セイコーエプソンは2013年8月20日、都内で水晶デバイス事業に関する事業戦略説明会を開催し、「無線基地局/通信機器」「車載機器」「産業機器/医療機器」という3領域での売上高比率を高め、2015年度(2016年3月期)に営業利益率10%以上の達成をめざすとした。
セイコーエプソンの水晶デバイス事業は、2011〜2012年度に大規模な構造改革を実施してきた。同社業務執行役員でマイクロデバイス事業部長を務める北村政幸氏は、「それまでの水晶事業は、事業規模に対して過剰な固定費が必要な事業構造で、主要部材の外部調達が多く変動費の割合も高いという課題があった」と振り返る。そして過去2年に渡り、国内人員規模を6割削減し、製造拠点数も14拠点から8拠点への削減を実施。主要部材の内製化も積極的に進めた。さらに水晶デバイス事業に半導体事業を取り込むような格好で、統合し、両事業の開発設計機能も伊那事業所(長野県)に集約するなど、水晶と半導体が相乗効果を発揮できる体制作りを行ってきた。
その結果、2012年度の水晶デバイス事業の営業損益は黒字化。北村氏は、「これから事業を進めていく上で盤石の体制を築くことができた」と構造改革の成果に胸を張った。
「盤石の体制」で挑む2013〜2015年度の事業テーマは、「独自のQMEMSと半導体により、小型化、高性能化を先導し製品ポートフォリオの転換/拡大と高収益化への基盤を確立すること」と北村氏は説明する。具体的な数値目標は、2015年度営業利益率10%以上を掲げる。
売上高の見通しについては、「水晶の世界市場は、緩やかに成長を続ける見通し。当社水晶事業も年率2〜3%程度の増収が目標」という。主力アプリケーションの1つであるスマートフォンの出荷台数の増加が見込まれる中で、年2〜3%増の増収幅は小さいように思えるが、「スマートフォン1台当たりの水晶デバイス搭載点数は減少傾向にある」と微増収にとどまる理由を説明するとともに「売上高よりも、まずは利益率を高めていく」と言い切る。
その背景には、微増収の要因でもあるスマートフォンに代表されるコンシューマ機器市場の成長鈍化への危機感がある。コンシューマ機器では、搭載点数の減少だけでなく、低価格化要求も根強く、何より、スマートフォン以外のコンシューマ機器需要が低迷を続けているということもある。
同社水晶事業は、「パーソナル機器」と呼ぶコンシューマ機器向けの売上高比率が高い。2012年度実績でも売上高の65%をコンシューマ機器向けで占める。「パーソナル機器向け水晶デバイスでは、世界トップシェアの地位を確立しており、今後もこの地位をより強固なものにしていくが、パーソナル機器以外のシェアを取れていない領域での売上高を伸ばし、高収益で安定的な事業基盤を作る」とする。
コンシューマ機器以外の領域として、「無線基地局/通信機器」「車載機器」「産業機器/医療機器」の3領域を掲げる。これら3領域に向けた製品を拡充して、2015年度には、コンシューマ機器向け売上高と同規模まで3領域向け売上高を引き上げる計画だ。
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