ここ数年、欧州の通信業界においてM&Aが活発に行われている。その理由の1つに、4G(LTE)の普及の遅れに対するEUの焦りがある。
情報通信総合研究所は2016年9月26日、イギリス、ドイツ、フランスを中心に欧州の通信事業者の動きについて、記者向けの勉強会を実施した。
欧州の通信業界における、ここ数年の大きな特徴として、通信事業者のM&Aが活発になっていることが挙げられる。
情報通信総合研究所のICT基盤研究部 第一グループグループリーダー 主任研究員を務める神尾友紀子氏は、イギリスにおける直近の大きなM&Aとして、通信事業者の大手であるBTが、ドイツテレコムとフランスのOrangeが出資する通信事業者EE(Everything Everywhere)を2016年1月に買収したことを挙げた。これにより、イギリスには強大な通信事業者が誕生することとなった。さらに、この動きを受けて、イギリスの通信事業者第4位のThreeが、同1位のO2(Telefonicaの子会社)を買収しようとする。ただし、この案件は合併審査に不合格となり、白紙となった。
ドイツでは、ドイツテレコムが最大勢力を保っている。だが周辺では、通信事業者のVodafoneがケーブルTV事業者Kabel Deutschlandを買収、O2が通信事業者E-Plusを買収といったように、活発なM&Aが進んでいる。
フランスの通信業界では、Orange、SFR、Bouygues Telecom(ブイグテレコム)、Freeの4社体制が続いている。M&Aの動きとしては2014年11月に、SFRがケーブルTV事業者のNumericable(オランダAlticeの傘下)を買収した。さらに、2015年には、フランスにおけるモバイル通信事業者第1位のOrangeと第3位のBouygues Telecomの間で合併交渉が行われていたが、これは破談している。
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