解像度や反射率、コントラスト比といったディスプレイとしての電子ペーパーの性能を改善する開発や、紙のようなしなやかさを持ったフレキシブル電子ペーパーの開発も着々と進んでいる。
セイコーエプソンは、E-Ink Holdingsの9.7インチ型300dpi(2400×1650画素)の電子ペーパーに向けた開発プラットフォーム「S4J21010」の提供を始めている(図7)。電子ペーパー用表示コントローラやマイコン、電源管理ICの他、ディスプレイ駆動用ドライバやファームウェアを組み合わせたもの。現在、一般的に使われているのは解像度が160dpiの電子ペーパーである。解像度が300dpiにまで高まれば、紙に精細に印字したときのように細かい文字をくっきりと表示できる。「特に、業務用途や教育用途では、複雑で精細な図面やイラストを表示することが求められるケースがある。このようなプロフェッショナル用途を対象にした開発プラットフォームだ」(同社)。
この他、同社は電子ペーパー用表示コントローラを集積した32ビットマイコンを現在開発中だ。電子書籍リーダーの用途では部品コスト削減の要求が厳しく、表示コントローラをマイコンに集積化したものが主流になっているという。このような市場要求に応えた品種である。
ブリヂストンは2002年3月に、粒子と液体の中間的特性を兼ね備えた「電子粉流体」と呼ぶ材料を開発し、これを採用した独自の電気泳動方式の実用化を進めてきた。FPD International 2011では、従来1:7だったコントラスト比を1:8へ、モノクロのときの反射率を23%から27%に高めたA3/A4サイズの電子ペーパーを出品した。解像度は150dpiである。さらに、コントラスト比を1対10へ、反射率を35%以上、解像度を200dpiに高める開発に着手している。
フレキシブル電子ペーパーについては、AU OptronicsやLG Display、ブリヂストンが展示していた(図8)。AU Optronicsが展示したのは、厚さが0.1mmで40gと軽い、6インチ型の電子ペーパーである。背面には太陽電池が取り付けられており、太陽光または蛍光灯を使って電子ペーパー駆動用の電力を生み出す。外部電源は一切不要だという。まだ研究開発の初期段階で、一般公開は今回が初。AU Optronicは、電子ペーパーを手掛ける米SiPix Imagingを2009年3月に買収しており、共同で開発に取り組んだ。
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