米国の大手携帯電話事業者であるVerizon Wirelessが2011年2月10日に新たに販売を始めたアップルのスマートフォン「iPhone 4」を分解したところ、クアルコムのマルチモード対応ベースバンドプロセッサが搭載されていることが明らかになった。分解を実施したUBM TechInsightsのアナリストは、「iPhoneは、マルチモードプロセッサを搭載することで、将来に向けたグローバル対応の道を開いた」と指摘している。
米国の大手携帯電話事業者であるVerizon Wirelessが2011年2月10日に新たに販売を始めたアップルのスマートフォン「iPhone 4」を分解したところ、クアルコムのマルチモード対応ベースバンドプロセッサが搭載されていることが明らかになった(図1)。分解を実施したUBM TechInsightsのアナリストは、「iPhoneは、マルチモードプロセッサを搭載することで、将来に向けたグローバル対応の道を開いた」と指摘している。
同アナリストによると、このベースバンドプロセッサの型名は「MDM6600」で、GSMとCDMA、GPRS/EDGE、HSPA+の各ネットワーク規格に対応するという。なおUBM TechInsightsは、EE Times誌と同じくUnited Business Mediaの傘下にある企業である。
UBM TechInsightsのプロダクトマネジャーで今回の分解を主導したSteve Bitton氏は、「ベースバンドチップをクアルコムが供給すること自体は、想定の範囲内だった。しかし、それが同社の『クアルコム・シングルチップ(QSC)』ではなく『MDM』だったことは驚きである。アップルのアプリケーションプロセッサ『Apple A4』が処理の負荷を担うため、携帯電話機能を実装する際に満たすべき要件は必要最小限にとどまっていたはずだ」と述べた。
同氏は、「MDMは、アップルが(iPhone 4ではなく、次期機種となる)『iPhone 5』で盛り込みたいと考えている機能の実現にこそ必要になるのではないか」との見方を示す。さらに、「iPhone 5ではMDMが搭載されると予想しているが、それがMDM6600になるとは限らない」(同氏)と付け加えた。
VerizonのiPhone 4に搭載されていたMDM6600は、ベースバンド処理チップと無線トランシーバチップを1個のパッケージに封止したマルチチップ品である。クアルコムの他のシングルチップ品とは異なり、電力管理チップは内蔵していない。そのためアップルは今回、クアルコムがチップセットとして供給する別パッケージの電源管理チップ「PM8028」を採用している(図2)。
UBM TechInsightsでテクニカルマーケティングマネジャーを務めるAllan Yogasingam氏は、「アップルは、次期iPhoneを完全なグローバル対応携帯電話機に仕上げるための取り組みを(VerizonのiPhone 4で)進めている可能性がある。これにより、アップル自体が研究開発に費やす時間やコストを節約できるだけでなく、クアルコムにとっても今後のデザインウィンの獲得に向けて道が開けることから、将来的なメリットが大きい」と述べている。
UBM TechInsightsのアナリストらは以前に、アップルが新型のiPhone 4でコストを25米ドル削減できる可能性があると予測していた。
Verizon版iPhone 4に搭載されている主要なチップは以下の通りである。これらのほとんどは、クアルコムのベースバンドプロセッサ以外、アップルの他の端末に採用されているものと大きく変わらない。
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