NTTおよび東京大学、理化学研究所、OptQCは2026年3月5日、光導波路デバイスを用いて量子ノイズを10.1dB圧縮したスクイーズド光の生成に成功したと発表した。「世界最高」(同社)の圧縮度で、将来の誤り耐性型量子コンピュータ実現や、ニューラルネットワークへの応用に大きく貢献するという。
NTTおよび東京大学、理化学研究所、OptQCは2026年3月5日、光導波路デバイスを用いて量子ノイズを10.1dB圧縮したスクイーズド光の生成に成功したと発表した。
スクイーズド光は、光電磁場の正弦(サイン)と余弦(コサイン)成分のうち、片方の量子ノイズが圧縮された光を指す。連続光量子技術においてスクイーズド光は重要なリソースで、光量子コンピュータの場合、スクイーズド光の帯域が広いほど高速動作かつ大規模演算が、圧縮度が高いほど誤差の少ない量子計算が可能になる。
NTTと東京大学は、これまで周期分極反転ニオブ酸リチウム(PPLN)を用いた導波路型の光パラメトリック増幅器(OPA)で広帯域なスクイーズド光を生成する実験を行ってきた。2021年には圧縮度6dBのスクイーズド光を6THz以上の帯域で生成、検出することに成功し、2023年には圧縮度8.3dBを実現している。
NTT先端集積デバイス研究所 准特別研究員の柏崎貴大氏は「光量子コンピュータを動かすにあたって、広帯域性は十分に確保できている一方、圧縮度はさらなる向上が必要だった」と語る。そこで今回、OPAの設計および作製プロセスを最適化するとともに、新たな位相同期手法を採用した。
高レベルのスクイーズド光を測定するには、基準光との相対光位相を厳密に制御する必要がある。従来の位相同期手法の場合、スクイーズド光のもとになる励起光と基準光を1つのOPAに送り込み、スクイーズド光と光位相同期基準信号を同時に生成し、ミラーで一部を分岐することで位相同期信号を抽出していた。しかしこの手法だとスクイーズド光も同時に分岐されるため、同期精度を高めるために分岐比を大きくすると、より多くの位相同期信号を抽出できる反面スクイーズド光の損失も大きくなり、結果的にスクイーズド光が劣化する問題があった。
新手法では、励起光と基準光の段階で分岐し、それぞれスクイーズド光生成用のOPAと位相同期信号生成用のOPAに送り込む。これにより、スクイーズド光の損失を低減するとともに、位相同期信号の強度も上げることに成功したという。
柏崎氏は「導波路型OPAとしては世界最高の、10.1dBの量子ノイズ圧縮に成功した。誤り耐性型量子コンピュータにおいては、10.1dBの圧縮が実現できれば誤り訂正率が現実的な値に下がってくる。今回の成果は将来の誤り耐性型量子コンピュータ実現や、ニューラルネットワークへの応用に大きく貢献する」とした。
東京大学大学院工学系研究科の教授や理化学研究所量子コンピュータ研究センターの副センター長、OptQC取締役を務める古澤明氏は「本発表に関する論文は2026年1月に受理された。研究上では同年3月現在、12dBの量子ノイズ圧縮に成功していて、圧縮度15dBまでは実現も難しくない見込みだ。誤り耐性の量子計算は射程内に入ったと考えている」と語った。
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