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電子書籍の次なる市場を掘り起こせ、産業/物流向け電子ペーパーの開発進むディスプレイ技術 電子ペーパー(3/4 ページ)

» 2011年11月29日 10時00分 公開
[前川慎光,EE Times Japan]

フルカラーではなく、あえて“モノ”カラーへ

 製造現場や建築現場で使うことを想定し、視認性や耐衝撃性を向上させた電子ペーパーも、FPD International 2011に出品されていた。例えば凸版印刷は、文字の読み取りやすさを高めることを目的に開発した、モノカラーの電子ペーパーを初めて出品した(図4)。

 現在製品化されている電子ペーパーは、白と黒を表示するモノクロの品種がほとんどである。一般的に、電子ペーパーをフルカラー化するには、赤や緑、青といったカラーフィルタを挿入する必要があり、反射率が大幅に下がってしまう。この点が、実用に向けた課題となっていた。例えば、モノクロの電子ペーパーの反射率が40%であるのに対して、フルカラーにすると反射率が10〜20%に下がってしまうという。電子ペーパーの反射率が下がると輝度が低下してしまい、画面がくすんで見えてしまう。

図 図4 凸版印刷が開発したモノカラーの電子ペーパー ディスプレイの輝度と文字の読み取りやすさを両立するためにモノカラーを選択した。反射率は30%である。

 そこで凸版印刷が採ったのが、モノカラー化という手法だ。「ディスプレイの輝度と文字の読み取りやすさを両立するには、現在のところモノカラー化が適している。モノカラーが生きる用途は多い」(同社)という。例えば、赤は、産業や製造の分野で警告色として広く使われている。商業施設ではセール品の値札が赤で表示され、バス停の時刻表では休日や祝日の部分が赤で記載されているといった具合だ。モノカラーであっても色が付くことで、人目を引き、印象に残せるという。赤と青、緑、黄の品種を用意しており、反射率はいずれも30%。反射率を保ちつつ、コントラスト比を向上させる改善も盛り込んだ。既存の品種は1:7だったコントラスト比を、モノカラーの電子ペーパーでは1:13に高めた。

 耐衝撃性を向上させた電子ペーパーについては、前出のPervasive Displaysが製造し、凸版印刷が日本市場に向けて提供している(図5)。製造現場や建設現場などの屋外利用を想定しており、強化ガラスで電子ペーパーモジュールを挟み込むことで耐衝撃性を高めた。ガラスの厚みを変えて、耐衝撃性能をカスタマイズすることも可能である。凸版印刷がFPD International 2011に展示した品種の外形寸法は、169mm×111mm×1.2mm。解像度は126dpi(480×800画素)、コントラスト比は1:7である。

図5 Pervasive Displaysが製造した耐衝撃性を高めた電子ペーパー。強化ガラスで電子ペーパーモジュールを挟み込むことで実現した。写真左は、鉄球をぶつけても破壊されないことを示したデモ。写真右は、電子ペーパーモジュールの外観。

 電子ペーパーの最大手であるE-Ink Holdingsが次に狙う市場が、教育市場である(図6)。FPD International 2011に、教育市場を対象にした電子ペーパーの応用例を数多く展示していた。例えば、電子ペーパーの黒板や、電子ペーパーを組み込んだ教室机、電子ペーパーの楽譜、カラー電子ペーパーを搭載した自転車向けのナビゲーション装置や、方角や天候予報などを電子ペーパーで表示するスポーツ用品などである。

図6 電子ペーパーの最大手であるE-Ink Holdingsが次に狙う教育市場。写真左が電子ペーパー黒板、中央が電子ペーパーに方角や天気予報などを表示させたスノーボード、右が電子楽譜。

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