AIチップを手掛ける米Cerebras Systemsが、ナスダック市場への新規株式公開(IPO)を果たし、約55億米ドルを調達した。NVIDIAの対抗馬となる技術を提供する同社への期待値の高さが証明される結果となった。
AIチップのスタートアップである米Cerebras Systems(以下、Cerebras)は、半導体史上最大規模の新規株式公開(IPO)を完了し、ナスダック市場で3000万株を発行して約55億米ドルを調達した(これは、2023年に49億米ドルを調達したArmのIPOに匹敵する)
IPO直前の数週間で、同社株価の予想レンジは115〜125米ドルから、2026年5月14日(現地時間)の公開時には185米ドルに上昇した。5月14日の終値では、311米ドルという驚異的な高値で取引された。この価格により、Cerebrasの時価総額は約660億米ドルに達した。これは、2024年にIPOの意向を初めて表明した時点では想像もできなかった数字だ。
データセンター向けチップのスタートアップがひしめく中、Cerebrasと競合のGroqの両社は、チップサプライヤーからクラウドサービスプロバイダーへと事業転換し、API(Application Programming Interface)を通じて開発者に直接サービスを提供する独自のデータセンターを構築・展開している。その狙いは、依然としてNVIDIAが支配する市場において、伸び悩むハードウェア販売に依存せざるを得ない状況を回避することだったが、それと同時にNVIDIAの競合企業に何ができるかを示す結果となった。両社は、NVIDIAの弱点がシングルユーザートークンの速度であると認識しており、これはGroqとCerebrasの両社が得意とする分野だった。コーディングやエージェント型AIといったアプリケーションの普及に伴って、高速トークンの需要が高まり、市場が速度を追求していることが証明される形となった。
NVIDIAによるGroqの200億米ドルでの買収は、AIチップスタートアップの評価額における基準を打ち立て、非GPUハードウェア市場の有用性を即座に証明した。この200億米ドルという数字はGroqと同様に垂直統合型チップ製品とクラウドサービスを提供するCerebrasの評価額の基準となった可能性はあるが、NVIDIAの関心がGroqのクラウド展開ではなく同社の技術にあったことは、今となっては明らかだ。
Groqの買収とCerebrasのIPOは、d-Matrix、Tenstorrent、SambaNova、Rebellionsなどの企業の評価額を引き上げる可能性もあるが、これ以上多くの企業が660億米ドル以上の買収を狙うとは考えにくい。むしろ、市場は大規模な半導体企業のIPOを再び支える準備が整っているということが示された形だ。
Cerebrasは2024年10月に目論見書「Form S-1」を提出したが、後に撤回している。その書類によると、アラブ首長国連邦アブダビに拠点を置くG42という単一の顧客が、Cerebrasの2024年上半期売上高の87%を占めていたことが明らかになった。当時は、このような顧客の集中が広く批判された。
それ以降、Cerebrasは顧客基盤を拡大し、主要顧客を1社から3社に増やした。2社目は、アブダビに拠点を置く大学兼研究機関であるMBZUAIで、3社目は、他でもないOpenAIだ。
Cerebrasは2026年1月、約200億米ドルの料金と、必要な設備投資資金としての多額の前払い金と引き換えに、OpenAIに750MWの演算能力を供給する契約を結んだ。また、OpenAIはCerebrasの株式のうち最大10%という莫大な割合を取得した。譲渡するには多すぎるように思えるかもしれないが、OpenAIというゴールデンブランドと公に提携することには、それ以上の価値があったと考えられる。
(同一企業が顧客と投資家の両方を兼ねる、このような循環的な取引は、業界内でますます一般的になりつつある。OpenAIは最近、AMDとも同様の契約を結んだが、CerebrasのG42との既存の契約にも似たような要素がある)
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