モノのインターネット(IoT)は、「2015 International CES」でも話題の中心だった。だが、スマートフォンを中心に多くの機器がつながるという意味では、準備が整っているとはとてもいえない状況であることが、CESで明らかになったのではないだろうか。IoT機器が消費者にどんなメリットを与えられるのか、大手家電メーカーさえうまく把握できていない印象を受ける。加えて、プライバシーとセキュリティの問題も解決が必要だ。
「2015 International CES」(米ラスベガス、2015年1月6〜9日)では、モノのインターネット(IoT)を促進するとして期待をかけられている企業各社が、IoTの現状からかけ離れた状況にあることが露呈される形となった。
エレクトロニクス業界のある経営幹部が、匿名を条件に語った通り、「現在のIoT市場には、スマートフォンによってもたらされる重要なチャンスがまだ到来していない」のではないだろうか。
ARMでチーフマーケティングオフィサーを務めるIan Drew氏は、「CESの展示会場は、実に多くのIoT対応ハードウェアであふれ返っていた。しかし、これらの機器をいざ使ってみたところ、『本当に操作が簡単だ』というような驚きは全くない」と語っている。
同氏は、「コネクティビティ基盤の構築については、IoT向けのプロトコル『Thread』と同様に、下位層では進んでいるようだ。しかし、IoT機器をもっと簡単に操作できるようなソフトウェアについては、ほとんど見かけない。現在はどのIoT機器も、その機器にだけ“オープンな”エコシステムの中で動作している状態にある」と述べる。
企業においては、IoT関連のアプリケーションで利益を確保するための合意に至っているところもある。企業は、ユーザーによって生み出される大量のデータを利用することで、データ解析の精度を高めることが可能だ。このため、より効果的に事業を展開でき、売上高を増加させることができるという。
しかし、それは実際のところ、消費者にとってメリットはあるのだろうか。そもそもCESは、“家電製品の展示会”ではなかったか。消費者側に立っているはずの、大手家電メーカーのCEOでさえも、この問いに対する答えを見つけられないようだ。
そのいい例として挙げられるのが、Samsung ElectronicsのCEOであるB.K. Yoon氏が2015年1月5日に行った基調講演だ。同氏はそこで失態を演じている。
Yoon氏はスピーチの中で、「IoTの無限の可能性を解き放とう」と主張し、無限の可能性を示す1つ目の例として、Samsungが開発した家庭用「コネクテッドワインセラー」を発表した。同氏は本当に、ワインセラーの管理が重要だと考えているのだろうか。IoT関連のホットな話題を一般的な消費者に届けるための方法を、知らないのではないだろうか。ある観測筋はYoon氏の主張について、「素晴らしいワインについて語る時、IoTについて話すことはほとんどないだろう」と、厳しい見方をしている。
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