2015年12月に航空法が改正された。無許可でドローンを飛行可能なエリアが特定されたことで基準が明確となり、産業用途の開拓が進んでいる。2016年8月には電波法が改正され、ドローンへの長距離かつ大容量の通信が可能となった。
産業用のドローンは特定の設備を点検したり、物の運送を担ったりなどの役割を持つ。設備まで30m以内に近づく場合には、飛行許可の申請が必要となる。ここで、機体と設備の間隔が30m離れていることを、操縦者から目視できる距離は限られている。産業用ドローンでは、多くの場合に目視外飛行のための飛行許可申請が必須であろう。
目視外飛行においては、無線通信による制御と映像伝送による確認(レーダーの搭載がない場合、操縦に加えて設備との間隔をみるため)を行わなくてはならない。
即時性を求める制御用通信と、大容量の画像情報、映像情報を伝送する通信は、かなり異なる要求仕様である。限られた通信の帯域を有効に使うことで、これらの両立を図る。そのためのガイドライン策定が求められている。
前述したように、即時性のある無線通信、画像伝送による確認は不可欠な項目である。それらに加え、飛行計画の事前申請、複数の飛行計画間の調整、電波利用の調整、緊急時の自律的な回避行動、自機位置推定の精度向上、機体自体の安全設計など、多くのテーマについて検討が進められている。
ドローンの機体については、搭載された各種部品への制御はもとより、制御結果のフィードバックを得るための機構が実装される見込みである。
これらにより、産業用に安心、安全設計されたドローンの提供が可能になるものと考えている。
通常のICT機器における無線通信とは異なり、移動体であるドローンの無線には種々の配慮が求められる。
高速移動し山陰などに隠れることもあるドローンでは、電波の回折や反射を考慮する。1つの機体が広い帯域を利用してしまうと、同じ空域を飛行する他の機体に影響を及ぼす。
ここでは、より狭域の利用を促すか、デューティ比(送信時間制限)を設定して時分割による共用を促進させる。バックアップ用のチャンネル設定も不可欠である。
デューティ比を例に挙げると、短時間の送信後に一定の待ち時間(送信休止時間)を設けるルールがある。この待ち時間が長くなると、ドローンが長い距離を移動してしまうために危険を伴う。
逆説的に捉えれば、ドローンの飛行速度が遅ければ通信の待ち時間は許容されることになる。通信の状態を監視して、飛行状態を任意に制御する組込みソフトが重要な役割を果たす。
ドローンの無線通信には、機体の飛行をつかさどる組込みソフトと緊密な連携が必要なのだ。
分類 | 無線局免許 | 周波数帯 | 送信出力 | 利用形態 | 備考 | 無線従事者 資格 |
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免許及び登録を要しない無線局 | 不要 | 73MHz帯など | ※1) | 操縦用 | ラジコン用微弱無線局 | 不要 |
不要※2) | 920MHz帯 | 20mW | 操縦用 | 920MHz帯テレメータ用、 テレコントロール用特定小電力無線局 |
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2.4GHz帯 | 10mW/MHz | 操縦用 画像伝送用 データ伝送用 |
2.4GHz帯小電力データ通信システム | |||
携帯局 | 要 | 1.2GHz帯 | 最大1W | 画像伝送用 | アナログ方式限定※4) | 第三級陸上 特殊無線技士 以上の資格 |
携帯局 陸上移動局 |
要※3) | 169MHz帯 | 10mW | バックアップ回線用 | 無人移動体 画像伝送システム (2016年8月に制度整備) |
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2.4GHz帯 | 最大1W | 操縦用 画像伝送用 データ伝送用 |
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5.7GHz帯 | 最大1W | 画像伝送用 データ伝送用 |
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【注】国内でドローン等での使用が想定される主な無線通信システムは、以下の通りです。 ※1)500mの距離において、電界強度が200μV/m以下のもの。 ※2)技術基準適合証明等(技術基準適合証明および工事設計認証)を受けた適合表示無線設備であることが必要。 ※3)運用に際しては、運用調整を行うこと。 ※4)2.4GHz帯及び5.7GHz帯に無人移動体画像伝送システムが制度化されたことに伴い、1.2GHz帯からこれらの周波数帯への移行を推奨しています。 出典:総務省(http://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/others/drone/index.htm) |
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