝送方式の変更によって400G化を実現するため、敷設のコストを低く抑えることが可能になるとした。
今回、400G光信号生成のため、光の位相と振幅の両方に情報を乗せることで情報量の増大を実現する「16QAM変調信号」と「サブキャリア多重」を利用している。
QAM(Quadrature Amplitude Modulation:直交振幅変調)とは、2つの直交した信号光の振幅及び、位相の両方に情報を載せる変調方式。16QAMは16値の直交振幅変調方式で、一度に4ビット分の情報を送ることができる。
サブキャリア多重とは、1つの高速チャネルを形成するために複数の波長の光信号(サブキャリア)に分割して多重伝送する方式だ。400G光信号の生成は、16QAM変復調による200Gビット/秒の光信号を、2つのサブキャリアを多重して生成している。
これらにより、既設の100G伝送網を用いながら、光回線あたりの容量を4倍に拡張することを可能にした。今回の実験は、より実用化に近づけることを考慮し、商用環境に敷設された光ファイバー伝送路を用いた実験環境を構築。NTTネットワークサービスシステム研究所のブレード型小型/省電力トランスポンダーを用いて行われている。
ブレード型小型/省電力トランスポンダーには、非線形光学効果による光の波形劣化を低減する技術「デジタル逆伝搬信号処理技術*)」を実装し、高精度な誤り訂正技術と併用することで、長距離伝送中に生じる波形歪みの補正を可能にした。
*)デジタル逆伝搬信号処理技術:受信した光信号をデジタル信号に変換し、デジタル信号処理で仮想的に光ファイバーを逆向きに伝搬させることで、光ファイバーによる線形および非線形歪みを同時に補償する技術である。
上述の環境下で、100ギガビットイーサネット(GbE)を多重して生成した16QAM光信号を最大12波多重し、商用伝送路を1907km伝送した後に信号品質を測定したところ、エラーがなく伝送に成功していることを確認できたという。
同社は今後、100G伝送網の400G対応実用化に向けた品質向上などを推進する。また、400GbEなどの超高速イーサネット信号の収容が可能な大容量伝送システムや、高性能な光ファイバー伝送路を含めたネットワークの検討を進めるとした。
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