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» 2021年10月12日 11時30分 公開

ニッポンの「デジタル化」推進について考える大山聡の業界スコープ(46)(1/2 ページ)

2021年9月、政府は「デジタル庁」を新設した。国/地方行政のIT化やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を目的にしたIT分野を担当する省庁だが、果たして上手く機能してくれるだろうか。残念ながら日本のデジタル化、システム化は「官」も「民」も世界の中では後進国に甘んじている。ここでは、どうすればデジタル化を推進できるのか、筆者の持論を展開させていただきたい。

[大山聡(グロスバーグ),EE Times Japan]

 2021年9月、政府は「デジタル庁」を新設した。国/地方行政のIT化やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を目的にしたIT分野を担当する省庁だが、果たして上手く機能してくれるだろうか。残念ながら日本のデジタル化、システム化は「官」も「民」も世界の中では後進国に甘んじている。ここでは、どうすればデジタル化を推進できるのか、筆者の持論を展開させていただきたい。

画像はイメージです

 10月になって、東京はようやく緊急事態宣言が解除され、時間制限付きながら居酒屋での一時を楽しめることになった。無類のアルコール好きの筆者は10月最初の週末、まだ日の高いうちから、大学時代の悪友若干名とジョッキを傾けて、まさにどうでもよい会話を制限時間まで繰り返していた。政府や自治体に対するコロナ対策の愚痴、仕事上の悩み、自身の不健康自慢など。居酒屋での会話というのはなぜかネガティブな内容に終始してしまうのだが、「自分もそうだ」と思ってくれる読者も多いのではないだろうか。実際に勘定を済ませて店を出る頃には、ああ楽しかった、とスッキリしているのが常なので、なかなかやめられないのである。

 そんな居酒屋でのどうでもよい会話の中で、故Steve Jobs氏のタイムカプセルが今年、2021年になって掘り起こされた、という話を持ち出した悪友がいた。カプセルは1983年、Jobs氏が講演会でのセミナーを終えた後に、当時のApple製品やセミナーでの寄贈品を詰め込んで埋められていた、というのだ。後日ネット検索してみると、確かにそのような事実があるようだ。調べた限りでは「タイムカプセルは2000年に掘り起こす予定だったが、場所が分からなくなっていた」「米国の人気テレビ番組で掘り起こす瞬間を実況中継した」など、諸々のエピソードが紹介されていた。そして、タイムカプセルが発見されてことで、そのキッカケになったとされる1983年のセミナーでのJobs氏の講演内容が改めて話題になっているらしい。

目の付けどころが違う1983年のJobs氏の講演

 1983年といえば、AppleがMacintoshを発売する1年前。筆者は、大学院でまだ親のすねをかじっていた頃で、今から38年も前のことである。

 にもかかわらずJobs氏は、パーソナルコンピュータが今後の通信手段になることをこの段階で予言している。インターネットの影も形もない時代に、電子メールシステムの必要性についても言及。電子メールがわれわれ人間のコミュニケーションに変革をもたらすとか、人々が自動車に費やす時間よりもパーソナルコンピュータに費やす時間の方が長くなるとか、無線が使えるようになれば人々はどこにいても電子メールが使えるなどと述べていた。1983年当時、この講演を聞いた人たちは果たしてどんな感想も持ったのだろうか。通信機といえば、ダイヤル式のアナログ電話機しかなかった時代に、Jobs氏の講演内容を理解できた人などいなかったのではないか、などと考えてしまう。まるでJobs氏だけがタイムスリップを経験しているかのようである。恐らく、Jobs氏の頭の中には当時からすでにiPhoneの基本コンセプトが出来上がっていたのだろう。iPhoneが商品化されたのは2007年、同氏は20年以上の歳月をかけてそのコンセプトを実現したことになる。

ソフトバンクグループ会長兼社長 孫正義氏

 この種の天才は概して凡人と波長が合わず、孤立するだけでその才能を発揮する機会に恵まれない、などと言われたりする。だが、天才に行動力が伴うと話は別なのだろう。Jobs氏の生涯にもさまざまな紆余曲折があったようだが、行動力があったからこそ、これだけの実績を挙げることが出来たわけだ。そして、良き理解者にも巡り会えたようだ。孫正義氏などは、その中の重要な1人なのだろう。実際に孫氏は、iPhoneが商品化される2年前にJobs氏を訪れ、「iPhone(のようなもの)を商品化してくれ、そしてそれをオレに売らせてくれ」と直談判している。

 もう少し正確にいうと、孫氏は当時流行していたiPodと携帯電話機能を融合させた携帯端末のアイデアを持って、Jobs氏に商品化を提案したのだという。すでにiPhoneの開発、商品化を進めていたJobs氏は、孫氏の発想が自分のそれに極めて類似していることに驚いたそうだ。しかしソフトバンクが通信事業を行っていないことを理由に販売契約を結べない、と断ると、孫氏は翌2006年に150億米ドルを投じてボーダフォンを買収し、日本におけるiPhone独占販売権を手中に入れた。この辺りの経緯については、孫氏自身が複数のメディア向けに語っているので、ネット記事などでご覧になった方も多いと思う。筆者のような凡人から見れば「目の付けどころが違う」「行動力がすごい」という月並みな感想しか出てこない。

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