100%関税構想は米国企業の負担増と競争力低下を招く。半導体製造強化には、巨額赤字に陥るIntelの製造部門分社化に対する支援こそ急務だ。
2025年8月6日、米国のトランプ大統領は「海外から米国が輸入する半導体に約100%の関税を課す」と発表した。「米国内で生産を約束している場合、あるいは、米国内ですでに生産中の場合は、関税は課されない」という条件が付いているものの、米国半導体業界にとって大損害にもなりかねない話である。恐らく実現は不可能と思われるが、その前に米国政府としては考えるべきことがあるだろう。Intelの分社の話をどのように進めるのか。政府としてこの件にどう関与するのか。日本人である筆者がこのようなことを言ってもただのおせっかいにすぎないが、米国内の半導体製造を立て直したいのであれば、米国の半導体事情を正確に把握し、その上で今後の目指すべき姿について論じるべきだろう。
下図は、世界半導体市場の地域別推移を示したものである。
アジア(中国を含む)向けの出荷が全体の過半を占めているのは、PCやスマートフォンなどの量産工場が多く存在するためである。昨今では米中摩擦の影響などで、これらの量産工場を中国から東南アジア諸国に移そうとする動きもある。だが、安価で豊富な労働力を持つアジア地域に電子機器の量産工場が集中する、という状況に変わりはない。
欧州や日本向けの半導体出荷は、成長はしているものの、いずれも世界で占める割合は10%を下回るレベルで推移している。しかし米州(カナダ、中南米を含む)向けの出荷は高い伸びを示しており、2019年は世界市場の19%、2024年には同31%を占めるに至っている。米州向けとはいっても、実質的には米国向けが大半であり、GAFAMなど大手ITベンダーのデータセンター向け半導体出荷が増えていることが要因になっている。通常、半導体は電子機器工場向けに出荷されるものだが、拡張性を重要視したデータセンター内のサーバ向けには、GPUカードやメモリモジュールが電子機器工場を介さずに直接出荷される場合が多い。
このような状況を踏まえて米国半導体産業の状況を整理すると、次のような特徴が浮き彫りになる。
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